よくある、常同行動と強制行動
常同行動、強制行動とは
何度も何度も同じ行動を繰り返すことを『常同行動』といいます。
そして、常同行動に歯止めがかからなく、自分の意思でそれを止めることができない状態のことを『強制行動』といいます。
このような異常行動の例として、犬では自分の手足をずっと舐める、尻尾を追いかけ回すなど報告されています。
鳥類では自分の羽をむしってしまうなど、犬以外の動物でも見られます。
これらの異常行動の原因として、精神的な要因が考えられます。
環境の変化、精神的ショックによるストレス、虐待やネグレクトによる異常行動など原因は個体で多様性を示します。
尻尾を追いかけ回す行動は、見ていて微笑ましいかもしれませんが、それらの行動が異常なほど続いている、頻度が多いなどの行動が見られる場合は注意してください。
常同行動や強制行動を獣医学的な病態として、『強迫神経症』と呼びます。
では、もう少し強迫神経症について詳しく説明していきましょう。
強迫神経症の原因
犬の強迫神経症の原因は、環境の変化などによるストレス以外にも様々な要因が絡むため原因の特定は難しい場合が多いです。
個体差が大きいため、愛犬が強迫神経症を疑う症状を示した場合は、愛犬の行動を観察し、思い当たる原因について注意深く考えてください。
怪我、痛みを原因とする常同行動・強制行動
病気や怪我など犬が痛みをおぼえている場合、痛みを精神的に紛らわしたりするために舐める、毛をむしるなどの行動を持続して行うことがあります。
動物は、怪我をした時に自分の傷を舐めて治す習性があるので、怪我が治ったあとでも同じ部位を何度も舐めることがあります。
小さい空間に入れっぱなしにする
犬小屋やケージなど小さな空間に犬をずっと閉じ込めておくと自然とストレスが蓄積し、強迫神経症を疑う症状を呈する場合があります。
走り回るスペースがあるから大丈夫だ、と外で飼っている犬でも安心できるとは限りません。
愛犬の生活環境がストレスとなっていないか、行動を確認して早期発見につなげましょう。
分離不安
最近は、飼い主とわんちゃんがべったりという関係が多くなりました。
ドッグカフェやペットと泊まれる温泉宿など犬同伴可能な施設が増え、出かけるときは愛犬も一緒という方は増えてきたのではないでしょうか。
飼い主と愛犬の中が深まり、これは一見良い関係に見えますが、飼い主が離れると分離不安を示す犬も増えてきています。
愛犬が病気をしてしまい動物病院に入院する、海外旅行に行くためペットホテルに預けるなど、愛犬と別々にならざるを得ない状況に出くわした場合、わんちゃんは過剰なストレスを覚えます。
犬の強迫神経症の症状と対処法
強迫神経症の犬に見られる症状
しっぽをひたすら追いかけ回す行動以外にも、強迫神経症の犬では様々な行動が見られます。
その中で、よく見られる強迫神経症の症状をいくつか紹介します。
ただ、個体差があるこの病気は、以下の症状以外にも見られる行動がありますので、日頃から愛犬の行動を注意深く観察しましょう。
- 自分の体を噛んだり舐めたりする(自傷行為の一つ)
- 自分の毛をむしってしまう(口が届く腹部、前肢、しっぽが多い)
- 同じ場所を何度も行き来する
- 特に理由がないのに吠える、鳴く
- 自分の影、光を追いかけまわす
- 物をずっと舐め続ける(おもちゃ、ソファーなど)
以上の行動は一例にすぎませんし、最近では強迫神経症を呈する犬の動画もあげられています。
気になる方は、動画などでも強迫神経症の症状を示す犬の行動を見てみてください。
強迫神経症の犬の対処法
犬は人間の言葉を理解することが難しいですし、強制行動や常同行動を無理やり止めようと、力づくで対処しても逆にストレスとなり症状が悪化してしまう可能性があります。
一番効果のある対処法は、症状の原因を取り除くことです。
とはいえ、原因を取り除くためには症状を呈する原因を解明することが必要です。
環境を変えたり、小さな空間に閉じ込めたままだったり、怪我や病気をしている、運動が不足している、などのストレスが原因ということが多いので、思い当たる原因を一つ一つ追求してみてください。
怪我が原因の場合、エリザベスカラーを取り付けるなどの対処方法はありますが、逆にストレスとなり別の症状が現れることも考えられるので経過観察が大切です。
強迫神経症の症状にもよりますが、悪化をしてしまうと一生涯引きずってしまうなど深刻な問題を招きます。
対処方法も症状と同様に個体差があるので、獣医師に相談してください。
最近は精神疾患を専門とする獣医師もいるので、専門家に診てもらうこともおすすめします。
まとめ
尻尾を追いかける、廊下を何度も往復する、自分の影をひたすら追いかけるなど「面白い癖のあるペット」かと思いきや、これらの行動の背景に強迫神経症という深刻な病気の可能性があります。
笑い事では済まされないケースもあるので、同じ行動を何度も繰り返す常同行動や強制行動を疑う場合は、できるだけ早めに獣医師に相談しましょう。