【獣医師執筆】犬の肝硬変|原因や症状から治療法まで解説

【獣医師執筆】犬の肝硬変|原因や症状から治療法まで解説

肝硬変は、長期間にわたる慢性の肝障害が進行した結果、肝臓の組織全体が線維化し、正常な機能を持つ肝細胞が失われてしまう不可逆的な病態です。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、肝疾患の初期段階では臨床症状が現れにくいため、進行した段階で発見されることが多々あります。ここでは、犬の肝硬変の原因、症状、治療法について解説していきます。

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記事の提供

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

犬の肝硬変の原因

敷物の上で伏せているベドリントン・テリア

肝硬変は、突発的に引き起こされるものではなく、慢性の肝疾患の終末像として現れます。主な原因としては以下のようなものが挙げられます。

慢性肝炎

ウイルス、細菌、あるいは自己免疫的な機序や遺伝的素因などにより、肝臓に持続的な炎症が生じると、肝細胞が持続的に破壊されます。この状態を慢性肝炎と呼びます。修復の過程で本来の肝組織がコラーゲンなどの線維組織に置き換わり、肝臓全体が硬く萎縮する肝硬変へと移行します。

中毒性物質および薬剤性肝障害

日常的に摂取してしまった特定の植物、カビ毒、重金属などの毒素、あるいは長期投与された一部の薬剤に対する代謝異常が、肝細胞に対して不可逆的なダメージを蓄積させることがあります。ベドリントン・テリアやラブラドール・レトリーバーなどに遺伝的に見られる銅蓄積または銅関連性慢性肝炎では、蓄積された銅が活性酸素を発生させ、長期間かけて肝組織を破壊し、肝硬変を引き起こします。

胆道系疾患の慢性化

胆管の閉塞や慢性の胆管肝炎などにより、胆汁の流れが長期にわたって滞る(胆汁うっ滞)と、胆汁酸が肝細胞や肝内胆管を障害し、二次的な線維化と肝硬変を引き起こすことがあります。

犬の肝硬変の症状

飼い主になでられながらベッドで伏せている犬

肝臓は非常に高い予備能を有しているため、肝実質の大部分が障害されるまでは目立った症状が現れませんが、肝硬変に至り肝機能不全を引き起こします。肝機能不全と門脈圧亢進症の2つの病態が複雑に関与することで様々な臨床症状が現れます。

全身状態

食欲低下、嘔吐、体重減少、筋力の低下、元気消失などがみられます。また、多飲多尿が見られることもあります。

黄疸

肝機能不全により、血液中のビリルビン濃度が上昇し、皮膚、眼の結膜、口腔内の粘膜などが黄色く染まる黄疸が認められます。

腹水の貯留

肝臓の線維化、小葉構造の異常により、門脈圧亢進症を引き起こします。さらに、肝機能不全による低アルブミン血症から、腹水が貯留するようになります。

肝性脳症

肝臓で解毒されるべきアンモニアが処理できず全身を巡ることで、高アンモニア血症を引き起こします。沈鬱、旋回運動などは見られ、重症化すると昏睡を引き起こすことがあります。

出血傾向

血液を凝固させるために必要な凝固因子が肝臓で産生されなくなるため、歯肉からの出血、皮下出血、採血後の出血などの症状が見られます。

犬の肝硬変の治療

台の上で獣医師の診察を受ける犬

慢性肝炎から肝硬変の移行期であれば、慢性肝炎の治療を行います。しかしながら、完全に線維化してしまった肝臓を元の正常な状態に戻すことはできません。そのため、肝硬変に対する治療は、対症療法、食事療法、腹水に対する治療、肝性脳症に対する治療が中心になります。

対症療法

嘔吐、食欲不振、脱水などの症状に対する対症療法を行います。また、定期的な血液検査や画像診断による病態の評価が不可欠です。

食事療法

蛋白制限食である肝疾患用療法食を与えます。赤身肉は避け、大豆などの植物性蛋白質や乳製品を与えることが推奨されています。また、銅を制限して亜鉛を与えることが推奨されています。ただし、食事やサプリメントはかかりつけの動物病院とよく相談して与えるようにしましょう。

腹水および肝性脳症に対する治療

腹水が貯留している場合には利尿薬の投与を行います。利尿薬の過剰投与は、脱水、腎障害、肝性脳症を引き起こすことがあるため注意が必要です。
肝性脳症が認められる場合には、合成糖の薬剤や抗菌薬を用いて血中アンモニア濃度のコントロールを図ります。高アンモニア血症のみで明らかな肝性脳症が認められない場合も治療を開始します。

まとめ

飼い主に顔をなでられている犬のアップ

犬の肝硬変は、慢性肝炎と比較すると予後は良くありません。しかしながら、内科療法でも一定の効果は得られるため、かかりつけの動物病院とよく相談しながら、肝硬変の治療を進めていきましょう。

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