犬のフィラリア症とは
フィラリア症の病原体
フィラリアとは糸状虫と呼ばれる寄生虫の総称です。成虫の体長はオスで約17cm、メスで約28cmあり、尾部が渦を巻いたような形をしています。犬に影響を及ぼすのはフィラリアの種類の1つである「犬フィラリア」です。犬フィラリアは、犬の肺の血管や心臓に侵入して寄生します。
フィラリア症の特徴
犬フィラリアが体内に入り込み、感染した結果、全身の血液循環や呼吸器、肝臓、腎臓を傷つけて深刻な影響を与えます。最悪の場合は死に至ることもあり、犬の種類や年齢を問わず、感染するリスクがある病気です。
犬のフィラリア症により引き起こされる症状
フィラリアの初期症状(軽度)
- 咳が出る
- 運動を嫌がる
- 食欲が落ちて体重が減る
- 毛のツヤがなくなる
- 呼吸が浅い
フィラリアの初期症状として、時折乾いた咳をする様子が見られます。元気がなくなり散歩を嫌がったり、呼吸が浅く軽い運動で疲れるようになったりします。食欲不振が続いて毛のツヤが悪くなるなど、見た目にも変化が現れます。
フィラリアの症状が進むと(重度)
- 貧血
- 腹水が溜まる
- 血色素尿が出る
症状が進行すると、常に貧血気味で口や目の粘膜が白っぽく見えたり、腹水によってお腹が出てきたりと見た目に変化が現れます。また、肺の働きが低下するため、軽い運動でも呼吸困難を起こし失神する場合があります。血色素尿や咳をすると血が出るなど深刻な症状が見られた場合は、すでに感染から何年か経っている可能性が高いようです。
重度のフィラリアであっても治療薬によって治る可能性はありますが、一度傷ついた臓器は完全には元に戻りません。そのため早期の発見や予防が重要です。
フィラリア症の感染経路
フィラリアの感染経路
フィラリアは蚊を媒介して感染します。日本では約16種類の蚊がフィラリアを媒介しますが、その中でも「ヒトスジシマカ」や「アカイエカ」、「トウゴウヤブカ」などが代表的です。
蚊が犬の血を吸う際、蚊の体内から犬の皮膚の下に感染源となる幼虫(ミクロフィラリア)が侵入します。犬の体内に入った幼虫は感染後しばらくは皮膚の下や脂肪内を移動しますが、やがて犬の血管内に入り最終的には心臓に寄生します。心臓や肺動脈などの血管内に入ってしまったフィラリアは予防薬では駆除できません。
フィラリア発症までの期間
フィラリア症は、感染源となる幼虫が犬の体内に入っても、すぐに体調に変化として現れません。ミクロフィラリアは犬の皮膚の下や筋肉、脂肪などで生息しながら脱皮を繰り返し、2カ月ほどで成長します。成虫となったフィラリアはオスとメスが揃うと幼虫を産むようになり、感染から約7~8カ月後には末梢血管中にもフィラリアが出現します。
フィラリアの成虫の寿命は、約5~6年とも言われています。フィラリアの成虫が最終寄生場所に住みつき、何年もかけて心臓や肺の損傷が進んでから気づく場合も多いです。
犬のフィラリア症を予防する方法
犬のフィラリアは薬の投与によって予防できる病気です。予防薬を使うまでの手順をきちんと確認しましょう。
①フィラリア予防薬の投与前に検査する
フィラリアの予防薬を投与する前に必ず病院での検査を行いましょう。
犬フィラリア成虫により産まれるミクロフィラリアが既に体内にいた場合、そのまま予防薬を投与すると一度に大量のミクロフィラリアが駆除されてショック症状が出るという副作用にも繋がるため危険です。
血中のミクロフィラリアの有無は、病院での血液検査によってわかります。血液検査にかかる費用は1,000円~3,000円程度が目安で、感染が認められた場合は心電図やレントゲン撮影など詳しい検査がされます。
②フィラリア予防薬の種類と与え方
- 錠剤タイプ
- 顆粒タイプ
- スポットタイプ
内服薬は錠剤や顆粒などの種類があります。錠剤の中には、犬の嗜好にあわせたミート味のチュアブルタイプもあり、噛み砕いて服用できるのが特徴です。スポットタイプは皮膚に垂らして浸透させられるので、薬を飲むことが苦手な犬も吐き出す心配がありません。
フィラリアが体内に侵入してから2カ月で心臓へ移動すると言われているため、内服薬は1カ月に1回必ず飲ませてあげてください。途中で忘れると、それまでの投与が無駄になってしまう可能性があります。また、体重によって投与する量が決まっているので、定期的な体重測定も忘れず行いましょう。
薬を投与する期間は蚊のいるシーズンとその前後1カ月間(5月~12月頃まで)が目安です。気温が高い地域では1年を通じて予防するところもあります。獣医師と相談の上、投与の仕方を決めてください。
犬のフィラリア症に対する治療
外科手術
フィラリアの治療として、外科手術によって成虫を摘出する方法があります。手術の内容は、頸部の静脈から金属製の長い鉗子を挿入し、肺静脈に寄生している成虫を釣り出すというものです。
フィラリアが肺静脈から心臓に移動して急性心不全を起こした場合には、緊急手術によって心臓内のフィラリアを取り除く必要があります。しかし、麻酔によるリスクや体にかかる負担もあるため、全ての犬が対象となるわけではありません。
薬剤の投与
発症した犬の中でも、比較的体力がある場合は、フィラリアの成長を駆除する薬剤の投与が行われる場合があります。しかし、死滅したフィラリアが肺の血管に詰まり、かえって病気が悪化する可能性もあるため注意が必要です。そのためフィラリアを駆除する薬剤の中には、日本で販売が中止になっているものもあるようです。
また、感染の原因となる成虫の数が少ない場合や、まだ症状が現れていないときには予防薬を長期投与する方法もあります。新しく入ってくる幼虫を駆除しながら、すでに体内にいる成虫の自然な減少を期待するものですが、回復したとしても障害が残る可能性もあるので獣医師との相談の上で慎重に判断しましょう。
対処療法
犬の年齢や体力が、手術やフィラリアの成虫を駆除する薬剤に耐えられないと判断されると、対処療法が行われる場合もあります。体内にいるフィラリアに対しての処置は行わず、咳を抑える薬や腹水の除去によって経過を見守るという方法です。
家庭では安静に過ごすことを心がけ、栄養価が高くバランスの取れた食事を与えます。症状が進行し、肝臓障害や腎不全などが発症している場合は、それに応じて療養食の調整をしましょう。療養をしても病気が回復に向かう可能性は低いので、やはり寄生させないように注意することが最も重要です。
まとめ
犬のフィラリア症はきちんと予防することで防げる病気です。予防薬を処方されたときは、投与するタイミングを守ることも大切です。正しい知識を身につけて愛犬を病気から守ってあげましょう。
ユーザーのコメント
男性 ラララ
すると、予防している、狂犬病の事ね、毎年狂犬病予防注射していると言う。
特に地方の田舎の飼い主の半分以上はフィラリアや8種混合ワクチンを知らないのではと思う。
40代 女性 ポンタ