コンビニに通ってきた犬
コンビニ
昨年11月、山口県下関市豊浦町のあるコンビニに、1匹の犬が現れました。
その犬は、まるで店内で買い物をしている飼い主さんを待っているように、入り口横でジッと座っていたそうです。誰もが、飼い主さんを待っている飼い犬だろうと思っていたみたいです。お利巧に待っているんだと。
今日もいる。昨日もいた、一昨日もいた…。同じ場所に同じ座り方で、犬はそこに黙ってジッと座り続けていました。
でも、人々は徐々に気が付きはじめました。その犬は、首輪をしていませんでした…。
捕獲収容
とうとう店の人が動物愛護管理センターに電話しました。犬がいるので捕獲してくださいと。動物愛護管理センターは、保健所です。すぐに職員さんが捕獲に乗り出しました。
犬は唸りながら逃げ回ったそうです。その犬はとうとうセンターに収容されてしまったのです。
迷い犬?
迷い犬なのか、野犬なのか、判断がつかない犬でした。
下関動物愛護管理センター譲渡制度登録の愛護団体が、迷い犬として、飼い主さんに情報が届くようにチラシを作って貼って回りましたが、飼い主さんが告示期限までに現れることはありませんでした。
その犬が座り続けていたコンビニで事情を聞いてみたところ、毎日揚げ物を油で揚げ始めたらどこからともなくやってきて、店の入り口横付近に座っていたと言います。
お腹が空いていたのかもしれません。誰かが食べ物をあげていたのかもしれません。
セブン
私たちは、その犬を「セブン」と名付け、センター管理棟で面会を申し出ました。
セブンは、小刻みに震えていました。小さな唸りもありました。職員さんが近付くと必ず唸ると言われました。そういう子は、譲渡対象にはなれません。
でもセブンには、恐怖からの失禁脱糞がありました。それがあるなら、なんとかなる、助けられるかもしれないと私は思いました。
唸る犬
1回目の面会では、移動用のケージを開けて撫でるまでできました。唸る犬のケージの扉を開けるのは勇気が必要です。でも、私たちに時間はそれほど与えられません。
短い面会時間の中で、なんとかその犬に触れて、首輪をつけ抱っこできるまでにならなければ、唸る犬を引き出す交渉は難航します。
だから、イチかバチかで触り、ケージの扉を開けてなんとか首輪をつけるまで、神経を集中させて必死で頑張ります。その犬をなんとかセンターから引き出すために。このままでは、処分になるであろう犬の命を救うために。
2日目
ケージを開け、なんとか首輪をつけてみました。そしてリードを付け、ケージの外に引っ張り出しました。 半ば強引です。助けるためにはたとえ強引でも、時間のない私たちはなんとかしなければならないのです。
そして、私は大きな賭けに出ました。
隅っこに逃げたセブンを、抱きしめました。無我夢中でした。
抱っこ
その次に私がやったことは抱き上げることでした。暴れました。でも、抱き上げました。それからのセブンは、不思議と大人しかったです。
連れて帰りたかった
その時のセブンはまだ成犬になり切れていない子犬でした。
抱っこしたまま、連れて帰りたい衝動にかられました。でも、それはできませんでした。センターの規則と手順があります。移動用のケージに戻さなければなりませんでした。
最初はあんなにケージから出るのを嫌がってたのに、戻そうとすると、抵抗しました。ケージにもう二度と入りたくはないというような抵抗でした。
でも、私はセブンをケージに入れなければならなかったです。胸が締め付けられる思いでした。「大丈夫、すぐに迎えに来るからね!必ずあなたは私が助けるから!待っててね!」そう声をかけて、後ろ髪ひかれる思いでセンター管理棟を後にしました。
成犬へ
それからセンターといろいろあって、セブンを引き出すことがずっとできませんでした。ようやく引き出せたのは、年が変わった3月8日のことでした。
約3カ月ぶりに再会したセブンは、すっかり成犬になっていました。でも、覚えてくれていました。再び抱っこすることができました。
最後に
セブンは、その後、私の家で人馴れ訓練を行っています。私の部屋で寝起きを共にしながらも、まだ私にしかなついていない状況です。センター管理棟ではつけられていた首輪もリードも、今はつけられない状態です。 触れるけど、抱っこはなかなか難しい状態です。自我が出て、抵抗するようになったのです。
一緒のベッドに寝るのに、首輪をつけようとすると、抵抗して逃げ回ります。抱っこしようとすると、逃げてしまいます。まだまだ時間がかかりそうです。
セブンと一緒にお散歩に行く日を夢見て、そしてセブンを優しい里親様につなぐ日がいつか来ると信じて、私はこの命の活動を今日もつづけています。
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40代 女性 ゆずまま
50代以上 女性 大吉