短時間でも撫でられることが保護施設の犬にプラスの影響【研究結果】

短時間でも撫でられることが保護施設の犬にプラスの影響【研究結果】

アニマルシェルターのボランティアスタッフが保護犬を撫でるふれあいタイム、15分ほどの短い時間でもプラスの影響が確認できるという研究結果をご紹介します。

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保護犬にとって撫でられることは大きな意味がある

撫でられる茶色い犬

犬は基本的に人間が好きな生き物です。中でもアニマルシェルターで保護されている犬たちは、優しく撫でてもらった経験がなかったり、久しく撫でられていなかったりするものです。

けれど、人間から撫でられて嬉しいとか気持ちいいと犬が感じるためには、人間と犬の間に信頼や愛情がなくては意味がないのでは?という人もいるかもしれません。

ペットフードメーカーのネスレピュリナ社が、アメリカのミズーリ州のアニマルシェルターで55匹の保護犬を対象にして行ったリサーチでは、初対面のスタッフから短時間間撫でられただけでも犬にとって大きな意味があることがわかりました。

15分間の犬とのセッションから何が得られるか

女性に撫でられるジャーマンポインター

リサーチは以下の要領で行われました。
ハンドラーは犬を1匹ずつ小さい部屋に連れて行きます。
部屋にはボランティアスタッフが1人待っていて、椅子または床の上に座っています。
犬とボランティアスタッフは以前に会ったことはなく、この日が初対面同士です。

犬は部屋の中で自由に動き回ることができ、犬の方からボランティアスタッフに近づいたときにのみ犬を撫でることができます。
ボランティアは犬の撫で方について事前に指導を受けており、犬が嫌がることはしません。
また、犬が背中やお腹など特定の場所を撫でるように促してきた場合には、そこを撫でます。

各々のセッションの時間は15分間です。
研究者はセッション中の犬の行動を分析し、さらに唾液中のコルチゾールと心拍数の測定を行いました。

15分間のセッションが犬にもたらしたもの

散歩中に休憩する2匹の保護犬と2人のボランティア

55匹の犬全てのセッションが終わった時点で、研究者はセッションの結果に基づいて犬たちを3つのグループに分けました。

1.ボランティアスタッフに積極的で密接に関わった

このグループは、15分間のうち4分の3以上の時間をボランティアスタッフにアプローチすることに使い、しっかりと撫でてもらったグループです。

2.ボランティアスタッフに適度に関わった

このグループは、15分間のうち半分〜3分の2の時間をボランティアスタッフにアプローチすることに使い、適度に撫でてもらったグループです。

3.ボランティアスタッフへの関心が薄かった

このグループは、15分間のうちボランティアスタッフにアプローチした時間が半分以下で、撫でてもらった時間が短かったグループです。

セッション開始時と終了時を比較すると、3つのグループ全ての犬が心拍数が低下していました。ボランティアスタッフと密接または適度に触れ合った2つのグループの犬は、心拍変動の増加が認められました。

全体としては、犬たちがボランティアスタッフの気を引こうとする行動は少なく、セッションの終了時には横になっている犬が多かったことが観察されました。
コルチゾール値測定のための唾液が採取できたのは32匹だけでしたが、セッションの前後でレベルの差は認められませんでした。

その他、犬のボディサインなども含めて分析すると、全体として15分間の初対面の人間とのセッションが犬に有益だったことを示唆しています。

このリサーチにおいて重要なことは、初対面の人間とのセッションであることと、撫でられるか撫でられないかを選択する権利が、犬に与えられていることです。
犬を撫でることが犬にとってのメリットだとは言っても、それは犬が撫でられたいと思ったときにのみ言えることです。
撫でられたくない犬はボランティアスタッフに近寄らず、その意思が尊重されたことは注目すべき重要な点です。

まとめ

女性に前足をかける犬

アメリカのネスレピュリナ社が、アニマルシェルターの保護犬を対象に行ったリサーチをご紹介しました。
たとえ初対面の人で、15分間という短い時間でも、犬の意思が尊重され正しい方法で撫でられることは、犬にとって生理的な面と行動の両方にプラスの影響があるというものです。

今後さらに多くの研究が必要ですが、アニマルシェルターの保護犬の心のケアという意味でも、期待される分野です。

《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159118300777

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