老犬の尿が出ない!考えられる原因や対処方法を解説

老犬の尿が出ない!考えられる原因や対処方法を解説

老犬の尿が出ないときの対処法は、排泄機能が残っていなければ膀胱を圧迫して尿を出す「圧迫排尿」を行います。圧迫排尿は膀胱破裂の危険を伴うため獣医師の指導の上で行うことが重要です。

老犬の尿がどのくらいの時間出ていないと危険?

犬と時計

年齢に関係なく、犬にとって1日尿が出ないのは危険です。便は2日程度は様子を見ることができますが、おしっこは1日だけでも異常です。

犬のおしっこの1日あたりの回数は、個体差はあるものの
「子犬で7~10回」
「成犬で3~5回」
「老犬で5~6回」
だといわれています。

目安として12時間~24時間の間に排尿していなければすぐにでも動物病院へ連れていく必要があります。きばることで少量しかおしっこが出ていない状態でも獣医師に診てもらいましょう。

もし気づかず放置すると、膀胱炎になる可能性があります。膀胱炎は結石症などの合併症を引き起こし、腎臓に負担がかかることで腎不全や尿毒症で死亡してしまうケースがあります。

運よく命を取り留めたとしても一度機能を失った腎臓は元には戻らないため、おしっこの異常にはいち早く気づくことが重要です。

老犬の尿が出ない原因

ベッドで寝る老犬

老犬になると自力でおしっこに行けず粗相をすることが増えてきます。また自分でおしっこを出すこともできなくなります。「今まで失敗したこともなかったのになぜ?」と疑問に思う飼い主さんは多いのではないでしょうか。

老犬でおしっこの粗相などがなぜ起きるのか、考えられる原因は4つあります。

  • トイレの場所まで行けない
  • 排泄の姿勢が取れない
  • 筋力が落ちて尿や便を出せない
  • 病気

脚力が落ちて決まった場所まで行けない

脚力が落ちてトイレの場所まで行けないことで粗相をするケースがあります。若くて足腰が強く健康な頃にはトイレまで我慢することができ、排泄をコントロールすることができます。

しかし年を取ることで膀胱の機能の低下に伴い、我慢や排泄コントロールが難しくなってしまいます。おしっこをしたのに出し切れておらず、尿漏れや頻尿になることもあります。

おしっこに間に合わないような場合には、愛犬の行動範囲のトイレの数を増やしてあげましょう。おしっこをしようと思った時に近くにトイレがあれば失敗することも減ります。

また屋外でしか排泄をしないのであれば外に出す回数を増やしてあげましょう。朝と夕方の散歩でおしっこをしてたとしても昼間にも出してあげるなど、排泄のタイミングを増やしてあげることで粗相がなくなります。

筋力が落ちて排泄の態勢がとれない

成犬のころには行っていた排泄のポーズが老犬になって筋力が落ちたことから取れなくなり、粗相などの排泄トラブルになることがあります。

「おしっこや便をした後に後ろ足が震える」
「おしっこや便できばる時の体制が辛そう」

などが見られたら、飼い主さんの手助けが必要だと考えられます。

【排泄の手助けをする方法】
 お腹の下に腕を入れる
 腰周辺を支えてあげる

ほかにも、タオルなどをお腹の下にくぐらせる方法も有効です。また介護用ハーネスなど犬用の介護グッズを利用するのもいいでしょう。

排泄する筋力が落ちて尿や便を外に出せない

排泄する筋力が落ちてしまい、おしっこやうんちができなくなるケースです。老化で寝たきりになると、尿が出ない老犬が多くなります。

排泄する筋力が落ちても排泄する機能は残っていることがあります。外部的な刺激を与えて排泄を促してあげましょう。

散歩で排泄をしていた子であれば、抱っこでもいいので外に連れ出してあげます。外の空気を感じることで排泄機能が働く可能性があります。

「立てないから」「歩けないから」と室内に寝たきりにさせず、時々一緒に外出をして刺激を与えることが重要です。

病気の可能性がある

老犬がおしっこをしない原因として主に2つの病気が考えられます。

  • 尿路結石
  • 前立腺肥大

【尿路結石】
尿管や尿道などの「尿路」に結石が詰まっておしっこが出なくなります。結石ができるのは主に食事が原因です。

【前立腺肥大症】
前立腺肥大症は中高齢で未去勢のオス犬に多いといわれています。加齢により精巣から分泌されるホルモンの分泌異常が原因で前立腺が肥大します。

前立腺が肥大することにより尿道や腸が圧迫されておしっこやうんちが出にくくなります。

老犬の尿が出ない時の対処方法

介助される老犬

老犬の尿が出ないときは排尿機能がある場合とない場合で対処法が違います。排尿機能がある場合には「排尿を促す」行為を、機能がない場合には「人の手で排出させる」行為が必要です。

ただし自分一人でなんとかしようとせず、難しいようなら動物病院で処置を行ってもらいましょう。家族と交代で協力して介護することも大切です。

老犬に排泄機能がある場合

排泄機能が働いている場合には飼い主さんの手助けで尿が出るケースが多くあります。

  • 排泄態勢を支えてあげる

排泄のポーズが愛犬だけでは難しくなってきたようなら、後ろ足を支えるようなサポートを行いましょう。小型犬や中型犬は前方から、大型犬は後方から行うと安定します。

【オスのおしっこの場合】
太ももの内側に手を入れて両足を支える感じでサポートします。

【メスのおしっこやうんちの場合】
腰のあたりの足の付け根部分を左右両方から支えます。とくにうんちの時には踏ん張れる体制が取れるようにサポートしましょう。

愛犬を手助けするためには排泄のタイミングを知っておくことが重要です。忘れないように日誌形式で尿と便の色や形・量などを記述しておくと、タイミングだけでなく健康状態もわかるのでおすすめです。

  • 膀胱を刺激する

マッサージを行って膀胱を刺激してあげるとおしっこが出やすくなります。

肋骨から股関節辺りまでを、手のひらを使って円を描くようにやさしくマッサージします。オスは性器の周りをマッサージしてあげるといいでしょう。

老犬に排泄機能がない場合

老犬に排泄機能がない場合には自力で出すということができません。そのため人の手で出してあげるという行為が必要です。

排出させるためには膀胱を押して尿を出します。この方法は独自で判断せず獣医師に指導を受けましょう。何らかの原因で尿道につながる管などが閉まっていると膀胱が破裂する恐れがあります。

また力加減によっては尿が腎臓に逆流して腎盂炎などになるリスクもあるため、獣医師の診断と指導の上で行うことが重要です。

  • 尿は膀胱を圧迫する

膀胱を押して尿を排出させる方法を「圧迫排尿」といいます。メスは尿道口の上あたり、オスは尿道口の下あたりにある膀胱を押しつぶすようにして尿を出します。その際メスは尿道が短く尿が出やすいのですが、オスは出にくいことがあります。

尿道が曲がっていると出にくくなるので、オスの場合にはみぞおちやへその方へ押し上げるように圧迫しましょう。尿道が引っ張られてまっすぐになるため出やすくなります。

先述していますがこの方法は膀胱破裂などのリスクを伴うため、必ず獣医師の指導の上で行ってください。

  • カテーテルを入れる

尿道にカテーテルを入れておしっこを出す方法です。膀胱とつながっているため圧迫は必要ありませんが、痛みや菌が尿道口から侵入して膀胱炎になるリスクを伴います。

動物病院や症状によっては自宅で飼い主さんがカテーテルを入れるケースもあります。

ただし
「プードルやチワワなどの超小型犬」
「肥満の犬」
「メス」
は尿道口の確認がしづらいため入れにくいといわれています。

  • 便は押し出す

便はお腹をマッサージした後押し出してあげます。

①お腹の上の方から肛門方向に向かって便を下ろすようにマッサージする
②便が下りてくると肛門がぷっくりとふくれる
③尻尾を持ち上げて肛門をつまんで優しく便を押し出す

状況によっては動物病院で診てもらう

状況によっては動物病院で診てもらうことが必要です。自己判断での圧迫排尿が逆効果になる場合もあります。

膀胱の出口が閉じていて排尿の邪魔をするようであれば、膀胱が破裂しないよう膀胱の収縮を促したり膀胱の出口を広げる内服薬を処方されることもあります。そのため尿が出ない原因を調べてもらうことも大切です。

また急性腎不全で尿が出なくなり毒素が排出されず尿毒症になってしまうと、すぐにでも毒素を排出する処置が必要になってきます。

くわえて便が固くなると出しにくくなると下剤などを処方してもらって出しやすくする方法もあるため、状況によっては動物病院の診察が重要なことが分かります。

老犬の排泄を介助する際の注意点

トイレシートの上で寝る老犬

ここまでは排泄の補助や圧迫排泄など、老犬の排泄の介助方法を解説しました。

これらの介助をするにあたって注意する点が3つあります。

  • 尿をすべて出し切る
  • 膀胱が破裂するリスクがある
  • 排泄の介助は獣医師に習う

膀胱と尿道内に残っている尿を全て出し切る

膀胱を圧迫して排尿を行う際、膀胱と尿道内に残っている尿は全て出し切るようにしましょう。尿が残ったままだと細菌が増殖して膀胱炎の原因となります。

膀胱の尿をしっかり出し切るためには、むやみやたらに力を入れればいいというわけではありません。力加減によっては愛犬に負担がかかるだけでなく、逆効果になる恐れもあります。

愛犬に無理のない加減で行いましょう。そのうえで尿をしっかり出し切ることが重要です。

膀胱を強く圧迫してしまうと破裂のリスクがある

膀胱を圧迫する力が強かったり尿が排出されず力づくで圧迫してしまうと、膀胱が破裂することがあります。

膀胱が破裂してしまうと尿がお腹の中に漏れてしまい、一部や全体が炎症をおこします。その状態を「腹膜炎」といい、緊急に処置を行わないと死に至る恐ろしい病気です。

このことから膀胱が尿でいっぱいだったり尿が出づらいようであれば、独自で圧迫排尿を行わずに動物病院で処置をしてもらいましょう。

排泄を介助するには獣医に必ず習う

排泄の介助をするには獣医師の指導の下で行うようにしましょう。圧迫排尿・排便の正しい方法や力加減などを知ることができます。

また便が固くなり出にくいようなら下剤や浣腸で柔らかくすることもできるため、愛犬と飼い主さんの負担が軽減されます。

圧迫排尿が難しいようなら尿カテーテルでの排尿方法もあります。女の子は尿道を見つけにくいため自宅でのカテーテルが厳しいのであれば病院で入れ替えることも可能です。必ず獣医師に指導してもらい、独自の判断で圧迫排尿や排便をしないようにしましょう。

まとめ

トイレで寝る老犬

今回は老犬の尿が出ない原因と対処方法をご紹介しました。

老犬の尿が出ない原因として

  • 脚力が落ちて決まった場所まで行けない
  • 筋力が落ちて排泄の態勢がとれない
  • 排泄する筋力が落ちて尿や便を外に出せない
  • 病気の可能性がある

があげられます。

対処法には排泄機能がある場合とない場合で違いがあり、排泄補助や圧迫排泄があります。特に圧迫排泄は加減を間違えると膀胱が破裂する危険性があるため、必ず獣医師の指導の上で行うようにしましょう。

愛犬の介護は大変ですが、家族と協力して獣医師と相談しながら愛犬にも飼い主さんにも負担の少ない方法で行いましょう。

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