犬にとって「厳しい」しつけとは?
まず、犬にとって厳しいしつけとはどのようなものを思い浮かべますか?多くの人が考えるのは体罰を与えるしつけだと思います。犬の好ましくない行動に対して体罰を与えて矯正・強制することは、しつけのプロである訓練士などが的確なタイミングと的確な強度で行えば確かにとても効果的な方法です。ひどい攻撃性を見せる犬など状況によっては体罰を与えるしつけが必要とされる場面もあると思います。体罰でしか制御出来ない犬がいるのも事実ですので、体罰のような厳しいしつけが完全に不要だとは思いませんが、このような犬をしつけることは訓練に精通したプロにしか出来ないことだと思います。体罰を含む厳しい訓練は以下で説明するように犬と飼い主にとって弊害、デメリットが多いので一般家庭で飼育されている犬とその飼い主さんにはおすすめ出来ません。
また、体罰は与えなくても犬にとって厳しいと感じられるしつけがあります。実際に犬の体を叩いたり蹴ったりしなくても、大声や大きな音で威圧したり、行動を逐一監視して指示ばかりしたり、少しでも好ましくない行動をしていればくどくどと叱りつけたり、“お仕置き部屋”と称してハウスなどに閉じ込めたりすることも犬にとっては十分厳しいしつけです。これは一種の過干渉でもあり、まじめで一生懸命な飼い主さんが知らないうちにしてしまっていることもあるので思い当たる節があるがある人は一度自分のしつけや犬への接し方を考え直してみるといいでしょう。
厳しいしつけの弊害①犬が萎縮する
体罰や大声、過度な制限などによって厳しいしつけをすると多くの犬は恐怖を感じるでしょう。罰を与える厳しいしつけのデメリットとして、正しい行動をほめられる機会が少ないということが考えられます。しつけの中で間違った行動を叱るだけでその後に正しい行動をへと導いていない場合、「飼い主が怒っていることはわかるが、なぜ叱られているのかわからない」「何をすれば怒られないのかわからない」ということを犬に感じさせることになるのです。そうすると犬は普段から常に飼い主の機嫌や言動を伺うようになり、萎縮してあまり動かなくなったり無気力になってしまうこともあります。また、犬は怒られることを怖がり自分で考えて行動することが出来なくなってしまいます。飼い主の指示や命令がなければ何も出来ない犬になってしまうのです。
中には、萎縮した犬の様子を見て余計にイライラを募らせる飼い主もいて、そこで負の連鎖が生まれてしまうことも。飼い主の機嫌を伺って萎縮している犬の姿はとても悲しいものです。自由にのびのびと過ごすことの出来ない生活は犬にとっても非常にストレスがかかるものだと思います。
厳しいしつけの弊害②犬が攻撃的になる
体罰を与えるなど適切でない厳しさで接した場合、多くの場合犬は萎縮し飼い主の様子を伺うようになるでしょう。しかしながら厳しいしつけが続いて常に威圧されストレスを抱えた犬は、突然強い攻撃性を見せることがあります。過度に抑圧されたことでそのはけ口を他者や他の犬に向けたり、『窮鼠猫を噛む』と言われるように追い詰められて飼い主にその牙を向けることがあるのです。そうなった時の犬を押さえることはむずかしく、深い傷を負うことになってしまう場合もあるので厳しいしつけを行う際には犬の様子をしっかりと観察しなければなりません。
犬はいつでも飼い主を傷つけることが出来る牙を持っている動物です。それでも飼い主に歯向かったり威嚇するようなことはせず、いつもその牙を隠して付き従ってくれているということを忘れないようにしましょう。それは犬から飼い主への愛情であり、信頼のあらわれなのだと思います。感情のままに行う厳しいしつけは犬と飼い主の信頼関係を壊してしまう可能性もあるので十分注意しましょう。
<まとめ>犬に厳しいしつけをすることについて
「褒めるしつけ」「優しいしつけ」が主流となっていますが、それだけではうまくいかないということは多くの飼い主さんが感じていることだと思います。人や犬に攻撃性を見せたり、犬自身に危険が及ぶような行動をした時には厳しい態度で接しなければならないこともあるかもしれません。そのような場合、部分的に厳しいしつけを行ってもその後にしっかりと正しい行動を教えてそれを褒めるということをしていれば、犬が過剰に萎縮したり自信を失うことは少ないと思います。必要に応じて厳しいしつけを選択する場合には、犬の自信や尊厳を奪ってしまわないように褒めるしつけと上手に組み合わせて行うことが大切です。