【獣医師監修】犬のニキビとは?原因や症状、治療法から家での予防法まで徹底解説

【獣医師監修】犬のニキビとは?原因や症状、治療法から家での予防法まで徹底解説

犬のニキビはあごだけじゃない!背中や指の間にできるブツブツもニキビかもしれません。この記事では、犬のニキビの原因、症状、動物病院での治療法から家庭でできる予防策まで詳しく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

犬のニキビとは?

皮膚をチェックされている犬

愛犬のあごや口の周りにできる赤いブツブツは、通称「犬のニキビ」と呼ばれます。医学的にはざ瘡(ざそう)と呼ばれる皮膚疾患です。

毛穴に皮脂や角質が詰まり、細菌感染が加わって炎症を起こした状態を指します。

症状は顔周りだけでなく、背中、腹部、手や足の指の間、脇の下、鼠径部など、体の様々な場所に現れることがあります。

人間のニキビとの違い

なお、犬のニキビは、細菌が原因で皮膚に膿がたまる「膿皮症(のうひしょう)」の一種です。

膿皮症は、皮膚にもともと存在するブドウ球菌などの常在菌が、何らかの理由で異常増殖することで発症します。

人間の思春期にできるニキビとは原因が異なる場合が多く、皮膚の病気として捉え、治療や予防を行う事が重要です。

犬のニキビの原因

悲しそうな表情で床に伏せている犬

犬のニキビは、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発症することがほとんどです。

細菌の感染・増殖

皮膚のバリア機能が低下した際に、ブドウ球菌などの細菌が毛穴で増殖することがあります。その後、細菌の増殖が原因で炎症に繋がりニキビになることがあります。

ニキビダニ症

健康な犬の毛穴にも「ニキビダニ(毛包虫やデモデックスとも呼ばれます)」という外部寄生虫が存在します。免疫力の低下などをきっかけに異常増殖し、皮膚炎を引き起こすこともあります。

アレルギーの影響

食物アレルギーや、花粉・ハウスダストなどが原因の犬アトピー性皮膚炎によって皮膚にかゆみや炎症が起きると、皮膚のバリア機能が低下します。その結果、細菌が侵入しやすくなり、二次的にニキビのような症状(二次性膿皮症)が現れることがあります。

環境の変化によるストレス

引っ越しや長時間の留守番、家族構成の変化といったストレスは、犬の免疫機能を低下させる可能性があります。免疫力が落ちると、皮膚の常在菌に対する抵抗力も弱まり、ニキビをはじめとする皮膚トラブルが起こりやすくなります。

口の周りが不衛生

フードの油分や食べかすが口周りに付着したままになったり、不衛生な食器を使い続けたりすることも原因の一つです。特にプラスチック製の食器は、微細な傷に細菌が繁殖しやすく、アレルギー反応(接触性皮膚炎)を引き起こす可能性も指摘されています。

外傷がニキビに発展することも

地面に顔をこすりつけたり、硬いおもちゃをかじったりする行動は、あごや口周りに微細な傷を作ることがあります。この小さな傷から細菌が侵入し、感染と炎症を引き起こす原因となります。

シワのある犬種・遺伝的な要素

フレンチブルドッグやパグ、ボクサーといった短頭種は、顔のシワが蒸れやすく、細菌が繁殖しやすい環境のため、ニキビができやすい犬種として知られています。その他、ドーベルマンやグレート・デーンなど特定の犬種でも好発傾向が見られます。

また、ニキビのできやすさには、遺伝的な素因が関わっていると考えられています。特定の血統でニキビが頻繁に見られる場合、その体質を受け継いでいる可能性があります。

ホルモンバランスの変化(子犬の時期)

特に1歳(生後12ヶ月齢)未満の子犬は、皮膚の免疫システムがまだ完全に発達していないため、ニキビを発症しやすい傾向にあります。成長に伴うホルモンバランスの変化も、皮脂の分泌に影響を与え、発症の一因と考えられています。

犬のニキビの症状

顎の下を後ろ足で搔いている犬

症状の進行度によって、見られる様子は異なります。

初期の症状

発症の初期段階では、あごや唇、口角周辺に、人間のニキビのような小さな赤い発疹(丘疹:きゅうしん)が見られます。また、毛穴に皮脂や角質が詰まった、黒い点々(面皰:めんぽう)として現れることもあります。この段階では、犬自身が気にしていないことも少なくありません。

進行した場合の症状

炎症が進行すると、発疹の中心に膿が溜まったおでき(膿疱:のうほう)へと変化します。さらに症状が悪化すると、複数の膿疱が融合して硬く腫れあがったり、かゆみや痛みを伴ったりします。

犬が患部を気にして掻いたりこすりつけたりすることで、出血や脱毛、色素沈着を引き起こし、さらなる細菌感染を招く悪循環に陥ることもあります。

犬のニキビの治療方法

シャンプーをされている犬

犬のニキビが疑われる場合、自己判断での対処は症状を悪化させる危険があるため、まずは動物病院を受診することが重要です。

薬用シャンプーによる洗浄

治療の基本は、患部を清潔に保つことです。獣医師の指示のもと、殺菌成分(クロルヘキシジンなど)を含む薬用シャンプーを使い、原因となっている細菌を洗い流します。皮膚を傷つけないよう、優しく洗浄することが大切です。

外用薬(塗り薬)

症状が軽度な場合や局所的な場合には、抗生物質や抗菌剤を含む軟膏やクリームが処方されます。炎症が強い場合には、炎症を抑えるステロイドの塗り薬が選択されることもあります。

内服薬(飲み薬)

炎症や感染が広範囲に及んでいたり、症状が重かったりする場合には、内服の抗生物質が必要です。強いかゆみを伴う場合は、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬やステロイド、免疫抑制剤などが処方されます。ニキビダニが原因の場合は、駆虫薬の投与が行われます。

犬のニキビの予防法

ステンレスの食器をくわえている犬

ニキビの治療後、再発を防ぐためには日々のケアが非常に重要です。

口周りを清潔に保つ

食事の後は、濡らしたガーゼやペット用のウェットシートなどで、口周りに付着したフードのカスやよだれを優しく拭き取ってあげましょう。常に清潔な状態を保つことが、細菌の増殖を防ぐ第一歩です。

食器を見直す

傷がつきやすく細菌が繁殖しやすいプラスチック製の食器は避け、洗浄しやすいステンレス製や陶器製のものに変更することをお勧めします。また、食器は使用の都度きれいに洗浄し、清潔を保つことを徹底してください。

日常のストレスを軽減する

日常的に十分な運動量を確保し、愛犬とのコミュニケーションの時間を大切にすることで、ストレスを溜めさせない環境作りを心がけましょう。安定した生活は、免疫機能の維持につながります。

バランスの取れた食事を用意する

皮膚の健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。皮膚のバリア機能の維持に役立つとされる必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸など)がバランス良く配合されたフードを選ぶことも、予防の一環として有効です。

まとめ

獣医師に顔周りを診察されている子犬

犬のあごや口周りをはじめ、体中にできるニキビは、多くが「膿皮症」という細菌感染を伴う皮膚の病気です。原因は、体質や年齢、生活環境など多岐にわたります。

初期の小さなブツブツであっても、放置すると悪化し、痛みやかゆみを引き起こす可能性があります。愛犬にニキビのような症状を見つけたら、人間のニキビ薬を塗るなどの自己判断はせず、まずは動物病院で正確な診断を受けるようにしてください。

適切な治療とともに、日々の生活習慣を見直すことが、愛犬を皮膚トラブルから守るための鍵となります。

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