バベシア症とは
犬のバベシア症とはバベシアと呼ばれる原虫(げんちゅう)が犬の赤血球に寄生することによって発症する寄生虫症です。この「バベシア」と呼ばれる原虫には世界中に数多くの亜種が分布しており、日本国内において西日本でバベシア・ギブソニ(Babesia canis)、沖縄でバベシア・カニス(Babesia canis)の2種類の感染症例が報告されています。
バベシア症は他の寄生虫症と比べても日本国内ではあまり認知度は高くありませんが、2012年に獣医師会雑誌で紹介された犬(Babesia gibsoni)感染症の発生状況に関する全国アンケート調査によれば兵庫や香川、熊本、徳島、山口、福岡、宮崎など関西以西の各県では年間200件を超える症例報告がされているとのことです。
つまり、バベシア症は日本国内でも犬が感染する可能性は十分にあり、地域によっては特に注意しなければならない可能性もある寄生虫症です。場合によっては死に至ることもある病気でもありますので症状や原因、予防方法などをしっかりと確認しておきましょう。
バベシア症に感染した犬の症状
- 粘膜蒼白
- 尿の色が濃くなる
- 発熱
- 食欲不振
- 元気消沈
- 毛艶がなくなる
- 疲れやすくなる
バベシア症はバベシア属の原虫が犬の血液内にある「赤血球」に寄生することで発症します。バベシア属原虫が赤血球に寄生すると赤血球が破壊されることで貧血を引き起こし、粘膜の蒼白や赤茶色の尿(ビリルビン尿)、脾腫(膵臓の肥大)、発熱、食欲不振、元気消沈などの様々な症状が現れます。
一般的にバベシア症に感染した2週間~3週間後に症状が現れ始めるとされており、症状が重篤化すると重度の貧血によって呼吸困難や意識障害、黄疸、他機能不全などによって死に至る可能性もあるため早期発見、早期治療が要となります。犬のバベシア症が疑われる場合は血液検査による貧血、血小板減少の程度の確認や顕微鏡を用いての赤血球中のバベシアの確認、遺伝子検査(PCR法)、抗体測定などの方法で検査が行われます。
また、基本的に犬に感染するバベシア種が人にうつることはありません。しかし、バベシアに感染する動物は犬だけではなく主に牛や馬などの動物の感染例が報告されています。過去には犬以外の動物に感染するバベシア種が人に感染した例も報告されているため、地域や生活環境によっては十分に注意が必要です。人が犬のバベシア症に感染した場合、頭痛や発熱、貧血、筋肉痛のような全身痛などの症状が現れるとされています。
バベシア症に感染する原因
犬のバベシア症はバベシア属の原虫(げんちゅう)に感染したマダニを媒介して感染することで知られています。赤血球に寄生するバベシア原虫はマダニを中間宿主として寄生し、吸血の際に唾液と共に犬の体内へと侵入します。そして血球内の成分を栄養源として発育、分裂を繰り返し赤血球を溶血していきます。
上記以外にも母体から胎盤経由で子犬へと感染したり、バベシア原虫に感染した血液を輸血したりする他、咬傷が犬のバベシア症の原因となる場合もあります。前述したように以前まではバベシア症は関西以西特有の寄生虫症だと認識されていましたがその感染地域は拡がりつつあり、全国各地での感染症例が報告されているため十分に注意しましょう。
バベシア症の治療
バベシア症の治療については以下のようなものがあります。
バベシア症を治療するには
犬のバベシア症を治療するには、症状に応じて抗原虫剤やステロイド剤などを用いた投薬治療と輸血などの対症治療が必要となります。しかし、現時点では犬のバベシア症の特効薬は存在せず投薬治療での完治、つまり完全にバベシア原虫を犬の体内から駆除することは非常に困難とされています。また、バベシア症に有効な駆除剤は副作用が強いため慎重に行う必要があり、再発が見られることも珍しくありません。
つまり、一度バベシア症に感染した犬は一旦症状がなくなったとしても完治ではなく、持続的にバベシア原虫を体内に所持したままの「キャリア」となるケースが殆どなのです。犬のバベシア症の症状によっては長期的に投薬治療を行う必要がある場合も多いため、信頼できる獣医師としっかり相談しながら治療にあたることが最も重要となります。
バベシア症の治療薬
バベシア症の治療薬としてはジミナゼン、フェナミジン、ペンタミジン、イミドカルブなどの抗バベシア薬が用いられます。一般的にはこれらの抗バベシア薬投与から24時間以内に臨床的改善が認められており、なかでもジミナゼン(ガナゼック®)は世界中で最も広く使用されている抗バベシア原虫薬とされています。
しかし、犬はこのジミナゼンの持つ毒性に対して感受性が高いため嘔吐や下痢、注射部の痛み、発作などの強い副作用が生じることや反復投与による耐性原虫の出現によって効果が低下することも考えられるため、慎重に行わなければなりません。犬のバベシア症に有効な治療薬のなかには日本国内では利用が承認されていない薬剤や国外から輸入する必要がある薬剤などの存在もあり、現在でも研究が進められています。他に抗生物質のクリンダマイシンを併用する治療方法もあります。
バベシア症の治療費用
犬のバベシア症の治療費は症状の程度や用いる薬剤などによっても異なるため一概には言えません。しかし、比較的特殊と言える抗バベシア薬の投与や輸血などの治療が継続的に必要になる場合は、その治療費は決して安いものではありません。特に海外から抗バベシア薬を輸入する場合などでは1回の診察、処置、検査などで3万円~5万円の治療費が掛かる可能性もあります。
前述したように犬のバベシア症は完治が難しい病気であり、短い期間で複数回に渡って再発を繰り返すことも珍しくないためその度に同様の治療が必要になります。生涯を通して数十万円の治療費が必要となる可能性もありますので、治療に必要な費用については事前に獣医師にしっかりと確認、相談しておきましょう。
バベシア症を予防するには
犬のバベシア症の感染を予防するためのワクチンなどは存在しないため、マダニとの接触を徹底的に避けることが最大の予防策と言えます。定期的な愛犬へのダニ駆除薬の投与はもちろん、外出時はマダニが生息しやすい草むらなどを避けるように心がけましょう。
犬のバベシア症は一度感染すると完治が難しく生命にも関わる病気です。今現在バベシア原虫の分布が確認されていない地域であっても、今後絶対に感染しないという保証はありませんので愛犬のために予防を徹底してください。
まとめ
犬のバベシア症についてご紹介しました。犬のバベシア症は他の寄生虫症に比べて駆除が困難であることや生命に関わることから、日頃の予防策が非常に重要となります。また、万が一愛犬がマダニに咬まれてしまった場合は無理にマダニを剥ぎ取ることは絶対に避け、そのまま動物病院を受診してください。
特に犬のバベシア症の感染報告が多い地域にお住まいの場合は、愛犬に投与している駆除剤がマダニに対して有効な薬剤であるかどうかや投与期間の確認を再度行っておくと良いかもしれません。マダニが生息している可能性が高い自然が多い地域などに愛犬と遊びに行く際は、前もってかかりつけの獣医師に投与している駆除剤で十分に対応できているかどうかを相談しておくとより安心ですね。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 K9-ABC
マダニが犬に噛みつくと、マダニの赤血球に寄生している「バベシア原虫」が伝染するので、マダニにさされないようにすることが大切です。しっかり予防薬を投与し、お散歩後はこまめにケアして愛犬のマダニ対策をしたいと思います。
20代 女性 小夏
夏でも冬でも飼い主さんは愛犬に気をつけてあげなくてはいけませんね!
20代 女性 ゆん
たとえ室内犬でも感染します。バベシア症は貧血で致死的病態になることもあるので予防が1番です。
30代 女性 匿名
3日ほど元気がなくご飯を食べないな、おしっこが黄色いなあと思って病院に連れて行きわかりました。
初めて聞いた病気でした。ダ二予防の薬を飲んでいましたがなる時はなるんですね。
血小板がほぼゼロに近くヘモグロビンも6台でまだ元気がなくご飯も食べないので心配ですが、
血液を頑張って作っているようなので見守るだけです。
ダ二には負けてほしくないなあ。
女性 おはら
うちの愛犬も自然の多い場所を散歩させることが多いので、薬で予防をして毎日のブラッシングは欠かせません。最初は、市販で売られているノミやマダニの駆除薬を使用して安心していたのですが、動物病院で健康診断を受けた際に、「ノミが一匹ついている」と言われ、市販の駆除薬を使用して間もなくのことだったので、とても驚きました。
この記事にもありましたが、市販で売られている薬は、病院で勧められるものと比べて効果が弱いものもあるのだと、そのときに初めて知りました。それからは病院で勧められたものを使用しております。
夏だけでなく冬も予防が必要なのですね。気を付けようと思います!
女性 比呂
30代 女性 38moto
40℃近くまで上がる高熱と貧血が特に多い症状ですが、悪化させてしまうと肝臓や腎臓にまで影響が出て命にかかわります。抗菌剤や抗生物質を投与し、貧血が酷い場合は輸血も必要になります。薬は内臓に負担をかけてしまうので、症状を改善するどころか悪化させてしまうこともあります。
治療方法が症状を緩和させるしかなく、完治できないので予防することが第一になります。
マダニの発生しそうな草むらの多い場所や河川などを散歩した時は、すぐにブラッシングをし、毛に乗ったマダニを落とします。マダニの巣の近くを通ると数多く乗ってしまうことがあります。耳や首回り、肉球の間など体温の高いところに潜り込んでいることも多いので、しっかりチェックします。目に見えるゴマくらいのサイズもいれば、砂粒のように小さいマダニもいるので目を凝らしてよく探しましょう。
噛まれていた場合はアルコールや消毒液をティッシュに濡らし押さえるとマダニが肌から離れやすいので、その際にさっと取り除きます。
マダニを取る専用のピンセットもあるのでひとつ用意しておくと便利です。
30代 女性 てとめる