戦友との最後の別れ…愛犬の為に「安楽死」を選択した男性

戦友との最後の別れ…愛犬の為に「安楽死」を選択した男性

戦場で爆発物探知犬として毎日命を懸けて戦ってきたボッザ。ボッザは戦場で心の友と言える親友を見つけ任務終了後戦友と家族として暮らす事になりました。戦友と幸せに暮らし始めたボッザでしたが病魔が襲い戦友と安楽死という辛いお別れをしてしまいました。

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爆発物探知犬として活躍したボッザとスミスさんとの出逢い

皆さんは、「爆発物探知犬」の事をご存知でしょうか?

爆発物探知犬とは、その優れた嗅覚を使い爆発物の臭いを嗅ぎ分け、地雷や爆弾などの爆発物を発見し、多くの人達の命を救う為に自らの命を懸けて任務に就いている犬の事です。

爆発物探知犬は、東京オリンピックにも採用される予定で、近年注目を浴び始めている犬の職業でもありますので、ご存知の方も多いかもしれません。

今回紹介する"ジャーマンシェパードのボッザ"は、2006年からアメリカ軍の爆発物探知犬として活躍していました。ボッザは、イラク、キルギス、クウェイトの戦場に爆発物探知犬として派遣され、多くの人の命を自らの命を懸けて救ってきました。

爆発物探知犬として活躍しているボッザと"スミスさん"が出逢ったのは2012年の事でした。

「私は、彼と一緒に働く事が大好きでした。ボッザは私に様々な事を教えてくれました。そして、私もボッザに爆発物探知犬の仕事以外に君には生きる道がある事を教えてあげたんです。」

とスミスさんは、相棒のボッザとの思い出を語っています。

ボッザは、戦場での生活しか知りませんでしたが、ようやく任務が解かれる日が来ました。そして、スミスさんはボッザを家族として迎える事を決め、戦場から撤収する日に自宅につれて帰る事にしました。
戦場しか知らないボッザにようやく第二の犬生が訪れます。それは、ボッザにとってとても幸せな日々の始まりでもあります。

彼らは、穏やかな時間を楽しみました。

ボッザは、スミスさんが手で作ったウサギの影絵を追いかけて遊んだり、自分の影を見て「わんわん」と吠えたり、スミスさんが行くところにどこにでもついて行きました。

眠る時もスミスさんのベッドに横たわり、毎晩「おやすみなさい」とスミスさんに語り掛けました。

スミスさんの横に座って、スミスさんが奏でるギターの音色を聞く事が好きでした。ギターの音色に耳を傾け落ち着いた様子のボッザ、その様子はまるで兄弟の様です。

しかし、そんな2人の幸せな日々もそう長く続く事がありませんでした。やっと幸せを手にしたボッザでしたが、その体には病魔が忍び寄っていたのです。

ボッザの為の「安楽死」という辛い選択

2016年の夏、ボッザは11歳の老犬になっていました。スミスさんとの穏やかな日を過ごしていた彼でしたが、体に異変が起こり始め、病気になってしまいました。

「変性性脊髄症」という病気でした。

この病気は、ジャーマンシェパードやボクサーといった犬種に多く発症する病気です。9歳~11歳頃から症状が現れはじめ、症状は痛みもなく時間をかけて体が麻痺していく脊髄の病気です。後ろ足の麻痺から徐々に進行し、前足に麻痺の症状が出始める頃には、自力で排泄する事が困難になってしまいます。
末期になると、全部の足が麻痺してしまい、呼吸困難といった症状だけでなく、嚥下困難、全身の筋萎縮等の症状も引き起す可能性もあります。

この病気の最大の問題は、「治療が困難である難病」だという事です。治療方法が無く、過度な理学療法を行ってしまうと逆に筋肉を傷つけてしまう可能性があります。

もしかしたら、ボッザは戦場で爆発物探知犬として任務を遂行している頃から、静かに病魔と闘っていたのかもしれません。

ボッザは徐々に足が麻痺し始め、歩く事が難しくなってきました。やっとの事で立ち上がりますが、毎日の排泄をさせてあげる事が難しくなってしまっている状態です。

スミスさんは、そんなボッザの姿を見ていてどんなに辛かったことでしょうか。今までボッザが戦場で常に緊張感と隣合わせで、辛い生活を送っていた姿を側で見てきました。やっと、幸せに普通の犬として生活を開始したばかりです。

犬として普通に生活をし始めてからボッザの性格は変わっていきました。緊張感から解かれたせいか天然ボケが目立つ性格になりました。以前の火薬の臭いを常にまとっていたボッザとは違います。その姿は、幸せに暮らしている普通の犬です。

スミスさんはボッザの事を考え、「安楽死」を選択する事しかできませんでした。安楽死は、愛犬家として、戦友として、選択したくなかったものだったと思います。しかし、ボッザの為を想うのであれば、安楽死しか解放してあげられる道がなかったのです。

ボッザの安楽死へ

スミスさんはボッザを連れて、テキサス州の動物病院に行きました。ボッザの安楽死に同行したのは、スミスさんの上司と同僚9人でした。今までアメリカの為に命を懸けて働いてきたボッザに敬意を払い、ボッザが出来るだけ快適に横たわれるように毛布を敷きました。そして、全員がボッザが天国へと旅立つ時を見守り続けます。

ボッザの体は徐々に痛みから解放されていきました。ボッザの表情は病に侵される前の表情に戻って行きます。そして、ボッザは静かに天国へと旅立っていきました。

その姿を見てスミスさんは、その場で崩れ落ち号泣します。ボッザは二度と戻ってくる事はありません。

そんなスミスさんの姿をみた同僚たちは、スミスさんの背中を優しくさすり「これで良かったんだ、大丈夫、大丈夫だよ」と慰めました。

スミスさんの上司はボッザの体にアメリカの国旗を掛けました。
これはアメリカの為に戦ってきたボッザへの最高のはなむけとなった事でしょう。アメリカの国旗を纏った姿を見て、スミスさんは自分でも信じられない程、心が落ち着き平和な気持ちが舞い降りてきたそうです。

「人間の為に忠実に気高く生きたボッザを決して忘れない」

とスミスさんは愛犬との思い出と一緒にこれからも強く生きていく事を誓いました。

アメリカの為、自らの命を懸けて戦ってきたボッザは、今頃天国で幸せに穏やかな日々を送っている事でしょう。

まとめ

毎日戦場で爆発物探知犬として過酷な任務をこなしてきたボッザ、戦場で素敵な戦友と出会い、ボッザは大好きなスミスさんと家族として一緒に暮らす事が出来ました。

ボッザにとってスミスさんとの日々はどんなに幸せな事だったでしょうか。天国でも普通の犬として幸せな生活を送っている事を願います。

爆発物探知犬は、近年日本でもメディアに取り上げられ、知名度が上がって来ています。しかし、爆発物探知犬は、まだまだどんな任務をこなしているのか等、多くの事が知られていないのが現状です。私達の生活が犬達に支えられている事に感謝をしなくてはいけないのかもしれません。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 匿名

    爆発物探知犬の役目を終えて、スミスさんというパートナーに出会い、普通の生活を送っていたのに病気に罹るなんて悲しいです。

    排泄もままならなくなっていて、安楽死しか選択肢が無かったようですね。辛い事だと思います。
    今は安楽死を選ばないつもりでいますが、いざその時が来たら凄く悩むと思います。なにが最善なのかは分から無いです。
  • 投稿者

    女性 匿名

    痛くて辛くて苦しい事は人間でも我慢できませんよね。
    賛否ありますが、私は安楽死は苦しみから解放させてあげ、安らかに旅立たせてあげる飼い主として最後の優しさだと考えています。
  • 投稿者

    30代 女性 匿名

    世話が面倒だからだとか、もう飼えなくなったからとか、年老いて看きれないからで安楽死を選んだり保健所に持っていく人たちもいる中、感じ方は人それぞれでしょうが、こんなにも愛犬のことを思った安楽死もこの世にはあるんですね。
    きっとこのワンコは大好きな飼い主さんの胸のなかで旅立てて喜んでるに違いないです。
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