どんな手を尽くしても咬みついてくる凶暴な犬の最後

どんな手を尽くしても咬みついてくる凶暴な犬の最後

人を咬む事で自分を守ろうとしたダックスがいました。嫌な事をするなら咬む。そう思い込んだその子は治療する機会を失い悲しい最後を迎えました。

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凶暴なダックス

牙をむく犬

私が以前勤めていた動物病院であった出来事です。ダックスの女の子で、とても可愛い綺麗な顔をしたダックスでした。待合室でも大人しく待っていて、吠えたりもせずにじっと飼い主さんの膝の上に座っています。とても大人しくて頭のいい子です。でも診察台に乗せると…。

頭のいいダックス

犬の横顔

ここからが私達の闘いです。今までいろんな犬を診てきましたが、このダックスを超える犬はいません。

通常、犬は噛む前に警戒して唸ります。「これ以上近づくと咬むぞ!」とばかりに唸り歯を剥き続けます。
でもその子は違いました。唸る事はしません。見た目は怒ったように見えないので、知らない人だと撫でてしまいそうな雰囲気です。

その子は人の手の動きをじっくりみています。どう人が動くか考え、そして一瞬でも隙を見せると咬むのです。その動きがとにかく早く、動物の扱いに慣れた院長でさえも何度も咬まれ、治療を断念しました。
軽くではなく本気で噛むので、咬まれると大きな傷になりますし、一度咬むと離しません。縫うほどの傷を負った人もいました。

口輪とエリザベスカラーも一瞬でつけないと咬まれてしまいます。うまくつけることが出来ても口輪もうまく外してしまうし、エリザベスカラーもカラー越しに見える手を一瞬で見つけ咬みつき離しません。予防注射の時も一瞬で離れないと咬まれるので、検査などの時間のかかる処置は全く出来ませんでした。

治療に非協力的な飼い主さん

問診中

その子を唯一触ることのできる飼い主さんはというと、犬を診察台に乗せると部屋から出て行き外でタバコを吸うか、待合室でスマホを操作している状態でした。犬に対して関心がないのかと思いましたが、予防接種やフィラリア予防も欠かす事はなく、犬が病気になればすぐに病院にやってきました。一度診察の際に協力をお願いしましたが、「私に対しても咬むから無理」と言い、いつものように診察室から出て行ってしまいました。

私達も咬まれたくはない!と心の中で叫びましたが、そんなことが言えるはずもなくその子が来院すると病院は異様な緊張感に包まれました。

異変

虚ろな顔の犬

ある日、病院にやってきたその子はいつもと様子が違いました。ぐったりとして横になったままで立ち上がることができないようでした。舌の色も真っ青で呼吸も荒く緊急処置が必要でした。

興奮させない為に、優しくタオルで包み顔を隠し血管を確保する為に前足を持ちましたが…その瞬間、私の手を咬みにきました。すぐに手をどけたので歯がかすった程度ではありますが、しっかりと歯型はついています。

こんな状態になっても人を咬もうとするこの子が可哀想で仕方ありませんでした。
「人に対して、ここまで信頼がないのか。どんな風に育ってきたのか」考えれば考えるほど、飼い主さんに対して腹がたちました。

それでもなんとか押さえ、血液検査をしましたが、検査結果が出る前に亡くなってしまいました。その後、先生が犬のお腹が膨らんでいることに気づきました。

エコーを当ててみると、お腹の中には液体が溜まっていました。お腹の液体を注射器で吸うと、真っ赤な血がシリンジの中に流れました。おそらくですが、お腹の中に腫瘍があり、それが何かの拍子に破れてしまい大量にお腹の中で出血した事によるショック死だったと考えられます。

まだ7歳。早すぎる死です。いつも治療に対して非協力的で感情をあらわにしない飼い主さんも、亡くなったその子を抱きしめ泣いていました。
もしこの子が咬む子でなければ、先生の触診でお腹のできものに気がつき治療できたはずです。もし私にこの子をうまく押さえる事が出来れば、検査も出来たんじゃないかと思うと自分の無力さを感じました。こんな悲しく苦しい最後を迎えさせてしまった事にスタッフみんなやるせない気持ちで、悲しむ飼い主さんを見送りました。

最後に

光に照らされている犬

動物病院で働いていると、犬に咬まれる事はよくある事なので咬まれた犬に対して怒りの感情はわきません。ただそんな子にしてしまった飼い主さんに対して怒りの感情が沸く事があります。

確かに性格的に怖がりで咬む子はいます。ただそれはしつけや愛情でどうにかなると思います。咬むから何もしない。それは虐待と一緒です。

犬には罪はありません。犬を飼うと決めたら、その子が健康で幸せな時間を過ごせるよう最低限の躾は必要です。人を咬んでしまう子はそれだけで治療の機会を失います。そんな子が1人でも減らせるよう動物病院スタッフも技術を磨いていますが、やはり飼い主さんの協力も必要なのです。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    本気で咬みにくる犬の訓練をしてくれる、「愛犬救命訓練士」がいます。
    何人もの訓練士やトレーナーに匙を投げられた仔でも、喜んで助けてくれます。
    愛する我が仔を何とかしたい、普通の生活がしたいと思われた方、「愛犬救命訓練士」でググってみて下さい。きっと希望の光が見えるでしょう。
  • 投稿者

    30代 女性 そら姉

    どんな時でも噛むダックスフンドの話を読みました。
    おそらく、その飼い主さんは犬が元々苦手な方だったんじゃないでしょうか?
    そのダックスちゃんは女性の飼い主が購入したのではなく、
    家族又は恋人が購入し、何らかの事情でその女性の飼い主さんが世話をしなければいけなくなった…ではないでしょうか?

    犬は、犬のことを『恐い』と思う人の感情を察知して、ほえたり、噛みついたりする事があります。
    その飼い主さんの感情を察知し噛みつく、
    その飼い主さんと一緒に暮らしている誰かに『噛みつくから』と暴力を振るわれ、
    ダックスちゃんも『人間は恐い、敵だ!』と学習し、人に噛みつく…。
    そんな悲しみの連鎖が引き起こしたものではないのかと思いました。


    そして、『噛みつきグセ』の治し方ですが、
    色々な方法があるかと思いますが、
    私は子犬の時に噛みついてきたら、
    そのまま犬の口の中に手を入れ、犬のノズルを掴むように強めに掴みます。
    その時、犬の歯を手にわざと食い込ませながら、『これ以上噛むな!リーダーは私だ!私の方が強いぞ!』と威圧的な態度をわざと取ります。

    これを2回程すると犬はビックリして、手をわざと口に近づけても噛まなくなります。
    もちろん、手を口に近づけて噛まなくなったら、たくさん褒めてあげます。

    私の飼っているダックスフンド2匹と前の職場にいた犬はこれをして、まったく噛まなくなりました。

    職場にいた犬は上司のワンちゃんだったのですが、私をリーダーと認めたようで、飼い主の上司が呼んでも私のそばから離れなくなってしまいましたが…。

    今回のダックスちゃんのように成犬になってからの場合は、
    軍手を何重かにするか、訓練用の手袋などで今後行ってみてはどうでしょうか?
    そして一番大事なのは、
    『人は犬のリーダーであり、犬を守ってくれる強い味方であり友なのだ。だから従いなさい。』と、人が強く思う事でワンちゃんに気持ちを伝える事だと思います。

    なぜなら、犬は本能でリーダーを求め、
    リーダーがいないと判断すると自らがリーダーになるが、

    リーダーの責務で、外部のものを威嚇し、近づいてきた敵には攻撃をし、
    リーダーになった犬はその責務でストレスを抱えてしまう。

    そのストレスから解放してあげられるのは、犬の友として永年共に繁栄してきた人間しかいないからだ。


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