犬の胃腸炎 原因や症状、治療法から予防法まで

【獣医師監修】犬の胃腸炎 原因や症状、治療法から予防法まで

犬用の食事が多種多様になり、胃腸炎にかかる犬が増えています。胃腸炎は犬の胃腸の病気の中でもっともポピュラーなものです。犬の胃腸炎には急性と慢性のものがあり、それぞれによって治療方法が異なるのをご存知でしょうか?今回は犬の胃腸炎の原因や症状、治療法や予防法まで紹介いたします。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

犬の胃腸炎とは?

獣医師にお腹を診察されている犬

犬の胃腸炎とは、犬の胃腸に何らかの異常がおこり、下痢や嘔吐などの症状が見られる病気です。胃腸の病気であるため、病気の総称として「胃腸炎」という病名になっていますが、厳密には胃炎と腸炎に分けられます。嘔吐する場合は胃炎、下痢の場合は腸炎の可能性が高くなります。

また、犬の胃腸炎は「急性胃腸炎」と「慢性胃腸炎」の2種類に分けられます。引き起こしている症状でどちらに当てはまるか見分けることもでき、一般的に症状が一週間以内で治まるものは「急性胃腸炎」、一週間以上続くものは「慢性胃腸炎」と分類されます。

犬の胃腸炎の原因

飼い主の膝の上でお腹を出してくつろぐ犬

急性胃腸炎の原因

  • 異物の誤飲
  • 感染症
  • 寄生虫
  • 薬剤
  • 食べ過ぎ

急性胃腸炎の原因として、最も多いのが「異物誤飲」です。本来食べてはいけないものを誤って飲み込んでしまうことで、胃が刺激されたり、中毒症状が現れたりすることによって、胃腸炎を引き起こすことがあります。他にも何らかのウイルス性感染症や、過食、不衛生な水や腐敗した食べ物を口にしたことが原因になることも。

慢性胃腸炎の原因

  • 消化不良
  • 胃腸の運動機能の低下
  • ストレス
  • アレルギー
  • 遺伝

慢性的な胃腸炎の原因は非常に様々で、加齢によるものや体質的なアレルギー、ストレスや遺伝など多岐に渡ります。上記以外にも、急性胃腸炎を治療せず放置してしまったために慢性化してしまうケースや、尿毒症や胃潰瘍、胃の腫瘍が悪化して慢性胃腸炎を引き起こす場合もあります。

人間の胃腸炎同様、犬の胃腸炎も原因がハッキリしないケースも少なくありません。子犬や高齢犬の場合、季節の変わり目や引っ越しなどのストレスによって胃腸炎を引き起こすこともあります。また、真夏などの暑い季節は、置き餌が腐敗することで胃腸炎の原因となることもありますので、十分に注意してくださいね。

犬の胃腸炎はうつる?

基本的に、犬の胃腸炎が私たち人間にうつることはありません。とは言っても、犬の腸炎の原因が人獣共通感染症である場合は、人にうつる可能性もあります。また、犬特有のウイルス性感染症、細菌感染症である場合は人にはうつりませんが、犬同士での感染は十分にあり得るため、多頭飼いでは注意しなければなりません。

犬の胃腸炎を引き起こすことがあるウイルス性感染症には、ジステンパー、パルボウイルス、コロナウイルスなどが挙げられますが、これらは定期的なワクチン接種によって感染を防ぐことができる病気でもあります。

細菌感染症においてはサルモネラ菌やブドウ球菌、カンピロバクターなどがあり、お互いを舐め合ったり、トイレが共同であったりする場合は、感染の恐れがあるため注意しましょう。

犬の胃腸炎の症状

伏せて元気のない犬

急性胃腸炎の症状

  • 嘔吐
  • 吐血
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 下痢
  • 脱水症状
  • 血便

胃に炎症や異常が起きている場合、横隔膜や腹筋を使って胃の中のものを吐き出そうとします。犬が吐いているときで異物の誤飲の可能性が低い場合は、急性胃腸炎の可能性があるため、しっかり観察してください。

また胃腸炎を発症している場合、胃の中に吐くものがなくても、胃液や粘液のみ嘔吐するほど激しい吐き気を伴うこともあるため、脱水症状を誘発させることも少なくありません。

犬は、稀に一気食いをした後や空腹時などに嘔吐することもありますが、頻繁に嘔吐と下痢を繰り返す場合や、嘔吐物や下血症状がある場合は、何らかのトラブルが生じている証拠でもありますので、なるべく早く動物病院を受診してください。

特に中毒性のあるものを誤食、誤飲した場合は激しい嘔吐や下痢、よだれ、震え、ふらつきや痙攣、稀に発熱などの症状が現れることもあります。生命に関わる可能性もあるため、早急にかかりつけの獣医師に指示を仰ぎましょう。

慢性胃腸炎の症状

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 時々吐くことがある
  • お腹を触ると痛がる
  • 頻繁に水を飲む
  • ゲップが続く

慢性胃腸炎の場合、急性胃腸炎と比べて症状が分かりにくいのが特徴です。また何度も症状が繰り返されることから、犬がそれらの痛みや不快感に慣れてしまい反応が鈍くなることも少なくないようです。

急性胃腸炎と比べて症状が軽く見えるため、「またお腹が痛いのかな?」と安易に捉えられがちですが、小さな犬の胃腸には大きな負担となっていることを忘れてはいけません。ゲップやおならが増えたり、口臭がきつくなったり、腹部を触られるのを嫌がる場合は、早急に動物病院を受診しましょう。

上記で記載した症状に当てはまっていれば、早急に病院を受診してください。また、大きな症状は出ていなくても、犬が物を食べない、水を飲まないなどの様子が見られた場合、早期発見、早期治療をすることで愛犬が辛い思いをせずに済むこともあります。「いつもと様子が違うな」と感じた場合は、早めに動物病院を受診することを心がけましょう。

犬の胃腸炎の検査方法

血液検査イメージ

ウイルス検査

犬の胃腸の原因としてウイルス性感染症が疑われる場合、専用の検査キットなどを用いたウイルス検査が行われます。簡単な検査キットでも、犬パルボウイルスや犬ジステンパーウイルスを検出することが可能です。

糞便検査

下痢の症状が酷いときは、糞便検査を行うこともあります。受診前に排便した場合は、ラップなどに包んで持参するといいでしょう。便を持参できない場合でも、必要であれば直腸から採便して検査することも可能です。

血液検査

犬の胃腸炎の症状が軽度な場合は、診察と内服薬などの処方で様子を見ることが殆どですが、症状が激しい場合は血液検査を行うことがあります。体内に異物があるときや感染、炎症を起こしている場合に高くなるCRP(C反応性たんぱく)値やWBC(白血球数)、脱水や貧血に陥っている場合に反応があるRBC(赤血球数)などを調べます。

監修獣医師による補足

嘔吐が激しい場合は膵炎の可能性も考えます。急性膵炎は激しい嘔吐、腹痛などが特徴で、血液検査で判定することができる病気です。あまりにも激しく吐き、元気消失・食欲廃絶などの症状があれば検査を行ってください。治療が遅れると亡くなることもあります。

獣医師:平松育子

レントゲン検査・エコー検査

犬の胃腸炎の原因が異物誤飲である場合は、レントゲン検査やエコー検査(超音波検査)などが用いられる場合もあります。

犬が胃腸炎を発症した場合、症状が軽度である場合は仮診断、対症治療(今ある症状を緩和させる)が主となります。それでも症状が治まらない、悪化するという場合は詳しい検査を行い、原因解明に努めます。下痢や嘔吐の回数、思い当たる原因、発症時期などは大切な診断材料の一つとなりますので、事前にメモしておき、獣医師にしっかり伝えましょう。

犬の胃腸炎の治療法

錠剤の薬を見るポメラニアン

犬の胃腸炎の治療方法は症状を引き起こしている原因、症状などによって様々です。

急性胃腸炎の治療方法

  • 異物の除去
  • 抗生物質の投与
  • 駆除薬の投与
  • 絶食
  • 食事療法

急性胃腸炎は、症状が軽度であれば自然治癒することもありますが、急性胃腸炎の原因が異物誤飲である場合は、早急に異物を取り出す治療が施されます。手術用の小さなマジックアームを使用したり、胃の中を洗浄したり、吸着剤を投与するなどして、胃の中の状態を元に戻します。

感染症が原因となっている場合は抗生物質の注射や点滴、抗生剤の内服薬、もしくは駆虫剤などを使用して治療します。また、老犬や幼い犬には向きませんが、体力のある犬に対しては投薬と同時に、半日~一日ほど絶水・絶食を行い、消化器を休める方法が用いられることもあります。

慢性胃腸炎の治療方法

  • 基礎疾患の治療
  • 対症治療
  • 食事療法

ある程度原因が判明していれば、それに特化した治療法を行いますが原因の特定が難しい場合は、食生活や生活環境の改善に重点を置いた治療が行われることも少なくありません。基本的には粘膜の炎症を抑えるステロイド剤などを投与しつつ、消化に良いものを与えて食事のコントールを行います。

また、ストレスを与えているものはないかなど生活環境の見直しも大切な治療法のひとつになってきます。犬の胃腸炎は一度慢性化してしまうと、なかなか完治することが難しいので長期に渡る治療が予想されます。一度回復したとしても、また再発することもあるため、定期的な検査や治療を行うことが大切です。

治療期間

犬の胃腸炎の治療期間は、その原因や症状によっても異なるため、何日程度で治るのかは一概には言えません。急性胃腸炎の場合、症状が軽度であれば投薬などによって1週間程度で完治することもありますが、慢性胃腸炎の場合は数か月~半年程度の長期的な治療が必要になることもあり、場合によっては入院もあり得ます。

犬の胃腸炎はその原因がはっきりしないことも多く、症状が長引くことや、完治したかのように見えても症状を繰り返すということも少なくありません。そのため、胃腸炎の治療を行うとき、必要な検査や治療方法を見極めることも大切になりますので、信頼できる獣医師を見つけておくことも非常に重要となります。

治療費

犬の胃腸炎の治療の値段は、検査や治療の内容はもちろん、動物病院の料金設定によっても大きく異なることがあるようです。まず、急性胃腸炎を疑って受診した場合を想定して、おおよその料金を計算してみると、以下のようになります。

  • 診察料 800円~1,500円
  • 糞便検査 500円~2,000円
  • 血液検査 3,000円~5,000円
  • ウイルス検査 3,000円~5,000円
  • レントゲン検査 1,500円~5,000円
  • 抗生物質注射 1,300~2,000円
  • 内服薬処方 800円~1,500円

それぞれ必要になる検査や処置が異なるため一概には言えませんが、病院内で行える検査や点滴、内服薬の処方などを行った場合で、2万円~3万円程度の治療費が掛かることが多いようです。特に異物誤飲によって急性胃腸炎を発症した場合は、その処置や手術の費用が必要になるため、治療費が20万円以上となることも考えられます。

中には説明がないまま様々な検査が行われ、高額な治療費を請求されたという方もいるようです。事前に、愛犬が今どんな状態で、何の検査が必要なのかをしっかりと説明を受けましょう。また、犬の胃腸炎の治療費はペット保険が適用される場合もありますので、動物病院、または加入先の保険会社に確認してください。

犬の胃腸炎の予防方法

飼い主からおやつをもらうチワワ

  • 誤飲させない
  • 消化に良いものを与える
  • ご飯やおやつは適量を与える
  • ストレスを緩和させる

誤飲に注意

犬の急性胃腸炎の原因となる誤飲、誤食を徹底して予防対策しましょう。犬が誤飲してしまいそうなものは届かない場所に置いたり、食事を終えたあと食べこぼしがないか確認したりと、日々注意しておくことが必要です。また、室内だけではなくお散歩中の誤食にも注意してくださいね。

食事管理

犬の中にも、体質的に胃腸が弱い子も少なくありません。日頃から愛犬の体にあったフードを与え、季節の変わり目など胃腸が敏感になる時期には消化の良いものを与えるようにしましょう。犬用の腸内サポートを行うサプリメントなどを取り入れたり、ウェットフードを与えている場合は人肌程度に温めたりと、日頃からサポートしてあげたいですね。

また、欲しがるからといって一定量を超えるご飯やおやつは与えないように心がけましょう。特に人間用に加工、調理された食べ物は塩分や糖分が多く含まれているため、胃腸炎の原因となる場合もありますので、与えないよう注意してください。

胃腸にやさしい食べ物としては、おかゆ、さつまいも、ヨーグルト、サプリメント、りんごなどがあります。ほかには、犬の身体が温まるような手作り食を与えるのも良いと思います。レシピの例を挙げるので、参考にしてみてください。

生活環境

犬の胃腸炎を発症させないためには良質な食事や適度な運動などはもちろん、ストレスフリーな環境を心がけ、免疫力を向上させることも重要です。犬が抱えるストレスは、些細な環境の変化や、飼い主さんと過ごす時間、感情などに左右されることも少なくありません。愛犬が伸び伸びと暮らせる環境作りを、今一度見直してみるのもいいかもしれませんね。

まとめ

犬と獣医

胃腸炎と一口にいっても急性胃腸炎、慢性胃腸炎に分類されることや、様々な原因や症状があることがわかりました。犬は空腹時や一気食いをした後などに嘔吐することもあるため、つい安易に捉えられがちですが、胃腸炎を放置することで最悪の場合、死亡してしまう可能性もあります。

痛みを言葉で伝えることができない愛犬のためにも、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診するようにしたいですね。また、犬の胃腸炎を予防する方法も、試すことができるものからやってみましょう。犬の食生活の改善も大切ですが、無意識のうちに消化に悪いものを与えていないかなども同時にチェックしてみましょう。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 アール

    うちの子が嘔吐していたので心配で病院に連れて行きました。
    その時に言われたのが「胃腸炎」でした。
    嘔吐も沢山吐いていたわけではなく、つばというか胃液というか物ではなかったこと、量が少なかったことで数日、様子を見ていたのですが嘔吐したものに小さい赤い点々が見られたため慌てて病院へ行きました。
    エコー検査をしてもらいましたが、先生の診断は「空きっ腹が続き、胃炎を起こしているようだ」という結果に。
    うちの子は偏食なので2,3日ほとんどフードを食べないこともあり胃酸で胃が荒れていたそうです。大きな病気でなくてホッとしましたが、その時に先生から教えていただいたのは「犬はもともと肉食動物で胃酸がとても強い為に、空腹が続くと胃が荒れてしまう為に胃炎をおこしやすいから少しづつでも、食事の回数を分けてあげるようにしてください」とアドバイス頂きました。
    記事にあるように、誤飲や感染症の場合がほとんどですが、うちの子みたいに偏食気味の子も胃腸炎になりやすいので要注意です。
    嘔吐して食欲がない、下痢が続く、などの明らかな症状が続く場合は病院へいくべきですが、
    嘔吐はするものの食べたものを吐いているわけでない、食欲はある、元気だ!という場合は食事の量や回数に問題があるかもしれないので今一度、食事を見直してあげて欲しいと思います。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    我が家の14歳の愛犬も昨年『急性胃腸炎』になりました。その前後の症状はというと、まず散歩の距離が明らかに減ってきて元気がなく、好きなおやつを珍しく拒否しました。そして、夜に母が「なんか具合が悪そうなんだけど」と気づいて、その後何度も嘔吐しました。
    汚い話で申し訳ありませんが、中身がレバー状の血が混ざった未消化のおやつなども入った大量の嘔吐を数回繰り返しました。病院が終わっている時間でしたので、電話で先生に指示をしていただきました。まずは、持っていた「ミソプロストール製剤」という胃薬だけ飲めたら与えて、その他は絶食してくださいとの事でした。水分は犬用のポカリを薄めたものをちょっとづつ飲ませるくらいにして、しばらく様子を見て、徐々に数日かけて流動食にしていきました(写真有)。そして、少しづつフードの硬さを戻していくようにしていったら、具合も良くなりました。ただ、吐血したので便にもしばらく血が混ざっていたので、その当時とても心配でした。まさに、記事にあるような『急性胃腸炎』の症状そのままだったような気がします。
    うちの犬の場合の原因は、多量の薬の服用(ステロイド等)で胃が弱っていたようです。
    治療の為と思っていた薬が、実は愛犬の身体を蝕んでいたと思うと、飼い主としてもう少し考えなくてはいけないと反省し、それからは薬にばかり頼らずに食事の改善など工夫するようにしています。お陰様で今はとても調子が良く過ごしております。

    匿名の投稿画像
  • 投稿者

    女性 もふころ

    愛犬が急性胃腸炎になったばかりです。
    食欲不振と、嘔吐下痢が3日ほど続いたのですが、なぜか元気だけはあったのであまり心配もしませんでした。4日目になると下痢がやや黒くなったので、驚いて獣医さんに診せたところ急性胃腸炎でした。胃薬と整腸剤、吐き止めを処方され2日ほどで落ち着きました。
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