犬の陰睾(潜在精巣)について~症状・原因から治療・予防法まで~

犬の陰睾(潜在精巣)について~症状・原因から治療・予防法まで~

聞きなれない陰睾という病気。この病気は犬に症状が出ないため、飼い主自身が気づくことでしか発見できません。そしてそのまま放っておくと命の危険も…陰睾(潜在精巣)という病気についてまとめました。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の陰睾(いんこう)とは?

犬のお尻

陰睾、もしくは潜在精巣という言葉を聞いたことがありますか?特にオス犬を飼っている人は知っておくべき病気の一つです。

犬の精巣は産まれるときにお腹の深い場所(腎臓のそば)に潜んでいて、そこから30日ほどかけて陰嚢内まで移動していきます。しかし、精巣の片方、もしくは両方が途中で止まってしまうことを陰睾(潜在精巣)といいます。

両方の精巣が途中で止まってしまっている場合は生殖できませんが、片方のみの場合は生殖することができます。しかし、陰睾は遺伝するため繁殖をしないことが大切です。

症状

症状が何も出ないため気づきにくいことがほとんどです。産まれてしばらくしても精巣がはっきりしてこないな、という理由で病院を受診した結果、陰睾だったという発見方法が多いようです。

以下の犬種がなりやすいとされています。

  • トイプードル
  • ボクサー
  • ポメラニアン
  • ベキニーズ
  • ヨークシャーテリア
  • イングリッシュ・ブルドッグ
  • ミニチュアダックス
  • オールド・イングリッシュ・シープドッグ
  • ケアン・テリア
  • チワワ
  • ミニチュアシュナウザー
  • マルチーズ
  • シェットランド・シープドッグ

陰睾が原因の病気

途中で止まっている精巣は通常のサイズより小さく、柔らかいことが特徴です。
そのままにすると、老齢になったとき腫瘍化することがあり、通常の精巣の状態に比べ、13倍ほどなりやすいといわれています。その中でも特にセルトリ細胞腫、セミノーマという腫瘍になりやすいです。

セルトリ細胞腫

老犬に多くみられる腫瘍です。片側の精巣が大きくなり、乳がはる、脇腹部分の脱毛、太ももの付け根部分の色素沈着など、メスのような症状を引き起こす腫瘍です。

セミノーマ

精上皮腫とも呼ばれています。左右どちらにも起こる可能性がある1cmほどの良性腫瘍で、10歳以上の犬に多く見られます。

陰睾(潜在精巣)の原因と治療法とは?

犬の正面

原因

陰睾は遺伝が原因と言われています。先述した通り遺伝するため、陰睾になったオス犬は繁殖してはいけません。

治療法

子犬の時期は、自発的に精巣が移動することがあるのでしばらく様子を見ます。実際に生後6か月経ってから精巣が移動することもあるようです。

生後2~4か月の子犬であれば、人工ホルモンの投与で精巣を無理やり移動させることができます。人工ホルモンで正常な位置へ移動したとしても、遺伝子には陰睾の原因が残ったままなので、治療したとしても繁殖はしないようにしましょう。

生後18か月を過ぎると自発的に移動することはなくなるので、精巣除去手術を行います。お腹部分に精巣がある場合は、一度お腹を開けて精巣を探してから除去するため、難しい手術になります。

予防法とは?

精巣を取り除く去勢手術を行うしかありません。これ以上陰睾で苦しむ子犬を増やさないためにも、遺伝する陰睾を去勢によって食い止めることが最も大切なことです。

去勢することで、前立腺肥大や肛門周辺の腫瘍、睾丸腫瘍、会陰ヘルニアなどの病気を予防することができます。さらに、攻撃性がなくなるため他犬へのケンカやマーキングなどが減少します。

繁殖を考えていない、防げる病気を未然に防ぎたい、という思いがあるのであれば、去勢について考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

元気の無い犬

陰睾は症状が出ないため、気づきにくい病気です。特にオスの子犬を飼っている方は、体の隅々まで確認しておかしいなと思う部分がないか入念にチェックしてみてください。日ごろから見える部分だけでなく、見えにくい部分も飼い主の手によるスキンシップで触ってあげるようにしてあげましょう。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 男性 ten

    うちの犬が去勢手術をするときには、家族で反対するものと賛成するものがわかれたためだいぶ悩みました。
    元気過ぎるほどの子犬だったため、しつけ教室に通っていたのですが、あまりに体力と気力が強すぎる犬だったため調教師に去勢を考えているなら早い方がいいと思うとアドバイスをされたこともあって、月齢4カ月の頃から家族会議をしていました。
    片方の睾丸が先に降りてきていて、もう片方が降りてきたかな、というタイミングで動物病院へ連れて行ったらもう去勢手術が出来るということだったので、その翌日には行ってしまいました。まだ7カ月弱の頃だったと思います。
    去勢手術は悩む方が多いと思いますが、オスの場合は病気だけではなくオス特有の気質からくるトラブルの回避にもなります。人や犬を襲って怪我をさせてしまう犬の多くは未去勢の若いオス犬が多いとも聞きます。
  • 投稿者

    女性 シュナ

    陰睾、正式な呼び方を知らなかったのですが、記事を読んでうちのわんこが小さかったころの定期健診のときを思い出しました。たしかに、先生が半年を過ぎたころあたりで睾丸がちゃんとおりているかを確認してくれていました。うちはわんこに先天性の病気はありませんでしたが、繁殖を行なうのが難しい犬種であることや年齢を重ねていく上での病気のリスクを減らすために去勢手術を1歳になる前に行なっています。病気のリスクを減らすというのは、以前飼っていたラブラドールが老犬になってから精巣の癌がみつかり手術したことも大きかったと思います。ラブちゃんは繁殖活動はおこなっていませんでしたが、自然の形で、との家族の話し合いから去勢手術をしていませんでした。ですが、体力も落ちた老犬のときに病気が見つかったときはとてもいやな汗が出ました。犬も体力の低下と共に大きな手術は難しくなります。幸い、うちは手術は成功し長い寿命を全うしてくれましたが、そのときのことが忘れられず、今のワンコはそうそうに手術を行ないました。少し話がそれてしまいましたが、睾丸の確認をしてくれたのは2つ目の獣医さんでした。1つ目の病院ではそのお話もなかったように記憶しています。。信頼できる獣医さんがいると何かと安心です。
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