犬はてんかんを発症しやすい動物
てんかんとは、全身性のけいれんなどの発作や意識障害が繰り返し起こる病気です。「てんかん」というのは病気の名前で、てんかん発作は症状にあたります。特に犬はてんかんを発症しやすい動物と言われており、およそ100頭に1頭から2頭の犬がてんかんを発症しています。
犬のてんかんは、意識が残っていて体の一部分が痙攣しているような状態を指す「部分発作」と、ほとんど意識がなく全身が激しくけいれんする「全般発作」があります。老犬に見られるのも、全般発作であることが多いようです。
てんかんは、普段はいつもどおりの生活が送れていても、突然大脳から異常に強い電気信号が出されることによって発作が起こります。また、犬のてんかんは繰り返し起こると突然死に繋がることもあるようです。
犬のてんかんの原因
てんかんという病気は、犬種に限らずどの犬でも発症する可能性があります。原因は、大きく分けて遺伝や環境、病気などの要因が挙げられます。
遺伝
犬のてんかんの遺伝要因とは、先天性の発作を指します。このてんかんを起こす遺伝子は現在では特定されておらず、犬の家族の病歴を調べるしか方法はありません。傾向としては、犬が生後10カ月から3歳の間にてんかんの症状が出ることが多いようです。
有害物質
有害物質を摂取したことが原因で、てんかんの症状が出ることがあります。農薬や薬品、有害な化学物質などが口に入ってしまうことを避けるためにも、犬の手が届かないところに置くようにしましょう。
病気
てんかんは原因不明なことも多いですが、老犬の場合、てんかんの要因となっている病気が進行しているケースも考えられるので注意が必要です。
また、頭部外傷や感染症、脳腫瘍、脳腫瘍といったさまざまな病気から起こる場合もあるので、何が原因になっているかは獣医師の診察によって判断されます。
犬のてんかんの症状
犬のてんかんの症状として挙げられるのは、脳の神経細胞が異常に興奮して起こる発作で、一時的なものと、連続して起こるものに分けられます。
発作の頻度は犬によってさまざまで、毎日起こす犬もいれば、1年に1回の頻度でしか起こらない犬もいます。発作は自然に治まりますが、慢性の脳の病気ということから発作の頻度は進行していく可能性があります。
犬のてんかん発作が起こる前兆や症状として、以下のことが挙げられます。
- 落ち着きがない
- 口をクチャクチャさせる
- よだれが出る
- 意識を失う
- 全身痙攣を起こす
- 手足や顔面などの一部に痙攣を起こす
- 手足を無意識にバタバタさせる
- 一定の場所でくるくると歩き回る
犬は、てんかん発作が重度になると、短い間隔の発作を何度も繰り返したり、発作が長く続いたりする群発発作が起こることがあります。その状態は「てんかん重積」と言われており、1日に3回以上起こる発作が、30分以上続きます。
通常のてんかんとは違い、脳に十分な酸素が行き届かなくなると重い後遺症が残ることがあり、ときには命に関わる危険な状態に陥り、死亡する場合もあるので早急な処置を行う必要があります。
犬のてんかん発作後の対処法
犬のてんかんの症状は、眠っている夜間や早朝に起こることが多くあります。対処法としては、まず落ち着いて発作が治まるのを注意深く見守りましょう。
発作の状況を観察する
てんかんが疑われる状態になった場合は、まず犬の近くに危険なものがないかどうか、あるいは落下するような危険な場所ではないかなど、安全の確保をしましょう。
発作後は診察のため、どのような症状で何回てんかんの発作を繰り返したかなどの経緯をなるべく詳細にメモしたり、発作の状況を撮影したり、発作の状況を詳しく伝えられるようにしておくことが大切です。
発作状況の観察は、犬のてんかん発作の型を決めるときに非常に重要になります。苦しんでいる愛犬の動画を撮るのは精神的に辛いものがありますが、撮影をしておくことで獣医師に症状をわかりやすく、正確に伝えられます。
病院を受診する
犬のてんかん発作は、通常数秒から2分以内におさまります。けいれんが10分以上続いたり、意識が戻らないうちに次の発作を起こしたりを繰り返している場合には早急に病院へ連れて行く必要があります。
それ以外にも、嘔吐などの症状が見られるときは、嘔吐物が気道に詰まって呼吸困難で死亡に繋がらないよう、気道の確保や嘔吐物を取り除く必要があります。口の中に嘔吐物や異物がある場合は、取り除いてあげてください。そのとき、飼い主は指を噛まれないよう注意しましょう。
犬のてんかんの治療法
飼い主は犬のてんかんの治療を始める前に、てんかんが起こる原因や発作時の対処法を知る必要があります。その上で、定期的な病院での診察と適切な治療を行っていくようにしましょう。犬のてんかんの治療法としては、以下のようなことなどが挙げられます。
薬
犬のてんかん治療は、「抗てんかん薬」という薬を飲み続けていく治療が中心になります。この薬はてんかんそのものを治す薬ではなく、発作の回数を減らしたり、発作の症状を軽くしたりすることが目的です。
抗てんかん薬を飲み始めた後は、いつもより眠りがちになったり、歩き方がいつもと変わったりする症状が見られることがあるようです。ほとんどは一過性のものなので、かかりつけの獣医師と相談しながら薬と付き合っていくようにしましょう。
犬のてんかんの寿命への影響
犬がてんかんになったからといって、必ずしも寿命に影響があるとは限りません。てんかん自体は死に直結する病気ではなく、てんかんの発作が起こった後は、最初はフラフラとしていますがその後は何もなかったかのように振る舞う犬が多いようです。しかし、激しい癲癇が起きた時には意識が戻らなくなってしまったり、癲癇発作が止まらなくなってしまったり、呼吸困難が起こることもあります。癲癇で大切なことは発作の頻度が増えないように投薬することです。
その発作が一過性のものと飼い主が勝手に判断するのは避けましょう。犬のてんかんの発作が起こった原因を知り、適切な処置を行うこと、またかかりつけの獣医と相談の上、今後の対策を決めておくことが大切になります。
犬のてんかんとの付き合い方
犬のてんかんは治療しても完治することが少ない病気です。てんかんと上手に付き合っていくため、日頃からてんかんのことを考慮し、犬のケアを行っていくのが望ましいようです。どのようにすれば犬と安心して過ごせるを考えてみましょう。
サプリメントやほかの薬との併用は確認して
サプリメントや果物、ほかの薬と併用する場合は副作用が起こる可能性があります。必ず獣医師に確認し食べてよいもの、悪いものや併用してはいけないサプリメントにはどのようなものがあるか、飲ませ方について確認してください。
水場は避ける
犬が水泳中にてんかんを起こしてしまうと溺れてしまう危険性があります。基本的には、今までどおり運動をしてもよいですが、発作が起こっても問題のないような場所で遊ぶようにすることが大切です。
発作中の噛みつきに気をつける
てんかんの発作が起こったときは、飼い主の手であっても混乱して噛み付いてしまう危険性があります。初めて症状が出た場合は驚いてしまうと思いますが、飼い主は慌てず、発作中に犬の口に手を近づけないようにしましょう。
また、発作後の症状として嘔吐が見られ、口の中の嘔吐物や異物を取り除く際にも噛みつかれないよう注意する必要があります。
長時間の留守番はさせない
てんかんの犬を留守番させるときは、転倒や怪我などが起こらないよう、ケージなどの決まったスペースを用意してあげるとよいです。
また、ドックカメラを設置するなど、常に留守番中の犬の様子を観察できるようにしましょう。留守番は長くても2時間ほどにするなど、犬の症状や発作の状態にあわせた適切な方法を知る必要があります。
犬のてんかんに関するまとめ
もしも犬にてんかんの発作が出たら、まずは落ち着いて様子を観察しましょう。数秒から数分で元の状態に戻り、発作を繰り返さなければ大丈夫です。
飼い主は、犬の日頃の様子や気づいたこと、てんかん発作の起きた日時や回数などを記録し、前もって正しい知識を得ておくことが大切です。また、様子がおかしい場合はすぐに獣医の元に連れていくようにしましょう。