歯周病の概要ー歯周病ってどんな病気?
毎日のように見かける歯ブラシや歯磨剤(歯磨き粉)のTV-CM。その中で「歯周病を予防する」という言葉を聞くことは多いでしょう。また、虫歯をはじめとする歯の不調で歯医者さんに行った際に、歯磨きの指導や歯石取りを奨められた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
歯周病とは、歯垢(プラーク)が原因で起こる、歯の周囲の炎症全般をさします。(後述する歯肉炎と歯周炎の総称とされるのが一般的です)人間にも犬にも起こりますが、犬の歯周病は人間よりも進行が早いことが大きな特徴です。
犬の歯周病を放置をすると、口臭や歯の痛みのほか、口腔内や鼻腔、眼窩下が膿んだり腫瘍が発生したり、下顎が骨折する等、大きな疾患につながり、愛犬に甚大な苦痛を与えることになりかねません。
犬は自ら歯周病を予防することも治療を選択することもできません。
皮膚や被毛、肉球のお手入れ、耳掃除、爪切りといった日々のお手入れの中で手薄になりがちな、オーラルケア(歯ブラシや洗浄液等を用いた口腔の手入れ)のこと、一緒に考えていきましょう。
歯周病の主な症状ーどんな症状があるの?
歯肉炎
歯周病の初期症状とされる「歯肉炎」は、歯肉(歯茎)に炎症を起こしはじめた段階です。ごく初期では、若干の歯肉の腫れや歯石の存在が認められのが一般的で、犬の自覚症状は薄く、飼い主さん自身も見落とされるケースが多いようですが、進行につれ、歯の根っこの部分の色の変化や歯肉退縮(歯茎が少なくなって歯根が露出する)が見られるようになります。
歯周炎
歯肉炎が進行したものが歯周炎。人間で言うところとの歯槽膿漏と想像したらイメージしやすいかもしれません。
犬の歯周炎の症状としては、歯の痛みや食欲不振、歯肉退縮が更に進行し歯がぐらつく等、愛犬の苦痛が目立ちはじめると共に、強い口臭が派生し、見た目にも歯が黒ずんだり等、飼い主としても愛犬の姿を見たり触れ合ったりすることが辛くなるでしょう。
犬の歯の根っこはとても深く、鼻腔や目の組織にも近いことから、歯周病(歯肉炎~歯周炎)の進行は、口腔内や顔面、顎、やがては全身に影響を及ぼします。
- 鼻腔炎によるくしゃみ・鼻水・鼻出血
- 眼下の膿や腫瘍
- 下顎の骨折
が動物病院の治療例でよく紹介されています。これらの病気になった犬の歯の状態も合わせて掲載されたえいますが、さすがに、こうなるまで放置する飼い主さんは、そうそういらっしゃらないでしょう。
歯周病の原因ー歯垢(プラーク)と歯石について
はじまりは「歯垢(プラーク)」
歯垢(プラーク)は口腔内に残った食べカスというイメージが強いようですが、厳密に言うと、歯垢(プラーク)は食べカスそのものではありません。常に口の中にある菌が、食事の糖分や水分を餌にして歯の表面に作り出す、ネバネバしたもの・・これが「歯垢(プラーク)」です。
歯垢(プラーク)は、取り除かれない限り、歯の表面や歯と歯茎の境目の溝にたまります。やがて、細菌の繁殖が進むことで、歯周ポケット(歯肉ポケット)と呼ばれる歯と歯茎の境目の溝が深くなる症状が出はじめ、歯茎に炎症を起こしはじめます。
歯垢(プラーク)が石灰化すると「歯石」となる
歯周ポケット(歯肉ポケット)が出来ると、歯垢(プラーク)はより、たまりやすくなり、やがて石灰化し、「歯石」となります。文字通り、石のように硬いので簡単に取り除けなくなります。歯石は細菌の塊で「1gの歯石には10億個以上の細菌が存在する」といわれ、歯石が更に歯垢(プラーク)を増やす・・つまり、「歯周病へまっしぐら」の悪循環を産み出します。
人間の歯垢(プラーク)が歯石に変化するまでは約25日ぐらいと言われていますが、犬の場合は、約3~5日とされ、犬の歯周病が進行しやすい理由もここにあります。
歯周病の予防と対策ー家庭でできる対策
パピー時代からはじめたいこと
愛犬、飼い主さんともに、最初は顔や口回りを触ることから慣らしていき、徐々にガーゼで歯を拭う、歯ブラシを使う・・・と段階を増やしていきましょう。人間の歯磨きのようにゴシゴシ磨くというよりは、歯茎や歯を優しく拭うのが基本です。人間用の歯磨き粉は使わないようにしましょう。(歯磨き粉を使う場合は犬用のものを用いて下さい)ケアは、食後でなくても構いません。毎日が理想ですが、2〜3日に1度程度のケアを習慣づけてあげましょう。
成犬の場合
パピー時代に歯磨きの習慣をつけていなかった場合や人間に不信感が強い個体の場合、簡単に歯磨きをさせてくれないかもしれません。無理強いはストレスになるばかりか、飼い主の手を攻撃する等の事故の元にもなりますが、歯周病の元である歯垢(プラーク)や歯石も待ってはくれません。
最近では、3歳以上の8割以上の犬が何らかの歯周病を持っているのにも関わらず、歯磨きの習慣付けがうまくいっていないケースが多いことから、水に混ぜて飲ませるタイプのもの、スプレー、歯磨きガムなど、様々なアイテムが市販されていますので、愛犬に合ったものを導入してあげましょう。
硬過ぎる食べ物に注意
骨やアキレス腱など、硬い食べ物で奥歯の歯石を取るといった自宅ケアを行っている方も多いようですが、多くの獣医さんは推奨されていません。犬は、本能的に、硬く美味しいものを歯の負担を無視して齧り続けるために、歯が損傷するケースが後を断たないためです。骨やアキレス腱等を用いる場合は、リスクの軽減(骨は加熱する、量に気をつける等)をしっかり考えると共に、歯石除去を目指さないのが無難でしょう。
歯周病の治療方法の例
歯周病の治療は、とにかく歯垢(プラーク)や歯石を除去し口腔内を清潔な状態に戻すのが第一とされます。炎症を抑える薬を併用する場合もあります。歯周炎までくると完治まで相当の時間やお金がかかると考えましょう。
歯石の除去は、スケーラーを使うのが基本です。動物病院の他、サロンで施術を受けられますが、奥歯の歯石除去はむつかしく、動物病院での全身麻酔が前提となります。高齢になると全身麻酔のリスクが高まりますので、歯垢(プラーク)や歯石のつき具合を獣医さんと相談して、治療スケジュールを立てましょう。
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犬の病気大辞典!知っておきたい基礎知識
ユーザーのコメント
女性 こじ
歯磨きはなんとかさせてくれるので、毎朝毎晩磨いています。
歯の健康は飼い主の責任なので毎日のケアを怠らずにします。
50代以上 女性 チコリンさん