犬が髪の毛を食べる理由
遊びの延長
犬が髪の毛を食べる理由として多いのが、じゃれつきからの誤飲です。犬にとってどんなオモチャよりも楽しいのが飼い主さん自身です。
髪の毛はそんな飼い主さんの一部なわけですから、犬に魅力的なほかありません。
- やわらかい
- 長かったり短かったりする
- 変幻自在の複雑な動きをする
- 良い香り(飼い主さんの匂い)がする
- ちょっと引っ張ると音がなる(「痛いっ!」)
- 大好きな飼い主さんに付いている
以上のように、これほどまでにたまらないオモチャはありません。
よく子犬に見られる困った行動に「手へのじゃれ噛み」がありますが、髪の毛と同じく「やわらかい」「変幻自在の複雑な動きをする」などの共通点があり、犬にとっては髪の毛と同様に魅力的です。
ではなぜ、犬はそのような行動に出たのでしょう?そのきっかけは次のような状況かもしれません。
- 犬は飼い主さんに構ってほしくて色々なところにちょっかいを出してみた
- 犬はたまたま髪の毛にじゃれついた
- 思いもよらない反応が返ってきた
- 「これは、良いオモチャを手に入れた!」と犬が学習した
この犬の行動がエスカレートしていけば髪の毛に対しての執着心が増し、さらには髪の毛を口の中に頬張ることが癖になり、そのまま犬が髪の毛を食べる、誤飲するようにもなります。
ストレス
人はある程度のストレスを抱えると、爪を噛んだり貧乏ゆすりをするなど、無意識の行動をとることがあります。これは情緒を安定させるためセロトニンといわれる脳内物質を増やすことに関係しているとも言われています。同様に犬も、ある程度のストレスを抱えると、無意識の行動をとることがあります。
例えば外の環境が極端に苦手な犬が、散歩の時に小石を口に含むという事例があります。これは口内にある石を食べて噛むことで、その食感に集中できるため、周りの刺激に気をとられないようにするためです。
ほかにも、トリミングサロンでよくある光景なのですが、トリミングテーブルに落ちているカットした毛を、犬が夢中になって髪の毛を拾い食いする事例があります。これも、犬自身の置かれた状況に対する、ストレスを緩和させるため紛らわす行動です。
このように、もしかすると留守番などで何かしらのストレスを抱えたため、犬が落ちている髪の毛を食べることで気を紛らわせているのかもしれません。
監修ドッグトレーナーによる補足
食事のために髪の毛を食べている訳じゃないんですね。ですからご飯を食べてお腹がいっぱいになっても、髪の毛を食べちゃうんです。
おもちゃの様に見ている犬には髪の毛が魅力的なおもちゃに映っているんでしょう。飼い主さんが意識せずに出した声や動きの反応を、犬は刺激的で魅力的な反応と受け取っちゃってたりします。これを繰り返すと髪の毛で遊ぶ事を学習しちゃうんです。
ストレスで髪の毛を食べてしまう犬の気持ちを想像してみましょうか。どんな気持ちか?満員電車に乗っている時を想像してください。電車の中で人がいっぱいだと視線はどこへ向けていますか?
だいたいが電車内にある広告だったり外の風景だったりスマホだったりしませんか?人もストレスが加われば、その場から意識を別の場所に移す行動をしがちなんですね。
犬も同じで気持ちを逃がすために毛を口にするケースもあります。犬の気持ちを想像する事は、犬を理解していく助けになるでしょう。
犬が髪の毛を食べる行動の対策
髪の毛のじゃれつきをエスカレートさせない
犬の髪の毛にじゃれつく状態をまず作らないことです。ほとんどの犬の困った行動は、ささいなきっかけから髪の毛を食べることに始まります。犬がちょっと髪の毛にじゃれついたくらいだと、可愛らしい仕草に感じてしまい行動を容認しがちです。
しかし、その犬の行動は徐々にエスカレートしていくことを忘れてはいけません。ちょっとでも髪の毛にじゃれつきが始まったら、すぐにその場から立ち去ることで、犬が髪の毛で遊ぶと楽しい時間が終わってしまうことを学習させましょう。
犬のストレスの原因を突き止める
犬のストレスが原因の場合、髪の毛を食べさせないことに注目するのではなく、なぜそのような行動をとってしまうのかを考えてあげましょう。その上でこまめに掃除をするなど、犬が髪の毛を食べてしまう環境を改善します。
監修ドッグトレーナーによる補足
髪の毛を食べてしまうのは遊びの延長なのかストレスなのかを突き止める。遊びからくる原因なら別の遊びを提供する。ボール遊びやおもちゃ遊び、おやつを皿に入れて部屋のどこかに隠す遊びなど工夫してみましょう。
ストレスからくる原因ならストレスを無くしたり、ストレスに慣れる練習を重ねてみましょう。ストレスに慣らす方法としておすすめなのが、小さい刺激から慣らしていく方法です。
例えば高い足場に乗せられるのがストレスになる犬のケース。最初は怖がらない高さの足場を用意して乗せてみましょう。怖がらなければ徐々にその高さを上げていくという方法です。トリミングテーブルで高い足場が苦手なら、ぜひ試してみるのはいかがでしょうか。
学習してしまった行動をいきなりゼロにしようとすると強いストレスと反動が起きてしまいがちです。少しでも髪の毛を食べる行動が減らせる事から始めてみるのが成功へのコツになります。
犬が髪の毛を食べる行動のリスク
犬は猫のようにヘアボール(毛玉)の吐き出しが得意ではありません。したがって摂取したものは犬の体内に取り込まれるわけですが、あいにく犬は食べた髪の毛を消化できません。
犬の便に、誤って食べた髪の毛が付着しているのを見つけたことはありませんか?うまく髪の毛が排出されればよいのですが、犬の体内に留まってしまうと毛球症を起こしかねません。
また犬の便に髪の毛が付着していたとしても、肛門付近で絡まり、排泄障害を起こす場合があります。髪の毛の摂取量によって異なりますが、犬が誤って相当量の髪の毛を食べてしまった場合は、速やかに動物病院での診断を受けることをお勧めします。
監修ドッグトレーナーによる補足
髪の毛を食べてしまう犬は同じな様な細くて長い物を食べてしまうかもしれません。例えばぬいぐるみのほつれた糸やカーペットのほつれた糸。これらを少しずつ食べてしまうと腸に詰まってしまい、大きな外科手術を必要としかねません。
愛犬の不必要なリスクを高めないためにもあなたの助けが必要となっていきます。
まとめ
このように犬が髪の毛を食べる理由として、美味しいからといった味覚が理由ではありません。したがって、たまたま犬が髪の毛を誤飲しただけで、そもそも「遊んでほしい」「落ち着かない」といった原因を解決しない限り、犬が髪の毛を食べる問題はなくなりません。
犬は髪の毛を食べて無害というわけではありませんから、早めの対策を心がけましょう。