犬の前立腺肥大とは?
犬の前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)とは、オス特有の生殖器である前立腺が肥大した状態のことを言います。この病気の特徴は、全犬種において去勢していない高齢のオス(6歳以上~)に非常に多く見受けられることであり、その確率は9歳を超えると95%にまで上ります。加齢と共に徐々に前立線が肥大していき、その結果、周りの臓器を圧迫してしまうことで、様々な障害を引き起こします。
犬の前立腺に関わる病気には、前立腺肥大以外にも前立腺炎(ぜんりつせんえん)、前立腺膿瘍(ぜんりつせんのうよう)、前立腺嚢胞(ぜんりつせんのうほう)などがあります。いずれも前立腺肥大から続発することも多く、腹膜炎などの生命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、早期に適切な処置を行う必要があります。
また、前立腺肥大の圧迫によって影響が出る器官は多岐に渡り、主に前立腺の真上にある直腸、前立腺に取り囲まれる尿道などにも障害が及ぶことも少なくありません。
犬の前立腺肥大が生命に関わると言われる理由は、これらの器官に影響を及ぼすことで引き起こされる合併症にあります。前立腺肥大は、よく似た症状を持つ前立腺がんのように腫瘍が転移することもなく、進行の度合いや治療方法によってはすぐに症状が治ることも、完治することもできる病気です。
しかし、根本的な原因を取り除かなければ再発を繰り返すことも少なくありませんので、この病気をしっかり理解して治す方法を選択する必要があります。
犬の前立腺肥大の原因
犬の前立腺肥大の原因は、現時点でははっきりと解明されていません。しかし、高齢であることと未去勢であることが共通しているため、男性ホルモンが関係していることは間違いないとされており、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることなどが関係していると考えられています。
また、一説では前述したような加齢と共に起こるホルモンの環境の変化に加えて、生活習慣や遺伝などとも関係すると言われています。というのも、前立腺肥大は犬と人にしか見られない病気であり、人の場合は肥満や高血糖、高血圧、脂質異常症などとの関係についても指摘されているのです。動物医療も日々進化しているため、近い未来に犬の前立腺肥大のメカニズムについて解明される日が来るかもしれませんね。
犬の前立腺肥大の症状
- おしっこが出にくくなる
- おしっこの量が減る
- おしっこの回数が増える
- 血尿
- 便秘
- 便が平らになる
- 会陰ヘルニア
- 鼠径ヘルニア
- 嘔吐下痢
犬の前立腺肥大の症状は、初期段階では痛みなどの不快感も少なく、無症状であることが殆どです。肥大の進行によって臓器が圧迫されることで様々な症状が現れるようになります。なかでも、膀胱の圧迫や膀胱炎を併発することによって引き起こされる排尿障害や、腸が圧迫されることで便が出にくくなる排泄障害などが多く見受けられます。これらの排泄困難な状態が続くことによって会陰ヘルニアや鼠径ヘルニアなど、内臓が外に飛び出してしまうヘルニアを引き起こすことも。
便秘や食欲がない状態が続いたり、血便や血尿が出たりした場合はすぐに動物病院を受診しましょう。食べたものを頻繁に吐く、痛みが強く触られるのを嫌がる場合などは重篤な状態に陥っている可能性もあります。血尿の治療を行っても、なかなか改善しなかったり繰り返す場合は前立腺からの出血の場合もあります。頻繁に起こるようであれば獣医師に相談しましょう。
犬の前立腺肥大の治療法
犬の前立腺肥大の治療法は、肥大の進行度合いや、個体の健康状態などによって異なります。一般的には、去勢手術を行うことで精巣そのものを切除し、男性ホルモンの濃度を低下させ、肥大を縮小させます。この方法が最も効果的で、再発の心配もありません。
しかし、高齢犬や既に他の臓器へのダメージが大きすぎるため、全身麻酔のリスクが高く、手術が選択できないと判断された場合には、ホルモン剤などの投薬治療が行われることもあります。ホルモン剤の投与によってホルモンバランスの調整を行い、肥大の進行を緩やかにします。
また、前立腺肥大で軽い便秘を引き起こしている程度であれば便秘については食事療法のみで改善されることも。とは言っても、食事療法や薬によって大きな効果が期待できるのは肥大が小さい段階に限られます。
投薬治療においては、投薬を中断すると肥大が進行する場合も多く、継続的な投与が必要になるため、副作用などの犬への負担はもちろん、治療費としてホルモン剤注射などの薬代や通院費などの費用が高額になる可能性もあります。
しかし、犬の前立腺肥大が自然治癒するケースは非常に稀で、放置しておくと生命に関わる合併症を引き起こす可能性もあるため、愛犬の健康状態にあった治療方を見つけられるよう、薬の費用なども含めて信頼できる獣医師としっかり相談しましょう。
犬の前立腺肥大の手術
犬の前立腺肥大の手術についてご紹介します。
去勢手術
犬の前立腺肥大は、去勢済の犬には発症しません。また、肥大が進行していたとしても去勢手術を行うことで肥大は縮小し、半永久的に予防効果が持続します。犬の去勢手術の適正時期は、犬種によって多少異なるものの、初めての発情期を迎える前がベストであると考えられています。
そのため、ドッグショーへの出場や交配の予定がない場合は、子犬をお迎えした時点で去勢手術についてしっかり考えておく必要があります。犬の去勢手術を行うことで、前立腺肥大などのオス特有の病気のリスクを軽減、排除することはもちろん、発情によるストレス、マウンティングなどの問題行動を防ぐこともできます。愛犬が前立腺肥大を患ってしまった時、去勢手術を受けることができる健康状態であるならば、去勢手術を受けることを強くおすすめします。
手術費用
犬の去勢手術の費用に関しては、体の大きさや動物病院の料金設定によっても異なります。小型犬や中型犬の場合で2万円前後、大型犬で3万円前後であることが多いようです。これらには、術前検査や全身麻酔、その他の処置費用が含まれていませんので、別途必要になります。入院が必要かどうかによっても料金は異なりますので、事前に説明を受けるようにしてください。
また、前立腺肥大の治療として行う去勢手術については、一部の治療費にペット保険が適用される場合もありますので、加入先の保険会社やかかりつけの動物病院に確認しておきましょう。
去勢後の影響は?
去勢後の影響については、手術後に性格が変わるなどと言われることもありますが、去勢によって性ホルモンが分泌されなくなることで、オスとしてのマーキング行為や攻撃行動などの問題行動が軽減されることによって穏やかになることが多いとされています。これらには個体差もあり、特に何も変わりなかったという飼い主さんも少なくありません。
また、去勢手術後は患部を舐めないように注意し、肥大が縮小しているかどうかの経過観察のためにも、獣医師から指示があるまで通院を欠かさないよう注意しましょう。
犬の前立腺肥大の予防方法
犬の前立腺肥大は、その原因がはっきり解明されていないため、予防が難しい病気でもあります。しかし、以下のような方法で予防、対策することができます。
去勢手術
まず第一に、前立腺肥大は去勢することで未然に防げる病気です。特にドッグショー出場や交配の予定がない場合は、子犬期に去勢手術を受けることを検討してください。犬の前立腺肥大の有病率は、未去勢の場合9歳を過ぎると95%にまで上ります。この数字から考えると、前立腺肥大は未去勢のまま高齢になると必ず発症すると言っても過言ではないほどであり、高齢になると全身麻酔のリスクが高くなるため、なるべく早い段階で決断する必要があります。
定期的な健康診断
どうしても去勢手術を受けられない場合は、定期的な健康診断によって前立腺肥大を早期発見することが重要になります。一般的には、7歳までは1年に1度、7歳を過ぎたら半年に1度の健康診断が推奨されていますが、未去勢の場合は更に注意してレントゲン検査やエコー検査などを取り入れた健康診断を定期的に受けるようにしましょう。
体調管理
これは前立腺肥大に限ったことではありませんが、動物病院での健康診断以外にも、日々の自宅での健康管理が重要となります。毎日のおしっこやうんちの量や色、回数などをしっかりチェックしましょう。また、前立腺肥大との関係性は証明されていないものの、食生活は健康の基本となりますので、愛犬の体質にあった良質なフードを適正量与えられるように心がけましょう。
また、愛犬の健康をサポートするために犬用サプリメントを取り入れるのもおすすめです。特にパンプキンシードやノコギリヤシなどは、犬の前立腺肥大や膀胱炎などの泌尿器系疾患予防に効果があるとされており、様々な犬用サプリが販売されています。これらの犬用サプリは、通販などでも購入することができますので、是非チェックしてみてくださいね。
まとめ
犬の前立腺肥大についてご紹介しました。犬の前立腺肥大は、90%を超える未去勢のオス犬が患うとされている病気です。自然治癒することは稀であり、放置しておくと寿命より遥かに短い年齢で死ぬことになってしまう可能性もあり、合併症によって急死することさえ考えられます。
しかし、子犬期に去勢手術を行うことで予防できる病気でもありますので、特に去勢できない事情がない場合は早期に去勢手術を行うことを強くおすすめします。また、去勢手術ができない場合でも、日頃からしっかりと健康チェックを行い、定期的な健康診断を受けることで早期発見、早期治療ができるように心がけ、前立腺肥大を患ってしまった場合の対処法についてもしっかり考慮しておきましょう。
ユーザーのコメント
40代 女性 りりこ
愛犬は一応去勢済みの子なので、前立腺肥大にはならないことがわかり安心しました。
でも記事によると、危険な病気にも関わらず意外と発見しずらい病気で、気がついた時は他の臓器を圧迫して弊害がすでに生じていることがよくあるようですね。怖い病気なんだとわかり去勢しておいて正解だったなと思いました。
50代以上 女性 さきこ
ですが、今後の為にも他人事だとは思わず読んでみました。去勢していない雄のワンちゃん達にとっては、最悪生命を脅かされかねない病気なんですね。怖いですね。。。もし去勢していないワンちゃんを飼っている場合、定期健康診断のついでにX線写真を撮って肥大の有無を確認するよると安心ですよね。
やはり、このような病気は万が一の場合にそなえ、早期発見・治療が重要だと再認識しました。
20代 女性 ゆん
前立腺肥大による排尿、排便の問題や前立腺自体の炎症、腫瘍化などの疾患では発見が遅れると犬が亡くなるケースも少なくありません。
睾丸が左右とも腹腔内から皮膚の方に降りてくる6~8ヶ月齢には去勢手術は可能ですから、子供を産ませる予定がなければ、生殖器の病気の予防として、早期の去勢手術をおすすめします。
50代以上 女性 匿名
30代 女性 38moto
昔からあまり水を取らない子だったので、夏の暑い日は脱水症状も心配でしたが、気が付くとトイレの数が減っていておかしいなと思い始めた時、血尿がほぼ血だけになってしまい、焦って病院に連れて行きました。
血尿の原因は結石でしたが、その際に前立腺肥大症も指摘されました。どちらも同時に症状が表れてしまったので判断が難しいと言われましたが、この時の治療は利尿剤とpH調整の療法食で様子見になりました。それから症状が落ち着いたので失念していた時、震災のストレスからヘルニアになり、去勢と手術が必要になってしまいました。
前立腺肥大症は放置してしまうとヘルニアを引き起こしてしまうことがあり、とても危険です。歳を取ってからの手術となると麻酔のリスクが高くなってしまいます。早いうちから食事療法やホルモン剤投与などで予防をするか、去勢手術を行っておくと老後も安心できると思います。
40代 女性 ぽち
この病気の症状の便秘やおう吐をしたとき、どのくらいの飼い主さんが前立腺肥大症を疑うことでしょうか。
愛犬のかかり得る病気と症状の知識をつけておくことは飼い主さんにとって、とても大切だと思います。
そのほかに症状のひとつとして、直腸が圧迫されるため便の形が細くなったり、平らになるなどの排便異常もみられるそうです。
そして再度去勢や定期健診の重要さを改めて気づかされます。
わたしの愛犬は男の子で去勢してますが、父親犬はショードッグです。
ブリーダーさんからお譲りいただいたのですが、その方は何代も犬をショーに出場させています。そのため飼い主さんが犬をドッグショーに出すために去勢をしないということなどを考えると、とても複雑な思いです。
とくに男の子の場合は去勢手術により前立腺肥大や精巣腫瘍といった病気を防ぐことができるのですから。
去勢手術に最適とされる生後6ヶ月前後の時に、去勢をするかどうかの判断で今後の生き方が変わることもあります。責任を持って慎重に考えなければいけません。
犬にとって一番幸せな生き方をしてもらいたいですね。
50代以上 女性 コスモス
去勢はしていません。病気になるかならないかは、賭けですが…
去勢のメリット。デメリットを
考えているうちに、時期を逃してしまった感があります。
もし、最悪の結果に為ったら
40代 女性 みー
私の愛犬は現在13歳、前立腺肥大と診断されました。
去勢手術をできればいいのですが、高齢の為全身麻酔のリスクがあまりに大きすぎて手術はしない方向で行こうと思っています。
でもまだ7歳ぐらいだったら絶対に間違いなく去勢手術を受けます。
去勢は若いころに済ませてい置くのが後で後悔しなくていいと思います。
私は後悔しています。
30代 女性 テンのかーちゃん
うちは主人の「オスの本能を取っちゃうなんてかわいそうだ!」というわけのわからない理由で手術を先延ばしにしていましたが、私はもともと受けさせたいと思っていたのでもう一度主人にきちんと説明しようと思います。
前立腺肥大の具体的な症状や治療についても説明して、去勢手術の必要性をわかってもらおうと思います!
女性 くるみ
ちょっと凶暴な性格をしていたので、早めの去勢をとのアドバイスで早かったのですが、病気の予防と言う意味では良かったのかも知れません。病気もせず、眠るように最後は亡くなりました。
30代 女性 ハッピー
女性 ゴン吉
高齢になってからでは手術も難しいので、子犬を考えていないのであれば早いうちに去勢手術はしておいた方がいいと思います。
40代 女性 ミン
病院では手術を薦められているのですが、食事療法と薬でなんとかならないか 迷っているところです。
50代以上 女性 わんこのおかあさん
しかし、麻酔を導入中にチアノーゼを起こし、命に危険が生じた為、中止しました。
術前検査では、何の異常もなかったことから、主治医の先生から、命をかけてまでする手術ではないので・・・と説明を受け、現在に至っています。
現在、4歳ですが、若くして前立腺肥大に悩まされています。念のため、ほかの医療機関にもかかりましたが、投薬で何とかなるのだから、と言われ、更に、あれでも無理してまで手術する獣医師がいるかもしれないので、これ以上、ほかの医療機関に行かない方がいいとも・・・
かかりつけの先生も、こちらの先生もとても良心的な良い先生で感謝の言葉しかありません。今後も、愛犬の為に、うまく病気と向かい合っていきたいと思っています。