犬の腎不全(腎臓病)の種類
犬の腎臓は人間と同じく左右1個ずつあり、そら豆状の形をしています。腎臓で重要な働きをしている「ネフロン」というろ過組織は、血液中の老廃物を尿として排出したり、体内の水分やミネラルのバランスを正常な値に維持したりするなどの役割を担っています。
このネフロンが傷付いたり壊れたりして腎機能が低下すること引き起こされるのが腎不全です。症状があらわれるまでの時間の経過によって「慢性腎不全」と「急性腎不全」とに分けられます。
慢性腎不全
犬の慢性腎不全は、数カ月から数年にかけて徐々に腎臓の機能が低下していき、左右1つずつある腎臓の片方か、もしくは両方が正常に機能していない状態のことを指します。何歳でも発症する可能性はあるものの、加齢とともに増加する傾向があります。慢性腎不全はかかっていまうと完治が難しいと言われています。
急性腎不全
急激に腎機能の低下した急性腎障害が進行し、重度になった状態を急性腎不全と言います。慢性腎不全よりも発症率は低いですが、急激に状態が悪化すると犬が数日で命を落としてしまう危険もあるので注意が必要です。早期発見と早期治療によっては腎機能が回復する可能性があります。
犬の慢性腎不全
犬が慢性腎不全と診断されたら血液検査によって腎機能の数値を検証し、慢性腎不全がどの程度進んでいるかを4つのステージに分類します。
初期症状
慢性腎不全の初期は無症状の場合が多いですが、ステージが進むにつれ以下のような症状が見られるようになります。
- 多飲多尿
- 元気がない
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 脱水
- 低比重尿、尿蛋白
ステージ1では、残された腎機能は100%~33%と言われています。目立った症状は見られませんが、多飲多尿となり薄い尿を大量に排出します。血液検査で異常を見られない事が多く、見逃されてしまうケースもあります。
ステージ2では残された腎機能は25%までに低下します。症状はほぼ無自覚か軽く、多飲多尿、低比重尿、蛋白尿の症状が見られることもありますが、犬は元気な状態です。
ステージ3まで進行すると残された腎機能は10%で、元気がない、散歩に行きたがらない、食欲不振、体重減少、嘔吐、脱水などの症状が見られるようになります。
末期症状
- 口臭
- 嘔吐、下痢
- 重度の高窒素血症
- 尿毒症
- 意識混濁
犬の慢性腎不全が末期症状と言われるステージ4まで進行すると、腎機能は5%まで低下してしまいます。腎機能が低下することで排泄機能が落ち、高窒素血症と尿毒症が原因で引き起こされる嘔吐や下痢、震え、口臭などの症状が見られます。
体内の水分やナトリウムが排泄されないことで高血圧となり、心臓にも悪影響を及ぼします。心臓の機能が低下すると、息が荒い、呼吸困難、咳など症状が見られるようになり、重症になると意識混濁や痙攣が起こります。
原因
犬の慢性腎不全は多くの場合、急性腎不全から慢性に移行する場合や、遺伝性の腎臓病が原因となることがあります。しかし、慢性腎不全は長い時間をかけて進行していくため、症状が出る頃には既に原因がわからなくなっていることが多く、原因の特定は難しいと言われています。
治療方法
破壊されてしまった腎臓の組織は回復することがないため、残った腎臓の機能をいかに長く持たせるかが治療の目的となります。犬の慢性腎不全は血液中の老廃物や毒素を排出させることが治療の主体となるので、服薬の他、静脈点滴や皮下点滴などにより体液を増加させることで腎機能を補助する治療が行われます。また専門医による腹膜透析や血液透析などの透析療法を行うこともあります。
同時に、腎臓の負担を軽減させるための食事療法を行うことが大切です。体内で老廃物を多く作る原因となる「タンパク質」「リン」「ナトリウム」を制限した特別療法食に切り替えます。給餌法や量については、かかりつけの獣医師と相談しましょう。
犬の急性腎不全
初期症状
- 元気がなくなる
- 食欲不振
- 嘔吐、下痢
- 脱水症状
- 呼吸が早い
犬の急性腎不全の初期症状は元気がなくなる、食欲不振、嘔吐、下痢脱水などがあります。早期に処置することで回復させることができる可能性が高いと言われており、慢性腎不全のようなステージごとの判断基準は設けられていません。上記の症状が見られた場合は、早めに獣医師を受診しましょう。
末期症状
- 尿毒症
- 口内炎
- 意識低下
- 尿毒症
- 痙攣
犬の急性腎不全が進行し、末期になると尿毒症という状態が起こります。尿毒症の症状としては口内炎が増える、口からアンモニア臭がする、意識低下、痙攣などが起こります。
原因
犬の急性腎不全の起こる原因は、ぶどうやレーズン、不凍液に使われるエチレングリコール、人間の痛み止めとして使われるイブプロフェンやアセトアミノフェンなど、犬にとって腎毒性の高いものを誤飲誤食することで起こります。
フィラリアなどのウィルス感染や、レプトスピラなどの細菌感染によって起こる場合もあります。他にも心臓疾患や熱中症など、血流が悪くなり尿が正常に排泄できないことが原因で起こることもあるようです。
治療方法
短時間で命を落とす可能性がある犬の急性腎不全は、入院しての治療をおこないます。毒性のあるものを誤飲、誤食して時間があまり経過していない場合は、内容物を吐かせる処置をします。
その後、ナトリウムやカリウムなど崩れてしまった電解質のバランスを整えるため、必要な薬剤を点滴またはカテーテルで膀胱内に投与する輸液療法などの処置が行われます。点滴をしても尿が出ない場合は、利尿剤や血液を増やす薬などを投与します。
急性腎不全が重症化し点滴やカテーテル治療で反応しない場合は、犬にも透析治療が行われます。しかし、犬の透析ができる施設は限られているため、透析治療が必要な場合はまず獣医師と相談しましょう。
犬の腎不全を悪化させない食事の心得
塩分を控える
犬の腎不全を悪化させないためには塩分の過剰摂取を控えることが大切です。しかし、極端な塩分制限は脱水症状を引き起こし、かえって腎不全を進めてしまうことになるので、獣医師に相談して適正な量を与えられるよう注意しましょう。程度の軽いステージ1から塩分を制限した食事に切り替えると経過が良好に進む傾向にあると言われています。
タンパク質を控える
初期の腎不全で尿毒症の兆候が見られない場合は心配ありませんが、ステージ3以降はタンパク質の制限が必要となります。しかし、タンパク質を制限しすぎると筋肉量が落ちてしまうなど弊害もあるので過度な制限はせず、できるだけ良質なタンパク質を与えまるよう心掛けましょう。
化学物質の影響を受けていない、必須アミノ酸のバランスの整った消化率の良いタンパク質を、様子を見ながら与えるとよいでしょう。
リンを控える
腎不全の犬にはリンの制限も必要になります。リンは体の骨の80%を占めており、筋肉や臓器の構成成分ですが、腎機能が低下するとリンの排出能力が低下して血液中の濃度が高くなりすぎてしまいます。リンを吸着して便とともに排出させる薬の服用とともにリンを制限したフードを併用することで薬の効果が上がると言われています。
療法食を取り入れる
慢性腎不全の犬の食事は市販の腎不全用の療法食を与えましょう。食事に加えて抗炎症作用のあるオメガ3などの必須脂肪酸を適宜与えると副作用なく腎機能の保護効果が期待できると言われています。
また、最近の研究では善玉菌を腸内に増やすと腎臓の負担を減らす効果があるとされています。腎不全の進行を抑えたり症状を緩和できるよう獣医師と相談しながら、療法食と食事にサプリメントをうまく取り入れるのもよいでしょう。
おやつを与えても大丈夫?
腎不全の犬に栄養補助的におやつを与えることは問題ありませんが、避けるべき栄養素があるため注意が必要です。鶏肉のササミが使われているものは「リン」が多く含まれているため、同じ鶏肉でもむね肉を使ったものを選びましょう。おやつはタンパク質やナトリウム、リンの含有量に気をつけて療法食の補助として量に気をつけながら与えるようにしてください。
腎不全の犬が食べてはいけないもの
ソーセージ
ソーセージやハムなどの食肉加工食品やかまぼこのような魚肉加工食品など、塩分の多い食べ物はあげてはいけません。腎臓の機能が低下している犬は塩分の排出も困難で、血中の塩分濃度が高くなってしまいます。
身体は濃くなった血液を薄めるために血管の周りの水分を使います。血液の水分量が増えると血液を急いで循環させるために心拍数が増え、血圧も上がり、腎臓や心臓への負担が増えてしまいます。
鶏ささみ
鶏ささみはリンの他にも、タンパク質含有量が多いので腎不全の犬には注意が必要です。3大栄養素のうちの一つであるタンパク質は、体を作る栄養素となって使われた後は、老廃物となって体外に排出されます。
健康な犬であれば腎臓がろ過機能となり、タンパク質から生成された老廃物はスムーズに排泄されますが、腎不全の犬はその機能が落ちているので、腎臓への負担が大きくなります。
その他、牛もも肉もタンパク質が多く含まれているので気をつけましょう。
チーズ
リンが多く含まれるチーズなどの乳製品は避けたほうがよいでしょう。リンは骨や歯を作る重要な栄養素ですが、腎不全の犬には負担が大きくなります。
同じ乳製品の中でもヨーグルトは整腸作用があるのであげているという飼い主もいますが、腎不全の犬の場合は他の食品で代用するほうが無難でしょう。その他、タラや鮭、卵などにもリンは多く含まれます。
さつまいも
さつまいもに含まれるカリウムが低血圧や不整脈の原因となるため腎不全の進行した犬には注意が必要です。甘みもあるので犬が好むことの多い食材ですが、腎不全が心配される犬は避けるべき食品です。他にバナナ、かぼちゃの種などにもカリウムは多く含まれています。
腎不全の犬の余命は?
腎不全の犬の余命は発見時期によってもさまざまです。急性腎不全の場合は早期発見、早期治療で回復を見込めますが、症状の進行が早いので1週間から1カ月で死にいたることもあります。一方、慢性腎不全は診断されてからの余命は1年半~2年と言われています。しかし、腎不全は早い段階での治療と食事療法を並行することで余命を伸ばすことができる病気です。
犬が腎不全になるのを予防する方法
腎不全になるのを防ぐために、犬にとって腎毒性のある食べ物や、化学物質、人間の薬物を犬の生活範囲に置かないようにしましょう。また、塩分を控えた栄養バランスの良い食事を心がけることや、新鮮な水を用意していつでも水分補給ができるようにしてあげるのもよいでしょう。排尿時の様子や尿の色や量を知っておくことも大切です。
腎不全は感染症が原因で引き起こされることもあるので、レプトスピラ症などのワクチン接種で感染症をしっかり予防しましょう。成犬では少なくとも年に1回、シニア犬では半年に1度の定期検診をおすすめします。
まとめ
犬の腎不全は一度かかってしまうと完治の望めない辛い病気ですが、早期発見することで回復が見込まれたり、進行を緩やかにしたりすることができます。
獣医師と相談しながら、段階に応じた治療と服薬と、飼い主の手作り食などもうまく組み合わせながら、愛犬の健康を最期までサポートしてあげてください。
ユーザーのコメント
30代 女性 Chappy
もしなってしまった場合、手作り食以外にもハーブなども取り入れることは勉強になりました。普段からハーブはよく使うので愛犬にも大丈夫なハーブの種類を知ることができてよかったです。
20代 女性 ゆり
我が子もプレシニアの年代になってきたので、定期的な健康診断は欠かさずに行こうと思います。腎不全にはハーブが有効ということを初めて知りました。今後我が子がならないとは限らないので、今回知った知識を覚えておこうと思います。
20代 女性 すず
わんちゃんが1番苦しいですが、見ているしかできないこちらは本当に辛くて辛くてあの頃の私はボロボロでした。この記事を読んでまたあの辛さを思い出してしまって、少しでもこの病気に皆様のわんちゃんがかからないように祈ることしかできません。
40代 女性 グーグルぽち
しかし突然悪化する怖い病気とのこと。飼い主さんにとって、犬のかかり得る病気の知識はとても大事だと思います。
慢性腎不全は老化による機能の低下から起こるだけではなく、偏った食事からも起こるという理由に目が行きます。
近年ではドッグフードの種類がありすぎて、何を愛犬にあげたらいいのか迷う飼い主さんも多いと思います。犬は少しのフードでも体に大きな影響を与えるので、考えてしまいますよね。
腎不全の治療で使用されているハーブは、実はとても良い食べ物で、今ではドッグフードにも良質のハーブを混ぜて作られているものもあります。健康維持やシニア犬にも良いといわれるハーブは多方面で役立つことでしょう。
そして今は数種類のハーブがミックスされたサプリメントもあります。
アメリカ産でオーガニック認証されているAnimal Essentials(アニマルエッセンシャルズ)やイギリス産のHilton Herbs(ヒルトンハーブ)などは評判がよいブランドの一部です。
日本でハーブは食品扱いですが、海外では昔から薬として一般的に使われていますので、効果が期待されますね。ぜひ病気予防として普段から取り入れることをおすすめします。
30代 女性 emi
本当にお辛いことだろうと、胸が苦しくなります。友人の愛犬は飼い始めてから間もなく腎臓病と診断され、2年程くらいしか生きられないだろうと言われていました。
ブリーダーさんにお返しすることもできましたが、もうすでに我が子も同然でしたので、
看病しながら一緒に過ごすことに決めました。
それから食事療法、飼育環境、病院通いを徹底した結果、2年の命と言われていたその子は
9年も長生きをしてくれました。家族の愛情が伝わってのことだと思います。腎不全になるととても苦しいのですね・・愛犬の苦しむ姿はもう見たくないので、
我が家も気を付けようと思います。
40代 女性 匿名
30代 女性 ゆいこ
飼い主の皆さん、疑問に思ったらすぐにセカンドオピニオンをおすすめします。主治医は猫の腎不全と同等と考えていました。同じ数値でも犬の腎不全は今日明日の命に関わる場合があります。一生の後悔です。
10代 女性 匿名
ある日、たまたま犬の世話をしていた時全く動かずしんどそうにしていました。祖父と祖母に病院に行くよう説得し、聞かなかったので強引に連れて行きました。何か、嫌な予感がしていたからです、、。
そして病院につき、そこはとても混むので待っていた時、ケースの中で苦しそうな声が聞こえました。そして、車に乗り、ケースを開けると嘔吐をしていました。とても辛そうで、車でもしんどかったのだなと思います。それからは抱っこをして撫でながら待っていました。約2時間後ついに検査を受けました。すると、腎臓と膵臓がとても悪く、もし連れてきていないと今日の夜には亡くなっていたと言われました。そして、明日まで生きられるかわからないと言われました。その夜は辛すぎてねれませんでした。
次の日から毎日行ける時間があればお見舞いに行きました。出来るだけちからになってあげたかったからです。すると、約3週間でどんどん回復して行きました。波はありましたが、それでも良くなっていきました。先生にも、それは家族がついていてくれて、『生きよう』という気持ちができ、凄まじい生命力で生き抜いたおかげです。本当にすごいです。と。
それからは退院し、毎日決められた量の注射をしてあげています。たまに嘔吐などはしますが、食欲もて出来ていまはすっかり元気です。でも気を抜かずしっかりと栄養管理はしています。
みなさんには同じようになってほしくありません。
少しでも様子がおかしかったり、痩せたりしたら病院に連れて言ってあげてください。
そして、1日1日を大事に愛犬との思い出をたくさんつくってほしいです。
いまの当たり前の日常が当たり前でないほど、悲しくて辛いことはありません。
参考にならないかもしれません、しかし辛い思いをした犬を増やしたくありません。どうか気づいてあげてください。
長々と失礼しました。
女性 海
40代 女性 miyu
体調の変化や経過を含むと長くなってしまうので、最後の日のことだけ記します。
飲まず食わずの日が続き5日目。前々日は3度のトイレごとに水を飲んだせいか点滴のせいか夜中に苦しそうに胃液を吐いてしまう。病院に連れていき吐き気止めの注射をしてもらったのでこの日は少し楽そうだったけれど、緩くなった口の脇から漏れ出してくる胃液のようなものがひどい悪臭を放っていました。時々、暖かく湿らせた柔らかいタオルで目やにと口元を拭いてあげ、抱き上げて口の横からスポイトで水や重湯をほんの少し飲ませるとゴクリと飲み込んでくれました。口はなぜかがっちりと閉じられ舌が横からはみ出しているような状態でした。何も受け付けない体に水を入れるのも躊躇しましたが、口を少しでも湿らせてあげたいとの思いでした。昼過ぎから鼻が詰まって呼吸がつらそうになりました。濡れたタオルで拭いたり、綿棒で表面を拭いたりしてみましたが、鼻の中がふさがっているのか、口に漏れている胃液が鼻にも入って固まってしまったのか、息子にもライトで照らしてもらい見てみましたがどうすることもできませんでした。何度も首をもたげて宙を仰ぎハア~と口から息を吐いては顔を床に着け、また頭をもたげ…をずっと繰り返し、時々急によろよろと立ち上がってやみくもに歩き出し部屋を徘徊してストップするのでその場にゆっくり座らせてあげ…をずっとそばについて介護しました。呼吸が少しでも楽になればと抱っこしてあげると、余計苦しそうに鳴きました。夕方を過ぎると、いよいよ呼吸がつらくなり、顔を上げるたびに力ない優しい声で鳴きました。「助けてよ、苦しいよ」と言っているようで、ずっとそばについて撫でてあげていた私は寝そべっているあの子の体に覆いかぶさるように抱きしめ「うんうん、苦しいね、つらいよね」と言いながら泣くことしかできませんでした。私も3日3晩そばについてうたたねする状態で体力も落ち頭痛もひどくなってきたので頭痛薬を飲みました。ワンコは急に立ち上がって玄関の方に歩いていき、すこしいきむようにしてタールのようにべたついた黒い便を出しました。ああ、もうお別れのときだ、と思いました。リビングに移動し力なく倒れこむように寝そべった頃はもう夜の7時か8時だったと思います。4日前から始めた皮下点滴の時間をだいぶ過ぎてしまっていることに気づき脱水の心配をしつつも、点滴をすることがこの子にとっていいのか、しない方が早く楽になれるのかとずっと悩みながらつらい鳴き声を聞き続けました。神様どうか、少しでも早くこの子を楽にしてあげて…ばあば、お迎えに来てあげて…と泣きながら祈ることしかできませんでした。知人から聞いた安楽死のことが頭をよぎりましたが、こんな状態で病院につれていくこともできず…声をかけて撫でてあげたり、涙声で子守唄を歌ってあげる事しかできなかった無力な自分がただただもどかしかった。9時すぎ、泣き叫ぶように吠え続け、体温が熱く感じたので脱水による熱中症かもとアイスノンでわき腹を冷やしてあげると「グゥ、グゥ」と鳴き声が変わりました。それは、この子がご飯を食べた後にお腹を出して寝転がって出す時の気持ちよさそうな声と同じに聞こえました。気持ちいいのね、よかったね、でも、たぶんもうさよならなんだね…と思った瞬間、不自然な方向に体を大きくよじり、のけぞりました。「めっちゃん、よくがんばったね、ありがとう、大好きだよ、さよなら…」と私も泣きながら声をかけ、頭が何度か大きく痙攣して動かなくなりました。大学生のお兄ちゃんも大声をあげて泣いていました。子どもたちと3人でお別れをして、最後に温かいシャワーできれいに洗ってあげました。苦しかったね、10時間も呼吸が苦しいなんて、どんなにつらかったでしょう…眠るように安らかに死んでいけたら、どんなに幸せだったでしょう…ごめんね、苦しい思いをさせて、何もしてあげれなくて。心臓を守るために腎臓をダメにして、大好きなご飯も食べられなくなってしまったよね。鼻づまりを治してあげられなくてごめんね。時間を巻き戻せるなら、薬を飲まずに最後までご飯を食べて心臓発作で亡くなった方がよっぽどよかったんじゃないかと、後悔は尽きません。どんな最後にも後悔はつきものだと思いますが、愛する子の最期の時には必ず飼い主さんも迷い、悩み、苦しむはずなので、その子がどんな病気でどんな状態で、その先にどんな症状が起こりうるのかを前もって調べておくだけでも愛犬の最期に役立つケアをしてあげられるかもしれません。