脳腫瘍の治療法開発に犬が手掛かりとなる可能性

脳腫瘍の治療法開発に犬が手掛かりとなる可能性

犬と人間の脳腫瘍には共通点が多くあり、治療が難しいとされるタイプの脳腫瘍の研究に犬が大きな手掛かりとなる可能性があるのだそうです。

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犬と人間の脳腫瘍の比較研究

黒いラブラドールを抱きしめる女性

脳腫瘍というのは、人間にとっても犬にとっても重篤な病気のひとつです。その脳腫瘍の中でも神経膠腫(しんけいこうしゅ)という、神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)から発生する悪性腫瘍があります。

神経膠細胞は神経細胞(ニューロン)とともに脳や脊髄内に存在し、神経細胞の隙間を埋めて結合や支えの役目を担い、栄養の供給や脳内伝達物質の伝達などの役割を持っています。

神経膠腫は脳腫瘍の中でも治療が困難で予後の悪いタイプとして知られており、そのメカニズムも不明な点が多いのだそうです。また神経膠腫は人間だけでなく犬にも多く発症し、多くの類似点があることも知られています。

アメリカはメイン州にあるジャクソン研究所の科学者が、ヒトと犬の神経膠腫を比較分析して、犬の神経膠腫を研究することが、その病理をよりよく理解するのに役立つ可能性があることを科学誌に発表しました。

犬と人間の神経膠腫の類似点

ゲノム研究を行う研究者とDNAモデル

研究チームは犬の神経膠腫のサンプルと成人および子供の生検サンプルとを、分子配列決定技術を使って比較ゲノム解析を行いました。その結果、ヒトと犬の両方のサンプルにいくつかの遺伝子の突然変異が現れることを発見しました。このことは、神経膠腫は犬と人間の両方に同じ方法で発症することを示しています。

また、犬の神経膠腫は成人よりも小児神経膠腫に似ている点が多いこと、遺伝子の突然変異が犬と子供の同じ年頃で発生することも分かりました。他には、犬と子供の腫瘍サンプルには染色体数の変化が含まれていたこと、腫瘍を取り巻く組織の免疫系の変化が類似していたことも発見されました。

犬を治療することが人間を救うことに

点滴を受けるドーベルマンの子犬

このように、犬とヒトの腫瘍の比較ゲノム解析から分かった類似点は研究チームの科学者をも驚かせるものだったそうです。これらの発見は神経膠腫が発生する原因と、原因となる細胞の変化の年代に関して推測していくために役立つと考えられます。

研究者はこの情報によって、神経膠腫の治療法についてさらに研究を進めることができます。神経膠腫に苦しむ犬を治療することが、犬と人間両方のより良い治療方法の開発にもつながる可能性があり、希望がふくらみます。

まとめ

ハート模様のある犬の足とつないだ人間の手

神経膠腫という種類の脳腫瘍について、犬と人間の両方のサンプルを比較分析したところ、共通する遺伝子の突然変異が発生していること、他にも手掛かりになりそうな共通点が数多く発見されたという研究結果をご紹介しました。

ガンをはじめとして、犬の病気の治療が人間の治療方法の開発に役立つというニュースは近年ますます増えてきています。実験動物を使うよりもずっと人間に近いデータが得られ、病気に苦しんでいる犬の治療と研究が同時に進められる、このような方法が増えることは大歓迎です。

犬は古代から人間の作業を手伝い、現代においても仕事をするだけでなく、私たちのそばに寄り添って愛情を贈り続けてくれます。その上さらに、病気の治療方法を開発するキーとなる存在にまでなってくれるとは、人類は犬に対して「犬は人間の最高の親友」という言葉でも足りないほどの恩があるなあと感じます。

《参考URL》
https://www.cell.com/cancer-cell/fulltext/S1535-6108(20)30043-X

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    20代 男性 匿名

    犬と人間、種族は違えど長く共存してきたため多くの共通点がありそれは内部臓器も例外ではありません。実験に犬を使えとは言えませんが犬の治療が人にも有効なら今後人間、動物の医療は飛躍的に進歩するでしょう。もしそうなれば日本は人間も犬も長寿国になるかもしれません。今後の研究に期待します。
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