今回の記事は東日本大震災において、石巻で被災された動物病院のドクターが講演してくださった『愛犬の災害対策セミナー』のレポートです。
東日本大震災の記憶
東日本大震災が起きたのは2011年。
私が住む地域では比較的被害も軽く、都心で交通機関がマヒし、帰宅難民に陥って自宅に帰れなかったあの日の記憶が徐々に薄れつつあるところです。
けれども、少し大きな地震があると記憶がフラッシュバックして心臓がバクバク。
そして、これから起きるであろうとされている大地震への覚悟もあり、警報音が鳴ると一気に気が引き締まり、「自分と家族と大切な愛犬を絶対に守りたい!」と強く思います。
震災の直後に先代犬を急性の癌で亡くし、その後にコーダを迎えたのでコーダはあの大地震を知りません。
今回のセミナーでは地震が起きたその時、
「飼い主と伴侶動物がどう言う状態に陥るのか。」
「避難する際に伴侶動物はどのようにしたら良いのか。」
「避難所での伴侶動物の扱い」
「動物の飼い主への周囲の被災者からへの反応」
を細かく知ることができました。
また、
「非常時に用意しておくもの」
「非常時に備えての飼い主と犬との練習方法」
「非常時に自力で助かる方法を考えておく」
と言うところもこの講座のポイントでした。
津波
石巻では、地震→津波が襲ってくるまで20分後に第1波があり、その波が海へ戻り、第2波→波が戻る、第3波→波が戻る・・・11回程の波にさらされたそうです。
動物病院は、海から7kmのところにありましたが、津波が終わってからも1階のエントランスが水に浸かり、外に停めてある車の窓位までの水位が数日間続いたそうです。
津波は1回押し寄せて来るだけではなく、海へ戻り、また押し寄せる事知りました。
津波は水が押し寄せるのではなく、瓦礫や砂、ガラスの破片などを含んだ大きな壁が押し寄せてくる感じで、巻き込まれると、洗濯機の中で回されているような感覚になり、体の自由がきかず天地もわからなくなるのだそう。
我が家は東京湾から目との鼻の先の距離。
津波は他人事ではありません。
※お住まいは海抜何メートルかご存知ですか?
地震!その時愛犬は?
大地震、その時に愛犬はどう言う状態に陥るのかと言うと、驚いて部屋の中を駆け回ってしまったり、揺れに足をとられて飛び回ってしまうそうです。
また、〝地震が起きたら家の玄関の扉を開いて逃げられるルートを確保する”がインプットされている我々は、玄関の扉を開けますが、その瞬間に外に飛び出て帰って来ない動物(以下、愛犬とします)も多かったようです。
愛犬をどうすれば良いか
地震が起きたら愛犬を呼び寄せ、瞬時にリードをつけて一緒に安全な場所に避難し揺れをやり過ごします。
避難トレーニング
- 「呼び寄せ」…地震の時大切な事は、愛犬を呼んだらすぐにそばに来られること。
- 「カラーリードを装着…」瞬時にリードを装着すること。
- 「一緒に待機」…机の下や安全な場所で、地震がおさまるまでオスワリやフセをしていられる事です。
- 「クレートへハウス」…地震の時にハウスの指示でハウスに入れるようにしておくと手元に呼べない時に助かります。
普段から練習しておけばいざと言う時に役に立ちます。
コーダの場合は留守番の時に家で一番倒壊の心配が少ない場所にクレートを置いています。
※自宅用と車用があります。
留守番では扉は外して自由にハウスとして使っています。
津波警報があったら(自宅から避難することになったら)
津波の時、大切なことは、まず一緒に逃げる事。
行政から指示を受け、3日もすれば自宅に戻れるからと言われて愛犬を自宅に残して避難された方も多かったと聞きますが、地域そのものが立ち入り禁止区域となり、愛犬を迎えに行けず死なせてしまったり、行方不明になってしまったと言う事もあったそうです。
自宅に動物を残して行く方の多くは、給餌皿に山盛りのフードを残していっています。しかし、フードは山盛りのまま、動物は脱水で亡くなってしまっていました。
最低限、必要な水の量は50ml/体重kg/日にち(何日分の留守番なのか)です。
水を飲まないで持ちこたえられるのは2週間前後だそうです。
同行避難
被災地は環境によってさまざまで、すべての犬が同行避難に向くとは限りませんが、もし同行避難をするなら小型犬であればおんぶ紐やキャリーバック、スリングや風呂敷などで身体に密着させて、両手を使える状態にしておく事で助かったと言う方もいらっしゃいました。
コーダの場合は?10kg以上ある犬を抱きかかえるべきか、リードを持って走った方が良いのか、このあたりもしっかり想定しておくべきだと思いました。
小型犬、大型犬それぞれの場合を想定しておくべきです。
避難後の愛犬の健康状態を確認しましょう
津波に浚われて自力で戻ってきた犬も居たそうですが、首輪が潮で汚れていたために、後から皮膚の炎症を起こしてしまったり、長毛種のワンコは毛の奥にガラスの破片がたくさん刺さっていたために、せっかく津波から逃れたのに敗血症で亡くなったり、瓦礫を踏んで手足に傷を創ってしまったりと言う事が少なくなかったそうです。
避難用の服を用意しましょう
非常持ち出し袋には、犬用の靴や、替えのリード、首輪を追加です。
また、身体にぴったりとフィットするような素材に、飼い主の名前、住所、電話番号を書いた避難用の服を用意しておくことも良いアイディアだと思いました。
瓦礫からの防御力を少しだけ高める、身元がはっきりすると言う効果の他、犬に服を着せる事により抜け毛への配慮をしているとか、犬を飼っていない人からも見た目の親近感を持たれやすいと言う効果があります。
※アルファアイコンのウェアに名前と住所を書くのは気が引けますが…汗
お住まいの避難所の動物が避難できる場所
避難所の多くは、市町村、行政の区分である学校や体育館です。動物が避難しても良い避難場所はどこなのか、確認しておかなければなりません。
私の市の動物取扱業者責任者研修では、災害対策についての研修をしておきながら、はっきりとした避難場所の明示はありませんでした。
たぶん、決まっていないのだと思いますが、もう一度確認してみようと思います。
飼っていない人への配慮
動物を飼っていない人への配慮も非常に大切な事です。
吠える犬より、吠えない犬が優遇され、シャイな犬より人懐っこい方が優遇されます。極限状態に陥ると人は、平気で心無い事を言ってしまったります。
非日常的なストレスや、災害による心の傷、家や家族など大切なものを失った深い悲しみがあるからです。
事前に地域の人と良いコミュニケーションを築いたり、社会化の練習をしておいた方が避難所でも一緒にいられる確率を高めます。
もし愛犬が行方不明になっても、知り合いに見つけて貰えるかもしれません。
保護者(飼い主)が助かる事!
それから、まずは飼い主が助からなければ愛犬や愛猫、その他の伴侶動物を助ける事はできません。
人間と暮らした動物は、決して野生に戻る事はできません。自然には帰れません。どんなことをしても、絶対に助かりましょう。
避難所に同伴避難が出来ない場合
同伴避難出来た方もいますが、出来なかった方も多くいらっしゃいます。
- 他人が苦手である
- 吠えてしまう
- 室内でトイレの失敗がある
- 病気である
- 他人の目を気にせずにいたい
自宅に戻れない場合は車中泊を選択しなければならない場合もあります。
避難所から離れた場所に居ると情報が得られにくく、水や食べ物などの救援物資の配給などで車と避難所を往復しなければなならなくなり、日中は愛犬を留守番させる事も多くなるかもしれません。
けれど車に残せばこの時期からは熱中症の危険もあります。愛犬を繋いで留守番させているうちに他人にリードを外されてしまう事件があったり、誘拐などを防ぐためにも愛犬は常に目の届く範囲におきたいものです。
また避難所では配給などの他に自宅を住める状態にするために片づけたりと忙しく、愛犬との時間が普段よりも取れないかもしれません。
家族が居れば家族にお願いできますが、そうではない場合近所の方と協力をして留守番や散歩、排泄時間などのローテーションを組む体制なども考えておくと良いかもしれません。
※どんな場所でもクレートがあれば落ち着いていられるように。
非常持出袋に備蓄しておきたいもの
最後に、備蓄できるものの紹介です。非常持ち出し袋は、分散させておくのもポイントです。
1カ所に置いておいて、その場所が倒壊し、持ち出せなければ意味がありません。
- フード、水、食器
- ケージ、キャリーバック、スリング
- 首輪、胴輪、リード
- 毛布、タオル、保温できるもの、保冷できるもの
- ペットシーツ、ウェットティッシュ、消臭剤
- ビニール袋、サランラップ、新聞紙、紙、マジック、ガムテープ
- 処方食、服用薬、写真、鑑札、マイクロチップの番号
- 犬用靴、服
フードですが、愛犬の食の安全セミナーに行った時、缶詰の総合栄養食は1日に必要な栄養素と水分が含まれ、(実際書いてあるのは4年ではないけど)4年の消費期限があって備蓄に向いているし、ドライフードよりも犬の食欲が湧くのでおススメだそうです。
命を守る一次避難に持ち出すもの。
復旧までに備える二次避難で必要なもの。
これを分けて整理してみましょう。
あれもこれも持ち出そうとして荷物が重くて逃げ遅れては意味がありません。
自助の力
避難所に愛犬を同行させたところ「人の飲み水も無いのに犬に飲ませるのか」や「家に置いてくるよう説得された」など、伴侶動物の同伴避難に対し理解を得られないこともあるそうです。
何の準備もせず、ボランティアが来るのを待ちましょう。ボランティアが助けてくれるでしょう。と思っている方もいるかもしれません。
運が良ければ、もしかしたらすぐに助けて貰えるかもしれませんが、ボランティアはお手伝いさんでは無いし、あなたの思った通りに動いて助けてくれる人ではありません。あなたの犬のお世話をして、あなたの犬を助けるのはあなたです。
準備をして備えましょう。
協力して助かりましょう。