思いもよらなかった、愛犬の死が私たちに残してくれた事
初めての犬
それは、もう成人した上の息子達がまだ保育園に通っていた頃、犬を飼っている知り合いからのこんなひと言から始まりました。
「うちの犬がパパになって子犬が7匹も生まれたよ。もらい手を探してるんだけど、どうかな?」
小さい時から犬と暮らしてきた私としては、以前から、『子供たちにも犬との暮らしを経験してもらいたい』という思いもありましたので、写真を見せてもらうと「何て可愛いい子犬!しかも大好きなゴールデンレトリバー!」と、すっかり私はその気になりましたが、夫は子供の頃に犬に追いかけられた苦い経験から犬が苦手でした。
少し悩んだのですが、ちょうど子供たちがのびのびと遊べるようにと田舎の庭のある家に引っ越す事になっていたので、『子供たちのために!』と犬が苦手な夫を必死で説得しました。
引っ越しが少し遅れたので、その子は親元で1匹だけ残り、お母さん犬を独り占めにして大切に育ててもらいました。まさに箱入り娘ですね。
3ヶ月の頃に夫と車で迎えに行きましたが、それはもうコロコロと小さくて可愛くて、犬が苦手なはずの夫が、家に着くまでに膝の上でスヤスヤ眠る小さなその子にすでにメロメロになっていました。
もちろん息子たちは会った瞬間に大歓迎!すぐに妹の様に可愛がっていました。
初めての大型犬との生活
すくすくと大きくなって、驚いたのはその成長の早さです。
食べて遊んで寝て、次の日にはひと回り大きくなったことが分かるほど。
『庭で走り回るだけでなくて、散歩もしっかりしないとね。これからもっと大きくなって力も強くなる。この子も子供たちも安全に遊んで散歩もできるようにもしないと』と、私はまだ幼かったその子にずいぶん厳しくしていました。
「家ではお父さんがイチバンだよ。自分より小さくても子供たちはお兄ちゃん。」
「飛びつかない!引っ張らない!ふざけて噛んではダメだめ!」
なんていうことを普段からよく言っていました。
賢く優しい子だったので、きっとそんな事ぐらいはすぐにちゃんと分かっていて、何回も言われても我慢してくれていたのかなと今は思います。
こうしてすっかり家族の一員になり、海やキャンプにも一緒に行きました。
外飼いだったので、近くを散歩で通る犬友たちに愛嬌を振りまいていました。
また、犬好きの知り合いが散歩に連れ出してくれたりと、みんなに愛される子でした。そんな暮らしが当たり前のように続いて、どんな時も元気で一緒にいてくれるような気がしていました。
その子が、5歳になった頃に兄たちと歳が離れて我が家に末の息子が誕生すると、今度は小さな弟の優しいお姉ちゃんでした。
それまでも、兄たちが親に叱られて外に飛び出した時に、その大きな体で包みこんで慰めてくれていたので、すでに精神的には妹というより、すっかりお姉ちゃんみたいでしたが。
その頃からでしょうか、顔の周りに白い毛が目立つようになっていました。
そして、赤ちゃんを抱っこしている時の私には遠慮していたのか、はしゃいで飛びつく事はしませんでした。
その後、家族に病気や災難があり、私は自分たちの事で手いっぱいになっていました。
今から思えば、家族思いの賢い優しい子だからこそ、家族のうれしい事も、反対に大変な事も自分の事の様にしっかり受け止めて、それがストレスにもなっていたんだろうと思います。
突然の別れ
7歳になった春、毎年の検診と予防注射を受けに動物病院を訪ねたところ、獣医さんに「元気がないし、心臓が弱っていて注射どころじゃないよ。入院して検査した方がいいよ。」と言われました。
そういえば前みたいに、はしゃがなくなったけれど、成犬になったから落ち着いてきたのかな?ぐらいにしか思っていなくて、まさかそんな事とは思いもしませんでした。
見た目でそんなにすぐ分かるほどだったのに、気がついてあげられなかった事をとても悔やみました。
結局、外からの検査では、はっきりした事が分からず、手術して調べたらわかるもしれないけれど、全身麻酔に耐えられずにそのまま亡くなるかもしれないとの事で、残された時間は家で過ごす事にしました。
その日から、「今までは何とか我慢してたけど辛かったのがわかってしまったのね…」とばかりに目に見えて弱っていきました。
あんなに食いしん坊だったのに食欲もなくなり、横になる事が多くなりました。
夜は心配だからと家の中に入れようとしましたが、今まで「お兄ちゃんがアレルギーだから、中に入ってはダメ!」と言われてきたので、入れようとすると申し訳なさそうにしてどうしても入ろうとしません。
こんな事になるなら、あんなに厳しくしなければよかったと悔やむばかりでした。
毎日、点滴に通いましたが、食べられないので日に日に弱って、ついには自分で車に移動する事もできなくなりました。
獣医さんからは「たくさん弱った子を診てきたから、かわいそうだけど、長くないのがわかるよ。覚悟しておいて。」と言われましたが、そんな事は信じられず、受け止められなくて、きっと元気になると信じてぐったりとしたその子を抱えて点滴に通いました。
しかし、それもやはり長くは続かず、心配で連日寝不足だった私をいたわるように、5月のある朝、静かに天国に旅立ちました。
まさか自分たちがこんなに長く辛いペットロスを経験するとは
亡くなった後も、ふとした時にウッドデッキに駆け上がるあの子の足音や、つないでいた鎖の音が聞こえるようで、思い出すたびに『どうしてもっと大事にしてあげられなかったのか』と私は後悔ばかりしていました。
気持ちが沈んで、あの子以外の他の犬には触れなくなってしまいました。
私はメソメソしていましたが、息子たちはそんなそぶりは見せずに、ただ、あの子の話題を避けるようにして何年も経った頃でした。
あの子のパパ犬の家族が訪ねてくれることになったのです。
すでにパパ犬は天寿をまっとうしていましたが、2代目の保護犬のゴールデンレトリバーを連れてきてくれました。
我が家の庭で走り回るその姿に、亡くなったあの子が重なります。
抱きしめた時の久しぶりのあたたかさに、私は涙が止まりませんでした。
悲しくて固まっていた気持ちがやわらいでいくのがわかりました。
そして、あの子と一番の仲良しだった20歳になった長男は、初めは会うのも拒んでいましたが、後でそっと抱きしめて涙していました。
20歳の男子が思わず泣くなんて…あの子の事をそれほど大事に思って、今まで我慢していたんだね。
あの子が私たちにとって大きな存在だった事を改めて思い知りました。
この日を境に私たちは少しずつ立ち直ることができました。パパ犬の家族も先代犬を亡くした時はきっと辛かったと思いますが、縁があって保護犬を迎える事で救われたのかもしれません。少なくとも私たちは、思い出して久しぶりにいっぱい泣いた後に、犬の温かさにもう一度触れることができて、とても救われました。そして、保護犬という出会いもあるという事をこうして教えてくれた事に感謝しています。
大好きだよ!ありがとう
ずいぶん長く辛い時間でしたが、それはあの子がかけがえのない存在であるという事の表れでもあり、私たちにとっては必要な時間だったのかもしれないと今は思います。
そして、命の尊さを身をもって教えてくれた事に心から感謝しています。
私たちに大切な事を残してくれたんだね。
こうして書いている時にも涙はあふれてきますが、思い出すことで今はあたたかい気持になれます。
ただ、写真を見る度にこう思います。
もっともっと言ってあげたかった…「大好きだよ!ありがとう。」って。
最後に
もし、今あなたが犬を飼っておられるなら、「大好きだよ!」って言って、いっぱい抱きしめてあげて下さい。
言葉は分からなくても、その子は大好きな飼い主さんの事をしっかり見て、聞いていますから、表情や声のトーンできっと伝わると思います。
もし、愛犬を亡くして辛い思いをしておられるなら、いっぱい泣いてもいいと思います。
それだけ大切な存在だったんですよね。
けれど、その後には天国のその子に届くように、楽しかった事やうれしかった事をたくさん伝えてあげて下さいね。
きっと、大好きな飼い主さんとの楽しい思い出は伝わるような気がしています。
そして、しっかり伝えてあげて下さいね。「大好きだよ!ありがとう。」って。
ユーザーのコメント
女性 なつ
まさにペットロス状態です
何かと思い出しては泣いています
頑張らないとと思います
50代以上 女性 匿名
女性 エルの母64歳
女性 匿名
たくさん・たくさん愛してナデナデして大事に大事に過ごしたいと思いました。
女性 匿名
女性 miicocoro
ウチの子犬は来月1歳になります。これからも、この子が幸せを感じて一緒に時を刻んでいけるようたくさん愛を注いでいきます。
大切なお話をありがとうございましたm(_ _)m
女性 匿名
いままさにペットロス状態です。
もっと やってあげる事があったのではとか。この道はあの子と散歩したとか。
毎日毎日 写真を見ては泣き
サークルをみては泣き
お骨をみては泣いています。
最期の一月
いそがしくて お留守番か多く
ずっとそばにいてやれず
どんなに不安だったかと思うと
申し訳ない気持ちで一杯です。
最初はさほどではなかったのに
急にわるくなり
食事も出来なくなり
逝ってしまいました。
もっともっと抱きしめてあげたかった。
さみしい!
女性 匿名
1〜2年は犬の散歩をしている人を見ただけでも涙がブワーッと溢れて来たり不安定でした。
もっと大切にしてあげられたのじゃないか、もっと一緒にいてあげればよかった、などと後悔が大きくてその分辛かったのです。
10年経ち、また犬と生活してみたいと思うようになり、幸せにしてあげられるのかなどと自問自答して、やっと気持ちの準備が整った時に今の子と出会いました。
今でもこうしてあの子の事を思い出すと涙腺が緩くなりますが昔のように締め付けられるような気持ちではなくなりました。ずっと「ごめんね」とばかり思って来たあの子に「ありがとう」と思えるようになったのかも知れません。
女性 匿名
家にも一歳になった犬がいます。
大変な事もありますが大事な大切な家族です。この子がいなかったら今の幸せはなかったと思います。大事にずっと一緒に暮らしていきたいです。
女性 チカチカ
途中から泣いてしまいました。
今、10ヵ月と1年5ヵ月の子がいます。
目に入れても痛くないくらい可愛がっています。もっともっと大切にしてやります。
ありがとう、大好きって。
女性 ちぃーたん
いちにちいちにちを充実させてあげたいと思って接していますが物足りなさを感じてしまいます。話せるなら不満など話して欲しいと思ったりもします。お互いに精一杯尽くし癒されていたと思いますよ、悔いたらきりがないですよね〜気持ちはよ〜くわかります。楽しい毎日を送りましょう、ワンコの寿命は人の1日分は4日ですから。
女性 るーママ
50代以上 女性 ヒメアのママ
男性 しろ
50代以上 女性 ふー様
何処からこんなに涙が出て来るんだろいって言うくらい涙がでました
悲しくて悲しくて本当に悲しくて。生きてる時も亡くなってからもこの子は我が家の中心なんだなと実感します今も『太郎ちゃん大好き』『太郎ちゃんおはよう』と言ってますこれからも言うんでしょうね
50代以上 女性 さな
40代 女性 やよ
でも、まだまだ一緒にいたかったな...
おちゃわんも、おもちゃも、好きなタオルも、いつも日向ぼっこしてた窓際も、大好きなママのひざも、なにも変わらず、あの日のままです。
悲しいなぁ。
20代 男性 たま
女性 なるる