犬のフィラリア(犬糸状虫)症
犬の飼い主さんのほとんどが『フィラリア』という言葉を耳にしたことがあると思いますが、フィラリアとは寄生虫のことで、別名は『犬糸状虫』と言い、成虫はそうめんのように細長く20~30センチほどにもなります。
このフィラリアが、犬の心臓や肺動脈に寄生する病気を『フィラリア症』、または『犬糸状虫症』と言います。犬はフィラリア症にかかると心臓、肝臓、腎臓、肺などに障害を起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
犬のフィラリア感染サイクル
犬のフィラリアは『蚊』を媒介して感染し、以下の①~⑤のサイクルをグルグルと繰り返しながら、他の犬に広まっていきます。
- ①フィラリアに感染した犬を蚊が吸血し、フィラリアの子虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に入る
- ②蚊の体内でミクロフィラリアが感染幼虫に成長する
- ③体内に感染幼虫を持った蚊が犬を吸血する際、感染幼虫が犬の体内入り成長する
- ④成長した感染幼虫は犬の心臓や肺動脈に寄生して成虫になり、ミクロフィラリアを産む
- ⑤ミクロフィラリアは血液とともに犬の全身を流れながら、蚊に吸血されるチャンスを待つ
犬のフィラリア症状と治療
犬がフィラリアに感染しても、しばらくは目立った症状が出ないため見過ごしてしまいがちです。犬に症状が出てきた時は、重症化しているというケースが少なくありません。
犬のフィラリア症の症状として、
- 咳が出る
- 元気がない
- 苦しそうな呼吸をする
- 食欲がない
- 腹水がたまる
- 血色素尿が出る
などが挙げられます。
もし犬がフィラリア症になってしまったら、
- 薬で犬のフィラリアを駆除する
- 手術で犬のフィラリアを取り除く
といった治療が病院では行われます。どちらも犬に負担をかけることになりますし、命の危険も伴います。
犬のフィラリア(犬糸状虫)で勘違いしがちな10個のこと
毎年犬にフィラリア予防をしているけれど、実はフィラリアについてあまり詳しくない、という飼い主さんも多いのではないでしょうか。犬のフィラリア感染で勘違いしがちな10個についてをご紹介します。
①室内飼いだから犬はフィラリア感染しない?
フィラリアは「蚊」を媒介して犬に感染します。ですから犬が蚊に刺されなければ感染しないということになりますが、蚊に刺されないようにするのは難しいことです。たとえ犬が室内にいても、100%蚊をシャットダウンすることは不可能ですし、犬のお散歩の時に刺されることも考えられます。ですから、室内飼いの犬であってもフィラリアに感染する可能性はあると言えます。
②フィラリア感染している犬に噛まれたらうつる?
犬のフィラリアは蚊を媒介して感染するのであって、犬から犬へ直接感染するのではありません。ですからフィラリアに感染している犬に噛まれても、うつることはありません。
③フィラリアは犬だけがかかる病気?
フィラリア症は犬だけの病気と思われがちですが、感染幼虫を持った蚊に刺されれば猫やフェレットなど、犬以外の哺乳類もかかる可能性があります。非常にまれですが、人間もフィラリア症にかかり、肺に結節を作ることがあります。
④子犬は抗体があるからフィラリアの予防をしなくて大丈夫?
子犬の抗体はフィラリアに関係ないため、子犬でも予防が必要です。生後90日からの予防薬の投薬がすすめられていますが、いつ頃から投薬をスタートするか獣医師に相談して決めると良いでしょう。
⑤蚊のシーズンは毎年同じ時期?
毎年、暦通りに暑くなったり寒くなったり気温が変動するのではなく、冷夏や暖冬であることもあるので、蚊の活動シーズンはその年によって変わります。また、地域によっても蚊が活動するシーズンは変わってきます。
蚊の活動シーズンが変われば、犬のフィラリア予防薬を投薬する期間も変わってくるので、自分が住んでいる地域の獣医師に、その年の犬のフィラリア投薬期間を確認すると良いでしょう。
⑥1ヶ月だけ投薬を忘れたけど大丈夫?
犬のフィラリア感染には、きちんと毎月1回予防薬を投薬することで確実に予防できますが、投薬期間の途中で犬に投薬を忘れると、フィラリアに感染するリスクが高まってしまいます。
蚊の多い地域や、フィラリア症の発生が多い地域で生活する犬の場合、たった1回予防薬の投薬を忘れたためにフィラリアに感染してしまうかもしれません。
その一方で、犬に1年フィラリアの投薬をしなくても感染しないことがあり、犬の生活環境によって感染リスクは異なると言えます。犬のフィラリア投薬を忘れたことに気づいたら、獣医師の指示を仰ぎましょう。
⑦何の症状もないから犬はフィラリアに感染していない?
犬はフィラリアに感染しても、すぐに症状が出るわけではなく、寄生しているフィラリアの数や寄生期間、犬の体格や健康状態によって、症状が出るまでの期間や出る症状は異なります。
一般的に、犬の寄生数が少ない場合や、フィラリア症の初期の場合は、無症状であることが多いとされています。
⑧フィラリア感染で犬が死ぬことはめったにない?
犬はフィラリアに感染したまま適切な処置を施さずに放置すると、最終的には死に至ります。
処置が遅れれば犬の心臓や肺動脈にフィラリアが寄生して、血流が悪くなり、体中に様々な障害が起きます。犬のフィラリア症状が末期になってから治療を行おうとしても、手の施しようがなくなってしまいます。
⑨フィラリアの治療は予防と同じぐらい簡単?
犬のフィラリア予防薬を、定期的に投薬するのは面倒かもしれませんが簡単なことです。しかし犬のフィラリア治療は長期に及び、費用もかかり簡単なことではありません。犬の体にも負担がかかります。
フィラリア症の治療法は、個体の症状の度合いや年齢、体力などによりそれぞれ違ってきます。手術や入院が必要になることもあれば、長期にわたる対症療法が必要になることもあります。
フィラリアの治療に比べたら、予防の方が断然簡単なことなのです。
⑩毎年予防薬をあげているから今年のフィラリア検査はいらない?
犬のフィラリア症の初期症状は、無症状であることが多く気づきにくいですが、フィラリアが犬に寄生していることに気づかないまま予防薬を投薬してしまうと、犬はアレルギー反応やショック症状を起こす可能性があり危険です。
毎年、犬のフィラリア予防薬の投薬を開始する前は、必ず犬のフィラリア寄生の有無を確認する検査を受けましょう。
まとめ
いかがでしたか?犬のフィラリア(犬糸状虫)において、勘違いしていた10個のこと、ありませんでしたか?
犬のフィラリア感染について正しい知識を深めると、フィラリア症が犬にとって、いかに恐ろしい病気であるか、そしてきちんと予防薬を投薬することが、いかに大切であるかが分かると思います。
正しい知識を持った上でしっかり予防対策を施し、フィラリア感染から犬を守ってあげることも犬への愛情のひとつではないでしょうか。
ユーザーのコメント
30代 女性 38moto
屋外よりも屋内で飼っている方が、蚊に対して蚊取り線香や蚊取りリキッドなどを活用しているので安心できると言えます。ですが家の中にいても蚊は入ってくるものですし、暑い日なら犬もお腹を出して寝てしまうことがあるので安全ではありませんね。うちのシー・ズーは、夏にはお腹をバリカンで丸刈りにするので刺されやすくなっています。
予防薬を1か月に1回飲ませることで、万が一蚊に刺されてもしっかり予防することができます。この予防薬ですが犬の体調が悪い時に飲ませると、具合が悪くなったり本来の効果を100%発揮することができなくなってしまいます。何がなんでもこの日に飲ませると決めずに、体調が悪い時は様子を見て回復してきたら数日中に投与するといいとのことです。
フィラリアの予防薬は獣医の指示のもと処方される要指示薬として薬事法で定められています。去年分の飲み残した予防薬は自己判断で飲ませずに、きちんと検査を受けて獣医師より問題がないことを確認してから飲ませた方が賢明です。
40代 男性 eda
毎月薬を飲ませることはもちろんですが、蚊の多い季節に散歩に出る際には、人間だけでなく、犬への虫よけスプレーも欠かしません。虫よけスプレーは、人間用だと犬には有害な成分が含まれる場合がありますので、ペット用のものを使用しています。
また、うちでは毎年春先にフィラリアとノミ・ダニ予防薬をもらいに動物病院へ行くのですが、フィラリアの感染を調べる血液検査と合わせて健康診断もしてもらいます。1度の血液検査で一緒にやってもらえるため、料金も少しお得になります。また年1度の健康診断を忘れないための良いタイミングだと思っています。
40代 女性 ナツ
また、お薬は1ヶ月おきに飲ませるので、うっかり1ヶ月後に飲ませるのを忘れてしまったという場合があるかもしれません。万が一、すでに蚊に刺されて感染していたとしても、すぐにお薬を再開することで成虫になる前に駆除ができるようですので、飲み忘れに気が付いたらすぐに薬を飲ませる方が良いそうです。
女性 ぶんぶん
50代以上 女性 あけたん
女性 SUSU
フィラリアの予防薬は、今ではわりと当たり前の情報だと思っていたのですが、未だにかかるワンコが多いのも事実のようですね。
ミニチュアピンシャーと暮らしている友人にフィラリア予防薬は何を使っている?と聞いたことがあるのですが、「ピンシャーは毛が密集していて蚊に刺されないから大丈夫なの。あげたことがないよ。」と答えが返ってきた時は本当に驚いてしまいました。毛の種類は関係ないこと、庭で遊ぶことが多いワンコであるため、絶対に予防した方が良いと伝えましたが、分かってくれたのかどうか未だに分かりません。
なお、予防薬は原則、月に1回とされていますが、ワンコの体調によっては無理してあげる必要はないようです。お腹を壊している時、何か他の病気を抱えている時などは獣医さんに相談してずらすことも一案だと思います。愛犬がお腹を壊した際は、獣医さんと相談をして1週間ずらしたことがあります。予防薬とは駆虫薬であり、フィラリアにかかった犬の血を吸った蚊がフィラリアの幼虫を運び他の犬の血を吸うことで感染してしまう仕組みです。薬を飲んでいるとフィラリアにかからないのではなく、かかっていようがいまいが、月に1回、強制的に駆除しているということになります。そのため、多少投薬が遅れても幼虫が成長する前であれば駆除は可能のようです。体調が悪い日に飲むと悪化する場合もあります。
この日に飲ませなければとあまり神経質にならずに、愛犬の体調を見て投薬日を決めるといいのかなと思います。
なお、最近ではシーズンの開始時期に注射をすることでワンシーズン効果があるというフィラリアの予防注射もあるようです。一度で済むため飼い主さんには人気があるそうで私も薦められたのですが、1回の注射でワンシーズン効果がある仕組みが今一理解出来なかったのと、愛犬もシニア期に入り身体にかかる負担も考え今回は見送りました。
1錠でノミマダニ駆除薬とフィラリア駆除が同時に出来るタイプのものもあります。
ワンコそれぞれの体質や年齢、生活環境に合わせて薬を選んでいくしかないのかなと思っています。
男性 匿名
50代以上 男性 匿名
説明不足です。
フィラリアの薬は厳密には予防薬ではなく駆虫薬です。それもL3,L4幼虫を駆除する薬です。蚊から犬へはL3で感染し、これがフィラリア薬では殺せないL5(未成熟成虫)に成長するのに60-70日前後かかるとされています。ですから1か月だけ投薬を忘れた場合なら(投薬のインターバルは60日なので)、可能性的には駆除できている可能性が高いです(そもそも、前回の投与日の翌日にフィラリアに感染していたと言う最悪ケースを想定した場合なので、その可能性自体低いですが)。ただ虫の個体差で早めにL5になる個体もいるかもしれませんので、忘れている事に気が付いたならば直ぐに投薬するべきです。インターバルが40日とかならば確実でしょう。
>>⑩毎年予防薬をあげているから今年のフィラリア検査はいらない?
に関しても明らかに説明不足です。
昨年度、本当にきちんと投薬していたのならば(犬の吐き出し等も含めて)、今シーズンの投薬前にフィラリア検査をしても陽性は絶対に出ません。例えば昨年12月頭に最終投薬をして今年の5月頭に検査をした場合を想定すると、その最終投薬直後に感染があったとしても、期間は5か月なのでフィラリア原虫は成虫になっておらず検査には出ないからです。
フィラリアの検査は冬の投薬中断期間の感染の有無を見るのではなく、昨年度きちんと投薬していたかを見ています。つまりは飼い主を疑っているわけです。言い方は悪いですが、「あなたはきちんと投薬していたと言っていますが、本当ですか?忘れていませんでしたか?犬が吐き出したのに気が付いていないのではありませんか?」と言っているわけです。