災害救助犬とは
レスキュー犬とも呼ばれる災害救助犬は、人間よりも桁違いに優れる嗅覚を使って冬山の遭難や地震などの災害時に行方不明の人を捜索する為に訓練された犬の事です。
災害救助犬は、がれきや土砂の下に生き埋めになってしまった人や、水難事故や雪難事故に遭ってしまった人を救助する為に活躍しています。
災害救助犬と警察犬の違い
人を探し出すという事ではある意味同じである「災害救助犬」と「警察犬」とでは違う点が多々あります。警察犬は特定の匂いから特定の人を探しますが、災害救助犬は特定の匂いを必要とはせず、土や雪の中から人間を探します。
また、警察犬は足跡から追跡しますが、災害救助犬は足跡が無くても探し出す事ができます。警察犬は川を越えてしまえば追跡する事ができませんが、災害救助犬は川を越えても探し出す事が可能です。
その理由は警察犬は特定の匂いがついているものを追って追跡しますが、災害救助犬は臭いがついているものを追跡しているのではなく、空気中に漂う浮遊臭を嗅いで追跡する事ができるからです。
災害救助犬の種類
災害救助犬は活躍する場所から3つに分類されます。地震によって生き埋めになった人を救助する地震救助犬、雪山などで遭難した行方不明者を救助する山岳救助犬、海や川などで水難事故に遭った人を救助する水難救助犬に分類されます。
日本における災害救助犬
日本でおける最初の災害救助犬が誕生したのは1992年で、1995年に発生した阪神・淡路大震災でスイスの災害救助犬教会の12頭と共に富山県と神奈川県から5頭が活躍しました。阪神・淡路大震災での活躍がきっかけとなり、災害救助犬の本格的な養成の取組が開始されるようになりました。
日本レスキュー協会、日本災害救助犬教会、災害救助犬教会富山など現在では全国に10以上の養成団体があるといわれています。少しずつですが、これらの団体と災害時の出動協定を結ぶ自治体も増加しています。
JKCに登録されている災害救助犬の犬種
JKCは日本で犬種登録事業を行っている団体ですが、JKCには災害救助犬が登録されています。
ラブラドール・レトリーバー
イギリス生まれの大型犬で、環境順応性が高く、温和で社交的で従順な性格をしている犬種です。
ジャーマン・シェパード・ドッグ
ドイツ生まれの大型犬で、警察犬としても活躍している犬種です。最も利発で聡明な犬種として知られ、飼い主に従順な性格をしています。
フラットコーテッド・レトリーバー
イギリス生まれの大型犬で、陽気で優しく、従順で献身的な性格で学習能力が高い犬種です。
ボーダー・コリー
イギリス生まれの中型犬で、全犬種で最も頭がいい犬種として知られている犬種です。運動能力や燻煙性が高く、従順でエネルギーに満ち溢れた犬種です。
ゴールデン・レトリーバー
イギリス生まれの大型犬で、天性の服従性や忠誠心を持ち、温和で知的で友好的で楽天的な性格で、人懐こい犬種です。
ビーグル
イギリス生まれの小型犬で、活発で穏やかで忍耐力がある犬種で、狩猟犬の中では最も愛想がいい犬種といわれます。
ジャック・ラッセル・テリア
イギリス生まれの小型犬で、非常に好奇心旺盛で活発な性格です。
アメリカン・コッカー・スパニエル
アメリカ生まれの中型犬で、陽気で人懐こく、好奇心が強い犬種です。
柴犬
日本生まれの小型犬で、大胆で快活で純粋な性格です。飼い主に対して非常に忠実で、賢く勇敢な性格をしています。
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
イギリス生まれの中型犬で、快活でエネルギーに満ち溢れた犬種で、あらゆることに熱中する性格です。
ミニチュア・ダックスフンド
ドイツ生まれの小型犬で、胴長短足の体型で落ち着きがあり、情熱的で辛抱強いで性格をしています。
シェットランド・シープドッグ
イギリス生まれの中型犬でシェルティーとも呼ばれ、非常に快活で人と触れ合う事を好みます。牧羊犬らしく抜群の敏捷性とスピードを誇ります。
イングリッシュ・コッカー・スパニエル
イギリス生まれの中型犬で、陽気で好奇心が強く、飼い主に従順で献身的に尽くす性質を持ちます。
ブリタニー・スパニエル
フランス生まれの中型犬で、友好的で優しい性格で、好奇心が旺盛で、人間の指示には敏感に反応します
パピヨン
フランス生まれの小型犬で、穏やかで人懐こく、遊び好きな性格です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
イギリス生まれの中型犬で、胴長短足で飼い主に忠実でとても社交的な性格をしています。頭がよく、物覚えが良い犬種です。
エアデール・テリア
イギリス生まれの大型犬でテリアの王様とも呼ばれる犬種で、好奇心旺盛で大胆で、知的で従順な性格をしています。
ミニチュア・シュナウザー
ドイツ生まれの小型犬で、好奇心旺盛で勇敢で愛情深い性格です。
コーイケルホンディエ
オランダ生まれの小型犬で、陽気で気立てが良く、友好的で環境順応性が高い性格をしています。日本国内でこれだけの純血犬種の災害救助犬が活躍していますが、これらの犬種以外にもミックス犬やJKCに登録されていない犬種の災害救助犬も存在しています。
災害救助犬に向いている犬種
災害救助犬には多くの犬種がなりますが、犬種が決まっているわけではありません。犬種というよりもその個体が持つ性質や性格によって変わります。災害救助犬に向いている性格としては、当然ですが、人や他の動物に対しての攻撃性がない事です。
嗅覚が優れ、動作が機敏な事。犬は嗅覚が優れている動物ですが、犬種によって嗅覚に差があります。全犬種位置と呼ばれる嗅覚を持つ犬種はベルギー生まれのセントハウンドのブラッドハウンドで、犬種の中で唯一裁判での証拠として認められると呼ばれるほどの嗅覚を持ちます。
その他にも、探索をする事に強い意欲があり、集中力、忍耐力、体力、持久力が必要です。突然の物音や出来事、高い所や暗い所に怖がらない性格をしている事が災害救助犬に向いている性格といわれます。
有名な災害救助犬たち
バリー
世界で最も有名な災害救助犬といえばバリーですが、バリーはスイスのサン・ベルナール修道院で活躍していた山岳救助犬です。バリーはセント・バーナードではなく、セント・バーナードの祖先といわれるアルペン・マスティフという犬種と考えられています。
アルペン・マスティフは現在のセント・バーナードよりも小型の体型をしていました。サン・ベルナール修道院にこの犬種がやってきたのはバリーが生まれる約100年前の1700年代と考えられています。
バリーはアルプスという雪深い山岳地帯で約40人以上の人命を救った事により、世界中で知られる山岳救助犬となりました。14年という犬生の中で40人以上を救助してきたバリーですが、その中で最も有名なものは洞窟で凍死しかけていた少年を救助した事です。
バリーは少年の上に覆い被さって自身の体温で少年を温めた後に、少年を背中に乗せてサン・ベルナール修道院まで運び、少年は一命を留めました。バリーの死は救助した遭難者に狼と間違われて射殺されたという説が有名ですが、実はこれは史実ではなく、バリーは山岳救助犬を引退し、ベルンで余生を送り、14年に渡る犬生を全うしました。
バリーの功績を讃えてパリの近郊の世界初の動物霊園であるシムティエール・デ・シヤンに記念碑が建立されています。セント・バーナードとサン・ベルナール修道院との関係は今でもあり、バリーの故郷であるサン・ベルナール修道院では現在でも飼育されている犬の中に1頭はバリーという名前が受け継がれていて、2004年にはバリー財団が設立され、サン・ベルナール修道院が中心となって繁殖されるセント・バーナードを管理しています。
セント・バーナードの犬種名の由来は、サン・ベルナール修道院の英語読みから来ています。現在では、セント・バーナードは体重が100キロを超える事もある為に災害救助犬としては活躍の場を失い、セント・バーナードの穏やかで優しい性格でセラピードッグやコンパニオン・ドッグとして多くの人の心を癒しています。
スウォンジジャック
水難救助犬として有名なスウォンジジャックは、1930年にイギリスのウェールズ南部にあるスウォンジという都市にウィリアム・トーマスと共に暮らしていました。
外見は現在のフラットコーテッド・レトリーバーに近く、体格はそれほど大きくなかったと伝えられています。そこまで大きくなかったジャックが水難救助犬として歴史に名を残す事ができたのはずば抜けた水泳能力を持っていたからといわれています。
その犬生で27名を救助したジャックの最初の救助は1931年に川で溺れていた12歳の少年を救助し、岸まで運んだ事ですが、このことは話題に上がる事はありませんでした。
今度は数週間後に衆人環視の中で溺れていた人を救助した事から一躍ヒーローになりました。ジャックの活躍は大々的に報道されて、地元の市議会から栄誉の証であるシルバーカラーを授与されました。
その後も活躍は続き、1936年にはLondon Star誌によって最も勇敢な犬に選ばれています。動物福祉向上を目指す動物愛護団体である現在のDogs Trustから2つのブロンズメダルを核とした犬は未だにジャックだけです。
大活躍してきたジャックですが、1937年に殺素材を誤飲した為にわずか7年の短い犬生を終えてしまいました。ジャックの死を悲しんだ市民は早速資金を募り、セントヘレンラグビーグラウンド近くのプロムナードに墓標を建立し、現在でも当時の姿を今に伝えています。
レイラ
2011年3月11日の東日本大震災の際に、災害救助にあたり活躍したのが、ジャーマンシェパードのレイラと、その訓練士の村田さんでした。村田さんは、阪神淡路大震災で活躍する災害救助犬を見て、訓練士になることを決め、当時生後5カ月だったレイラと共に、いつか人々を救う夢を見て、訓練士を目指したそうです。
震災翌日の3月12日早朝、救助活動を始めたレイラと村田さん。自衛隊と共に一週間もの間、岩手県大船渡の海岸を捜索し続けることになりました。
辺りは、震災で崩れた瓦礫が散乱し、損傷した遺体からは腐敗臭・・・壮絶な状況でした。そんな状況の中でも、自衛隊とレイラは必至に捜索を続けたそうです。
レイラは、生存者を捜すための訓練を受けた救助犬。人の気配があるのに気が付くたび、少し困惑した顔で村田さんの足元に戻ってきたそうです。一週間ほどすると、隊員たちも疲労の色が見え始める頃・・・レイラも体重が半分になるほど疲弊し、とても過酷な状況でした。
一人の生存者も見つからない状況、余震が続き危険な中、それでも必死にレイラは捜索を諦めませんでした。ですが、余震のストレスなのか、激しい臭いの影響なのか、ついにレイラは嗅覚を失い、救助犬を引退する事を選びました。
現在は、村田さんと一緒に後輩救助犬の訓練を見守りつつ、残りの余生をのんびり過ごしているそうです。
まとめ
犬は災害救助犬を始めとして、多くの場で人の生活を助ける仕事をして頂いていますが、人はどれほどその恩に報いてきたのでしょうか?この日本はまだまだ犬が幸せに暮らしていける環境は整っていません。
災害救助犬などが活躍する為に養成したり、環境を整えたりする事は大事ですが、少しでもそういった犬達を含めてこの日本で生活する犬達が幸せに感じて、その犬生を全うできるような環境が整うといいですね。
ユーザーのコメント
30代 女性 TIKI
やはり、嗅覚などの特製を活かして活躍しているのですが、ガレキの上を一生懸命に探す姿は「怪我がないように」と心配してしまいます。記事にある災害救助犬のバリーの活躍も感動しました。
凍死しかけた男の子を温め続けて助けたという内容に、犬の優れた本能をあらためて確認することが出来ました。
20代 女性 こなつ
その反面人間はわんちゃん達になにかきちんとしてあげれているのだろうか…
人間の理不尽な理由で殺処分などが起こっていることに怒りさえ感じますね…たくさんの人を助けてくれてありがとう。余生はゆっくり幸せなときを過ごしてほしいですね。
30代 女性 Chappy
記事を読んでいて特に印象的だったのが、東日本大震災の救助にあたったシェパードのレイラです。
人間でもあの地震は、誰もが目を背けたくなるくらい悲しい出来事でした。
女性 RORO &PIPI
40代 男性 こーいち
女性 モチ子
女性 mocmoc
犬種一覧を見ると予想通りレトリーバーが多いですが、小型犬もいることに驚きました。被災地域では足元がしっかりしていない場が多いので中型犬以降の大きさの犬種が主だと思っていました。
考えたら、上に重さをかけてはならない場所や狭い場所では小型犬の方が潜り込むことができるんですね。元々狩猟犬の血を持つ犬種は鼻や耳がとても良いので、追う対象が変わってもその能力をいかんなく発揮することができますね。
東日本大震災の時はたくさんの災害救助犬に助けられてきました。そのなかで人間だけではなく犬も計り知れないほどのストレスを抱えながら頑張ってくれていたのだと思うと、犬という存在が本当に尊いものだと思えます。
人間のために頑張ってくれる犬もいれば、人間のエゴで捨てられてしまう犬もいる、世の中の矛盾に気がついてしまう度にやりきれなさを感じます。
30代 男性 カブレラ
最近だと熊本地震で活躍した「夢之丞くん」が印象に残っています。日本の土地柄、これからも災害は起きるものだと分かっていますし、犬と人間、お互いに助け合いながら乗り越えたいものです。
女性 ゴン吉
大型犬はその重さから倒壊を進ませる可能性もあるので、捜索は中型犬までが多いそうです。
女性 もふころ
今年は特に自然災害が多い年だったので、救助犬の出動もそれだけ多かったのだろうなと思います。大きな功績をあげていることを忘れてはなりませんね。
30代 女性 匿名
犬と人間って切れない絆ですね。
うちには、家庭犬レベルのワンコが2頭。おります。
災害(夫婦喧嘩)や、鬱憤(職場ストレス)など。
すご〜くあの子たち敏感に感じ取りますね。
うちのお姉ちゃんワンコは、悲しくて泣いていると必ず傍に来て、慰める?涙が枯れるまで顔を舐めてくれます。
でも、映画で感動した〜って泣いてても、あっそう?と無視です。
同じく涙が流して泣いてるのに?なぜ?
すごいね、ちぃちゃん!!