犬の寄生虫について ~感染したときの症状や対処法~

犬の寄生虫について ~感染したときの症状や対処法~

寄生虫による病気や症状は様々なものがあり、中には命に関わる危険な寄生虫も存在します。そんな寄生虫から愛犬を守るには正しい知識をつけることが大切です。ここでは犬にとって危険な寄生虫について説明致します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

犬の寄生虫「フィラリア」

フィラリア

フィラリアの成虫は体長約20〜30cmの白く長い素麺のような寄生虫です。フィラリアの子虫(ミクロフィラリア)は体長約0.25〜0.3mmです。
蚊を介して犬の心臓や肺動脈に寄生します。心臓や肺、肝臓、腎臓に障害をもたらします。発症すると死亡する恐れのある怖い寄生虫です。

フィラリアの感染経路

フィラリアにすでに感染している犬の血液を蚊が吸うときに感染犬の血液中に漂っているミクロフィラリアを血液と一緒に吸い、蚊の体内にミクロフィラリアが入ります。
蚊が次の犬の吸血を行う際、その傷口から犬の体内にミクロフィラリアが入り感染が成立します。
犬の体内に入ったミクロフィラリアは約3〜4ヶ月間、筋肉や皮下組織で脱皮を繰り返し3~11cm程の体長に成長します。
そして血管に侵入して心臓や肺動脈に寄生します。ここまでに約半年はかかると言われています。
その後、成虫のフィラリアは新しいミクロフィラリアを産み、また別の犬へと感染していきます。
様々な症状が出るまでは通常数年かかり、その進行の早さは寄生しているフィラリアの数と犬の大きさによって違います。

フィラリアの症状

成虫のフィラリアは、長い時間をかけて身体を傷付けていくために様々な症状が出ます。

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 痩せてくる
  • 貧血
  • 咳が出る
  • 散歩などの運動を嫌がる
  • 腹水がたまる
  • 血尿が出る

「心不全」「肝硬変」「腎不全」などの様々な臓器不全を引き起こすと、治療を行っても死亡することが多いです。

フィラリアの治療法

フィラリアに感染した場合の治療法は主に3つあります。
1つ目は、手術によって成虫を取り出す方法です。全身麻酔をかけ血管内に管を挿入しフィラリアの成虫を摘み出します。しかしフィラリアに感染した犬の身体はダメージを受けているため全身麻酔のリスクやフィラリアによって傷付けられた血管はもろくなっていますので大変危険な手術です。

2つ目は、薬を使って寄生しているフィラリアを弱らせ駆虫する方法です。比較的、体力のある犬に行います。フィラリアがこれ以上増えないように、悪さをしないようにすることが目的ですが、薬剤によって死んだフィラリアが血管に詰まるリスクがあります。急性の血流不全を起こさないように投薬後は安静にします。

3つ目は、犬が上記の2つの治療を行えないと判断された場合は対症療法になります。咳が酷く苦しい場合は気管支拡張剤を与え楽にしたり、腹水が溜まっている場合は利尿剤を使うなど、症状に合わせて苦痛を取り除く治療になります。

フィラリアの予防法

フィラリアの感染を防ぐにはフィラリア予防薬を投与することです。
蚊の吸血によって犬の体内に侵入したミクロフィラリアが血管内に侵入する前に駆虫すれば感染を防ぐことが出来ます。
予防期間は地域によって異なりますが、基本的に蚊が出始める5月頃から蚊がいなくなる11〜12月頃まで予防が必要です。
予防薬は様々なタイプがあります。基本的には1ヶ月に1回お薬を使うかたちになりますが、飲ませるタイプのものや、液体を皮膚に滴下するスポットオンタイプ、さらには注射によって6ヶ月〜1年予防が持続するタイプなどあります。

犬の寄生虫「マダニ」

マダニ

マダニとは屋外に生息している大型のダニで、室内の絨毯などにいるダニとは異なります。マダニは犬や人に寄生し吸血することで栄養を得ています。

マダニの感染経路

主に暖かい季節の春から秋にかけて、木や草が多い茂った場所を歩いた際に寄生します。マダニは犬や人間が発する二酸化炭素、体温などを感知することが出来ます。葉っぱの裏や草むらに隠れて犬や人間が来るのをじっと待ち構えています。

マダニの症状

  • 吸血された傷口の痛み
  • 貧血(大量寄生の場合)

マダニが媒介する病気

マダニは吸血するだけでなく様々な病気を伝播します。重篤になると死亡する場合もあります。

  • バベシア症
  • ライム病
  • Q熱
  • エールリヒア症

寄生したマダニの駆虫法

マダニが寄生してしまった場合は、マダニを駆虫する薬剤を投与し退治します。

寄生しているマダニを潰してしまうと、マダニの体内にある病原体から感染症を起こしてしまう可能性がありますので、潰してはいけません。
またマダニの口先はギザギザで鋭くなっており一度吸血のために皮膚に喰いつくとなかなか離れません。喰いついている状態で引っ張ると胴体だけがちぎれてギザギザの口先は皮下に残ったままになりますので、引っ張ってはいけません。

マダニの予防法

屋外に出る犬は、月に1回マダニの予防薬を使用します。マダニの予防薬は様々なタイプのものがあり、液体を皮膚に滴下するタイプや、錠剤を飲むタイプなどあります。さらには、3か月間効くタイプのものも発売されています。

犬の寄生虫「コクシジウム」

コクシジウムに感染した犬

コクシジウムは、イソスポラというコクシジウム類に属する原虫です。主に幼犬に感染しやすい傾向にあります。

コクシジウムの感染経路

コクシジウムに感染した犬の糞便にはたくさんのコクシジウムが含まれており、何らかの形で犬の口に入ることで感染します。
コクシジウムは抵抗性が強く、適度な温度と湿度があれば1年以上生存して感染の機会を伺っています。

コクシジウムの症状

コクシジウムは小腸粘膜で分裂増殖し、その部位の細胞を破壊します。それに伴い様々な症状が現れます。

  • 食欲の低下
  • 水溶性の下痢
  • 粘液の混ざった下痢
  • 血便
  • 消化不良
  • 貧血
  • 衰弱
  • 成長不良(子犬)
  • 脱水

子犬は症状が重い場合、命に関わります。
成犬では軟便程度でその他目立った症状が出ないこともあります。

コクシジウムの治療法

コクシジウムの治療には抗コクシジウム剤を飲ませます。数週間飲ませたら、糞便検査を行い駆虫出来たかを確認していきます。
またコクシジウムが寄生したことによる体調不良の対処療法も並行して行います。

コクシジウムの予防法

コクシジウムの予防法は、感染した犬の排泄した糞便を口にしないことです。コクシジウムの感染力は強いため糞便を直接口にしなくても、地面にあるコクシジウムがいる場所を散歩し、足の裏を舐めたことでも感染する可能性があります。屋外に出歩いたら犬の足裏をよく洗い感染を防ぎます。
またコクシジウムは糞便と一緒に排泄されてもすぐには2〜3日間は感染力はありません。糞便は放置せずにすぐに片付けることで、新たな感染する機会を減らすことが出来ます。
コクシジウムは通常の消毒剤では死滅しないため便で汚れた毛布やベットは熱湯消毒しましょう。

犬の寄生虫「瓜実条虫」

寝ているゴールデンレトリバー

瓜実条虫は多数の片節からなり、寄生した犬が消化した食物の栄養を吸収しています。

瓜実条虫の感染経路

瓜実条虫の感染にはノミが関わっています。瓜実条虫の幼虫が寄生しているノミを毛づくろいなどで犬が口にすることで感染します。

瓜実条虫の症状

通常無症状のことが多いですが、大量寄生した場合は出血性腸炎になり、激しい下痢や体重減少などを起こすことがあります。
また瓜実条虫の片節が離脱して肛門から出るときに、肛門に痒みを伴うため、お尻を地面に擦り付けたり気にしたりする様子が見られます。

瓜実条虫の治療法

瓜実条虫を駆虫するための薬を投薬します。
それと合わせて犬にノミが寄生している場合は並行してノミの駆虫も行います。

瓜実条虫の予防法

瓜実条虫の感染にはノミが関わっていますので、定期的なノミの駆虫または予防薬を与えます。ノミの予防薬は、月に1回皮膚に滴下するスポットオンタイプや、飲ませる錠剤タイプなど様々あります。
また犬のベットなどにはノミの卵が付いている可能性がありますので定期的に熱湯消毒しましょう。

犬の寄生虫「犬回虫」

ゴミを漁っている犬

犬回虫は、成虫では約5〜18cmの寄生虫です。成虫は腸管腔に寄生し、犬が消化した食物を栄養源にしています。

犬回虫の感染経路

胎盤感染

犬回虫に感染している母犬から胎児の主に肝臓に移行します。

乳汁感染

犬回虫に感染している母犬の母乳から胎児に幼虫が移行します。

経口感染

犬回虫に感染している犬の糞便を何らかの形で口から摂取することで感染します。

ネズミを食べる

犬回虫の幼虫や成熟卵を摂取したネズミを犬が食べることで感染します。

犬回虫の症状

  • 元気がない
  • 幼犬に多数の犬回虫が寄生した場合は、お腹が異常に膨れる
  • 発育不良
  • 食欲がない
  • 食べ物でない物を食べる
  • 痩せてくる
  • 貧血
  • 下痢
  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 毛艶が悪くなる

などがありますが、症状が一切現れない場合もあります。

犬回虫の治療法

犬回虫の駆虫薬を与えます。数週間投薬したら、糞便検査を行い駆虫出来たかを確認します。また症状があるようであるば駆虫と並行して対処療法を行います。

犬回虫の予防法

母犬からの母子感染の場合は、子犬の駆虫をおこない、母犬の駆虫も行うことが望ましい。
またネズミをいたずらして食べたりしないよう気を付け、散歩から帰ってきたら犬の足をよく洗うことも予防に繋がります。

まとめ

病気にかかっている犬

今回紹介した危険な寄生虫はほんの一例で、まだまだたくさんの危険な寄生虫があります。寄生のリスクを少なくするには定期的な糞便検査や予防薬を投薬することです。そして散歩から帰ってきたら足裏を綺麗に洗うなど衛生面の対策もしっかり行い、愛犬を危険な寄生虫から守りましょう。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 RYUCH

    どれも聞いたことのある寄生虫ばかりですが、特に身近というか気になるのはやはりフィラリアとマダニですね。実家で昔飼っていた犬はフィラリアで亡くなりました。当時は当たり前でしたが外飼いで、予防薬もきちんと浸透していたのかよくわかりません。一度フィラリアになったら治らないという時代で、ただただ悪化していくのを薬で緩和しつつも見ていることしかできませんでした。今飼っている子はなぜかわかりませんが一度フィラリアに感染したことがあります。予防薬は毎月飲ませていたのですが、飲んでいない期間にたまたま蚊にであったのか飲ませたつもりが吐き出したりしていたのか。どちらにせよ初期ということもあり、薬で2年ほどで完治しました。それからはフィラリアにはとても神経質になってしまうというか、薬もしっかり飲みこむまで観察して駆除を怠らないようにしています。
  • 投稿者

    40代 女性 かえで

     実家で飼っているわんちゃんは、保護犬でたまたま、家に来たときにはすでに、フィラリアにかかっていました。
    痩せていましたし、食欲もあまりなかったのですが、家に慣れてないからかな。と勘違いをしていました!
    おかしいと思い診察を受け、フィラリアが原因だとわかり、すぐに外科手術をしていただき、ことなきをえましたが、その後も内服薬治療をしています。
    いまはやっと落ち着いていますが、かわいそうでした!
     私がいま飼っているわんちゃんは、飼い始めた子犬の時に、うんちから回虫が出てきて、すぐに獣医さんに診ていただきまして、駆虫していただきました。しばらくお薬を飲ませました。なんだか、痩せてくるし食欲も少なくなり下痢をするようになった矢先だったので、原因がわかってよかったです。
     気になることがあれば、すぐに獣医さんに診ていただくことが大切ですね。病気の早期発見にもなりますね。
    かえでの投稿画像
  • 投稿者

    10代 女性 ぽちまる

    我が家もフィラリアとマダニには特に気を付けています。フィラリア対策で我が家は月に一度、ビーフジャーキーのようなものを与えるタイプにしています。月に一回なので忘れないようによく使うカレンダーにしるしをつけておいたり、与えた日を忘れないように与えた後にカレンダーにシールを貼るようにしています。動物病院の先生から最初はしっかりと与えている人が多いけど終わり頃の11月になると忘れる人が多く、更に意外と11月頃の方が蚊が飛んでいるそうです!なので忘れないようにカレンダーを利用するのもオススメです。マダニは人間の私達にも害のある寄生虫なのでマダニの住処を作らないように布団等は乾燥機にかけ掃除機で吸うなどとケアする様にしています。ペットと暮らすにも気を付けなければならないことが多いですがしっかりと対策したいですね。
  • 投稿者

    女性 豆乳

    よくうんちからニョロニョロしているのを見つけたなんて話を聞きますが、今のところそのようなことはありません。でも想像すると悲鳴ものです、そんな事態になったら驚いてしまってきちんと対処できるか不安です。
  • 投稿者

    40代 女性 さくらママ

    子犬の口からくるくるマカロニのような回虫が5匹も出て来ました。
    うんちに混じって出てくるのではないの?
    口から出てくるってどういう事????
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