犬のがん治療について(2) 今後期待される5つの新しいがん治療について~その1

犬のがん治療について(2) 今後期待される5つの新しいがん治療について~その1

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がんの治療法は、3大療法(外科手術、放射線療法、化学療法)が主に用いられていますが、近年新しい治療法がたくさん開発されています。これらを一つ一つ解説し、犬のがん治療においてすでに使われているもの、今後期待できるものなどを数回にわたって解説します。

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記事の提供

大学では、附属動物医療センターで内科系診療を担当しながら、犬のがんに関する研究を行なっています。自分の研究から1頭でも多くのがんの犬を救えることを目標に研究を行っています。

新しいがんの治療法

犬と獣医

前回の記事で書きましたように、犬でも人でもがんの治療法の基本は3大療法(外科手術、放射線療法、化学療法)です。しかし、これらだけでは治らないがんもたくさんあり、またより根治に近づくために、さまざまな新しいがんの治療法が開発されています。

新しいがんの治療法として、分子標的療法(低分子化合物や抗体医薬)、免疫細胞療法、がんワクチン、腫瘍溶解性ウイルス療法などがあります。

分子標的療法

がん細胞

分子標的療法とは、ある特定の分子を標的とした治療法です。つまりがん細胞だけがもっている分子を標的にした治療であれば、がん細胞以外の正常な細胞に影響を与えることなく、つまり副作用を出すことなく治療することが可能となるわけです。

抗がん剤は、がん細胞のように増殖の早い細胞をターゲットとして働くわけですが、一方毛や腸の細胞など常に体で入れ替わっているような増殖の早い正常な細胞に対しても働いてしまうため、抗がん剤の投与により毛が抜けたり、下痢したりするわけです。

しかし分子標的療法のように、がん細胞の特徴を活かして正常細胞にはなくがん細胞だけがもつような分子をうまくターゲットにできれば、副作用少なくがん細胞を攻撃することができるわけです。

こうした抗がん剤と分子標的薬の違いは、よく抗がん剤を絨毯爆撃に、分子標的薬をミサイル攻撃にたとえて話をされます(図参照)。

分子標的療法イラスト

低分子化合物

薬の開発

分子標的療法は、大きく分けて低分子化合物とよばれる分子量の比較的小さい化合物を用いて行う治療法と、抗体とよばれる分子量の大きい物質を使って行われる治療法に分かれますが、今回は、このうち低分子化合物についてもう少しお話ししたいと思います。

低分子化合物は、分子標的療法のうちの一つですから、それぞれの薬にターゲットとなる分子が存在します。それぞれのがんの種類によって特徴的なターゲットとなる分子を明らかにした上で、そうした分子の働きを抑えるような低分子化合物を開発することになります。多くのこうした化合物が開発され、医療においてはすでにかなりの種類の低分子化合物が使用されています。

古くに開発された低分子化合物にイマチニブ(グリベック®)とよばれるものがありますが、これが最初発売されたときには、それまで決して予後がよくなかった慢性骨髄性白血病の患者さんの多くが亡くならずにすむようになりました。

こうした化合物は、犬のがんに対して用いられているものは非常に少なく、どういった化合物がどういったがんに効くのかなど、分かっていないことがたくさんあります。

そのなかで犬のがんの治療のためだけに開発された低分子化合物が発売されています。トセラニブ(パラディア®)という薬です。この薬はもともと肥満細胞腫とよばれる犬で多くみられる皮膚のがんに対して開発されました。

犬の肥満細胞腫の一部の犬は、肥満細胞腫の腫瘍細胞がもつKITとよばれる蛋白質の遺伝子異常から肥満細胞腫が起こっていることがわかっており、こうした場合このトセラニブという薬は、この異常なKITの働きを抑えることで肥満細胞腫を治療することができます。したがってこのトセラニブという薬は、KITとよばれる分子に対する分子標的薬なのです。

トセラニブ自体は、それ以外にもいくつかの分子にも作用することがわかっていますので、それ以外の犬のがんにも使用されたりしますが、このように犬のために承認された初めての分子標的薬(低分子化合物)です。

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研究者紹介

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イヌの乳がん発症メカニズムを解明し、治療に貢献したい!

実施期間

  • 2018年4月18日(木)〜2018年6月28日(木)

目標金額

  • 200万円 (内訳)研究費の一部
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