犬の尿毒症とは
犬の尿毒症とは本来、体内の老廃物を尿として体外に排泄させる腎臓の機能が、何らかの原因で低下した結果、血中の老廃物濃度が異常に高くなった状態のことを言います。
腎機能が低下することで引き起こされる症状は様々ですが、尿毒症と呼ばれる症状に陥っている場合、既に腎臓の働きが正常の10分の1程度になっており、全身に毒素が回っている状態であると考えられるため、早急な処置を行わなければ生命に関わります。
犬の尿毒症を引き起こす要因としては、急性もしくは慢性的な腎臓障害が考えられますが、特に慢性的な腎臓疾患によって引き起こされた尿毒症は、完治が難しくなることから早期発見、早期治療が要となります。
犬の尿毒症の症状
- 食欲不振
- 多飲多尿
- 嘔吐下痢
- 口内炎、口臭
- むくみ
- 鼻水、鼻血
- 貧血
- 吐く
- 血便、下痢
- 震える
- 歩行困難
- 痙攣、発作
- 意識混濁
- 低体温
犬の尿毒症の症状は原因により様々ですが、共通した症状としては食欲不振で物を食べない、嘔吐などが挙げられ、特異的症状として臭い口臭(アンモニア臭)がみられます。また、何らかの原因で尿を排泄できなかったり、腎機能低下で尿を作れない時には、尿の量が減少したり、出なくなったりすることも。
腎臓の機能低下の初期症状では、お水をたくさん飲んで、薄い尿をたくさんするようになる多飲多尿が見られます。さらに急性の尿毒症では様々な神経障害が現れることもあり、ふらつきで立てない、多量のよだれ、意識の混濁、呼吸困難、重篤な場合では昏睡状態に陥り死に至ることもあります。
犬の尿毒症の原因
犬の尿毒症の原因は、大きく分けて2通りあります。腎臓そのものや腎臓に深く関連する臓器の異常によって起こる腎機能障害が原因となるものと、何らかの理由で尿の排泄そのものが困難な状態に陥ることが原因となって引き起こされるものです。尿毒症の原因となりうる要因についてご紹介します。
急性腎不全
犬の急性腎不全とは、何らかの原因で腎臓が突然機能しなくなってしまった状態のことを言います。何の前触れもなく重症化するケースが多く、急激に症状が進行するのが特徴です。この急性腎不全によって、尿毒症が引き起こされることがあります。
慢性腎不全
上記の急性腎不全と異なり、半年~数年の時間をかけて緩やかに腎機能が失われていくのが慢性腎不全の特徴です。尿毒症は、この慢性腎不全の末期症状としても知られ、この状態からの回復は非常に難しいとされています。
尿路系疾患
尿路結石や腫瘍による尿路閉塞など、泌尿器系のトラブルが原因となって排泄が困難になり、尿毒症に陥る場合もあります。
心疾患
心不全などの心臓病が原因となり、腎機能へと影響を及ぼし尿毒症を引き起こす場合もあります。心疾患の場合、てんかん発作とは違い、失神を引き起こす場合があります。
生殖器系疾患
メス犬特有の病気である子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)が原因になり尿毒症を引き起こす場合もあります。避妊手術を受けていない犬は注意が必要です。
犬の尿毒症は、心臓や泌尿器などに生じたトラブルによって引き起こされることもありますが、主となる原因はやはり腎臓です。また、腎臓の機能を低下させる要因によって、腎前性、腎性、腎後性に分けられます。
いずれにしても、本来腎臓が処理するべき老廃物などが体内に蓄積することでそれらが体に悪影響を及ぼし、尿毒症を生じます。特に高齢犬の場合、慢性的な腎不全に陥ることは珍しくないため、定期的な健康診断、血液検査などで早期発見を心がけたいものです。
犬の尿毒症の検査方法
犬の尿毒症の検査方法は、血液検査による尿素窒素(BUN)、クレアチニン、リン、カリウムなどの数値の確認や、尿検査による尿比重、蛋白尿、糖尿、結晶の有無の確認などが主となります。他に必要であれば、レントゲン検査や超音波検査(エコー検査)などが用いられることも。問診や全身状態の診察によっておおよその原因を予測し、必要な検査が行われますので、それまでの様子を獣医師へしっかりと伝えましょう。
犬の尿毒症はその原因によって異なるものの、一刻を争う状態に陥っている場合が殆どで、完治が難しいことも珍しくありません。しかし、早期に適切な治療を行うことで症状の緩和、改善が見込めますが、原因によっては回復が難しい場合もあります。早期受診を心がけてください。
犬の尿毒症の治療法
老廃物の除去
犬の尿毒症の治療法は、体内に蓄積された老廃物を尿として体外に排泄、除去することが主となります。利尿剤の投与や静脈点滴、皮下点滴による輸液、透析などを用いて尿の排泄を促したり、体内の毒素を除去します。
対症治療
犬の尿毒症の治療法として、今ある症状を緩和させる対症治療が行われることもあります。貧血を引き起こしている場合は輸血が行われたり、原因となっている心疾患を改善する薬剤が投与されることもあります。
基礎疾患の治療
犬の尿毒症の原因となっている基礎疾患が判明している場合、その治療が優先されます。誤食による中毒性に陥っている場合や、慢性的な腎機能低下は治療が難しく、定期的な輸液療法を実施することが殆どです。
尿毒症の治療費はいくらぐらい?
尿毒症の治療費は、その原因や症状によって異なるため一概には言えません。ただ、尿毒症そのものの症状を緩和、改善させる治療としては点滴や投薬が可能な場合は吸着炭の投与などが行われることが多く、それらの処置費用に診察や検査などの費用を含めると1か月に2万円~5万円程度であることが多いようです。
ただし、尿毒症の原因によっては手術や集中治療が必要な場合もあり、別途手術費用や入院費用が必要になることも。犬の尿毒症の治療費は高額になるケースも珍しくありません。ペット保険の適用となることがほとんどですが、保険契約の内容によって変わりますので加入先の保険会社に確認しましょう。
犬の尿毒症の予防法
定期的な健康診断
犬の尿毒症を予防するために、動物病院で定期的に健康診断を受けましょう。健康診断を受けることで、尿毒症の原因となる病気を早期に発見することができます。通常の健康診断で実施される検査は血液検査、尿検査などがあります。
これらの検査によって泌尿器系などの異常を発見することが可能です。尿毒症を引き起こす内蔵系疾患では、腎臓系の血液検査数値が異常を示すだけでなく、肝臓系や電解質も異常を示すことがあります。
また、尿検査による尿タンパクや尿比重といった数値で腎臓の機能低下、結石などの検査もできますので、尿毒症の予防においては必ず実施したい検査と言えますね。特に7歳を超えたシニア犬の場合は、半年~1年に1回程度のペースで健康診断を受けることが理想的です。
トイレチェック
犬の尿毒症を予防するために、動物病院での健康診断だけではなく、自宅での日々のボディチェックも非常に重要になります。体重減少のチェックに加え、飲水量や排泄量などのトイレに関するチェックは、毎日行いましょう。
尿毒症の原因となる泌尿器系疾患は排泄と深く関わっているため、初期症状として多飲多尿が見られることも多くあります。尿毒症を引き起こす前に病気を発見するためには、些細な変化に気づかなければならないため、飲水量、オシッコの量、色、匂いなどをしっかりとチェックしてください。
体にあった食生活
犬の尿中毒を予防するために、日頃から愛犬の年齢や体質にあった良質な食事を心がけたいですね。6、7歳のいわゆるシルバー世代に入ったら、尿毒症を引き起こす物質の元になるタンパク質を抑えられており、なおかつ腎臓に負担のかかるナトリウムを抑えた食事に切り替えることもおすすめです。
人間用の食べ物を与えることは避け、体に合ったフードを選ぶことはもちろん、犬用のサプリメントなどを取り入れて健康管理を行いましょう。また、十分な水分摂取も重要になりますので、常時新鮮な水を飲めるよう自動給水器などを取り入れるのもおすすめです。
犬の尿毒症との向き合い方
犬の尿毒症との向き合い方、こればかりは愛犬の状態はもちろん、かかりつけの獣医師さんや飼い主さんの考え方によっても様々です。尿毒症の原因によって異なる例はあるものの、基本的には尿毒症に陥っている状態からの完治は非常に難しいとされています。
というのも、尿毒症の症状が出ているということは、既に腎臓のほとんどが機能していない状態であることが予測され、一度破壊された腎臓の組織が回復することはありません。つまり、尿毒症は既に腎不全などの「末期」であると考えられるのです。
まとめ
尿毒症に陥っていてからの余命は数時間~数ヶ月程度とされており、症状が重篤で昏睡状態に陥ったまま意識が戻らない場合もあれば、QOL(生活の質)をある程度保ちながら数ヶ月の余命を全うする場合もあります。
しかし、そもそも尿毒症という状態そのものが重篤であることには間違いなく、痛みや神経症状などの辛い症状に苦しむ愛犬を楽にさせてあげたいと安楽死を選ぶ飼い主さんもいらっしゃいます。こればかりは、飼い主さんにしか決めることができないものです。愛犬が尿毒症であると診断された場合は、信頼できる獣医師、家族と共にこの先の治療法や最期をどのようにして看取るべきなのかをしっかりと話し合いましょう。
ユーザーのコメント
20代 女性 小夏
他の病気にも見られる症状です。飼い主さんだけの判断は難しいですね?
急性の尿毒症は早期治療しなくてはならないです。何においても早期発見早期治療ですね?
飼い主さんは毎日気を張って愛犬の様子を見ていなくてはいけなくなります。
それも飼い主さんの責任なのかもしれませんが…
危険な病気は早く見つけて愛犬の負担を減らしてあげたいですね。
20代 女性 ゆん
50代以上 女性 K9-ABC
我が家の愛犬は8歳を超えてシニアに入りましたので、動物病院で定期的な健康診断を受けてはいます。でも、万全とは行きませんので、日々の健康状態を良く観察しておきたいと思いました。
これからも、家族の一員として、出来る限り元気で長生きをしてほしいと願っています。
30代 女性 38moto
素人判断では腎不全なのか尿毒症まで進んでしまっているのか判断するのはとても難しいです。
腎臓の炎症値が高い時に尿毒症かどうかの基準として、水を飲む量が増えたか、尿の量が減少していないか、痙攣がないかをよく観察して、当てはまる時はすぐに連れてくるようにいわれました。疑われる病気がある時は早期発見が何よりも重要です。
利尿剤については、尿毒症になっている場合はとても有効的な薬だと思いますが、腎臓の炎症の時に飲ませてしまうと、返って負担をかけてしまい症状を悪化させてしまう結果もあるので、特に注意が必要だと思います。
40代 女性 ぴいすけ
腎臓をわずらったときは、やはり食事療法が必要ですね。我が家の愛犬も、一時腎臓の数値が悪かったので、専用のフードに切り替えました。加えて、薬も処方されました。「セミントラ」という、もともとは猫の腎臓病の薬が、犬にも効果があるというレポートが出た直後でした。猫用ということで、少し不安でしたが、効き目はちゃんとありました。水薬で投与しやすいので、お勧めです。
40代 女性 シュガー
犬はふだんおしっこはトイレシートでしますし、お外でオシッコをした場合はもっとわかりにくいですよね。
以前知り合いは、たまたまトイレシートじゃない場所に粗相をしたおしっこがキラキラ光っていることに気が付いて急いで動物病院へ連れて行ったら、腎臓の数値がおかしかったということがありました。
素人ではわからない愛犬の内臓の疾患に関しては、愛犬の健康診断は必ず定期的に行うべし、ですね。
30代 女性 サワダ
女性 わかめ
女性 もふころ
血液検査をするとBUNやCREが基準内ですがやや高めなので、常々気を付けてみるようにしています。尿毒症の症状を見極めるのは難しいので、飲んだ水の量ほど尿が出なかったり、舌の色が白かったりしないか、そこら辺を特に注意するようにしています。
50代以上 女性 匿名
ですがすごく元気があり水素水も飲ませてます
先生は良く頑張ってると、最初一ヶ月持てばと言われましたが!ステロイドと腎臓用の流動食も飲んでいます。少しでも長生きしてくれるのを祈って
50代以上 女性 匿名
今年の4月に痙攣を起こし、違う病院で尿毒症からくる痙攣発作だと言われました。この時、初めて尿毒症に掛かっている事が判りました。昨年の10月の血液検査では異常値は無かったのですが4月の検査では、測れないほどの数値でした。点滴治療を行い、元気の回復したのですが5月中旬に再び痙攣発作を起こし昏睡状態に陥ってしまいました。最後は下血し苦しそうでした、16歳半でした。
利尿剤の服用がいけなかったのでは?老犬なので、もっと検査をして早期の治療ができたのでは?と後悔しています。