犬の虫刺されの症状
暖かくなってくると増える虫。
わんちゃんと暮らす飼い主さんなら、フィラリア・ノミ・マダニといった毎年動物病院でもらう予防薬に関する病気・虫の存在は何となく知っていても、実はそれ以外にも出くわす可能性がある虫刺されをご存知でしょうか?
虫刺されは正式には刺咬症(しこうしょう)と呼ばれ、人がハチやムカデなどを警戒するのと同じように、わんちゃんたちも虫に刺されると辛い症状が出て、時には全身に及ぶ症状が命の危険を招くこともあります。
また、虫は自宅にいる時にも侵入して虫刺されを引き起こす可能性もあり、暖かい季節は常に警戒しなければいけない時期です。
愛犬の虫刺されを甘く見ないためにも、まずはいろいろな虫による虫刺されの影響を知っておきましょう!
蚊、ブヨ(ブユ、ブト)
気温が約15℃を超えると吸血活動を始める蚊が媒介する有名な病気に、「フィラリア症(犬糸状虫症)」があります。
蚊は、フィラリア症に感染している動物を吸血したと同時に子虫であるミクロフィラリアも一緒に体に取り込み、そのまま体内で他の動物に感染できるまでに育て上げます。
やがてその蚊が愛犬を吸血する時に体内で成長した感染幼虫も一緒に移してしまうため、放っておけばフィラリアの幼虫は皮膚・血管の中を移動しながら、肺につながる血管や心臓にたどり着いて寄生してしまうのです。
心臓にたどり着く頃にはフィラリアも成虫になっているため、オスとメスで交尾をしてミクロフィラリア(子虫)をどんどん生み出します。
その子虫が血流に乗って血管を巡りながら成長を続け、再び心臓に戻るという一連のサイクルを繰り返しているうちに、肺につながる血管と心臓にフィラリア成虫がパンパンに詰まり、急死する原因にもなることもあります。
ここまで重症化すると
- 咳をする
- 運動をするとすぐに疲れる
- 腹水が溜まりお腹が膨らむ
- 食欲がない
といった症状を見せることもありますが、最初のうちはほとんど気づくことができません。
また、犬は蚊に刺されても人のように赤みや痒みを表に見せることはほぼないため、蚊による虫刺されが引き起こすフィラリア症には、予防薬を定期的に飲んで侵入した子虫を駆虫することが前提となります。
自然が多い場所へ行くと出くわすことが多いブヨによる虫刺されでは、刺された場所に炎症が起きて腫れてしまうことがよくあります。
人でも赤い大きな円形の腫れが見られることがありますが、犬でも刺される部位によっては、
- 顔つきが変わるほどの腫れ
- 足を引きずるほどの腫れ
といった日常生活に影響するほどの症状を引き起こすことも。
虫刺されによる炎症が起きた部位によっては犬が気にして舐めたり噛んだりしてしまうことも多いため、動物病院で治療を受けることが大切です。
ハチ
ミツバチやスズメバチなどに出会うと、好奇心の強い遊び好きな犬では興味を引かれて追いかけてしまい、そのまま攻撃を受けて刺されてしまうことがよくあります。
刺された場所の痛みや腫れはもちろん見られますが、通常であれば24時間程度でその症状も治まることが多いとされています。
しかし、放っておいてはいけないのが、人と同じように犬でも引き起こされる可能性を持ったアナフィラキシーショックです。
アナフィラキシーショックは急性のアレルギー症状であるため、
- 一部ではなく広い範囲が腫れる
- 呼吸が荒い呼吸困難になる
- 舌の色が青紫色になる(チアノーゼ/酸素不足)
- 元気の消失意識の消失
などの「急にぐったりした!」という症状が見られれば、1分1秒を争うため急いで動物病院へ向かう必要があります。
このアナフィラキシーショックは、1回目にハチに刺されて体に抗体ができた後、2回目以降に刺された時に体がハチ毒を排除しようとする反応が急激に起こるためだと言われています。
そのため、愛犬がハチによる虫刺されを多少の痛みだけで1度やり過ごせたとしても、2回目以降に刺されると命の危険を伴うかもしれないということをぜひ知っておきましょう。
また、愛犬がハチに刺された場所には、根元に毒嚢がついた針がそのまま残っていることがあります。
その場合の応急処置方法は、
- クレジットカードなどの端で跳ね上げるようにして抜く
- 刺された場所を流水で絞り出すように洗う(犬が痛がる場合は無理をしない)
- 痛がるようであればタオルに包んだ保冷材などで冷やしながら病院へ
といった手順で対処するのがおすすめです。
マダニ、ダニ
マダニは自然が多い場所によく生息する、動物の血を吸血して生きるクモやサソリに近い生き物です。
生まれてから死ぬまで吸血と成長を繰り返し、成ダニとなったマダニが愛犬の体に付着して血を吸うと、まるで血豆ができたかのように見えるほど大きく体を膨らませます。
大量寄生された場合は貧血症状を示す犬もいますが、日本の家庭犬ではそこまで寄生されることはほとんどありません。
それよりも、吸血時にマダニが出すセメント様物質が愛犬の皮膚とマダニの口をがっちり固定してしまうので、無理にマダニを取った時に起こる皮膚炎や化膿の方が問題になることが多いでしょう。
また、マダニがもたらす代表的な病気の1つに、犬の赤血球の中でバベシア原虫が増殖して破壊されることによって起こる「犬バベシア症」があります。
- 重度の貧血(いつもは赤いピンクの歯茎が白い)
- 発熱
- 黄疸
- 元気食欲がなくなる
といった重い症状が現れ、時には命に関わります。
他にも、ダニによっては毒を持った物質を出す種類もいて、海外を中心にダニ麻痺症として神経症状が現れるケースも報告されています。
マダニは人と犬の共通の感染症を運ぶことが多く、日本でも死者を出している「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を媒介するため、愛犬のマダニ対策は欠かせません。
厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」
ノミ
ノミに咬まれた時に大きな問題になるのが、痒みとノミが媒介する寄生虫症です。
ノミが犬の体を吸血する時の刺激や、ノミの唾液をアレルゲンとして起こるノミアレルギー性皮膚炎によって、
- 体を激しく掻く口で噛む
- 体を地面に擦りつける
- 皮膚の表面が点々と赤い
- 掻きむしって毛づやがなくなる
- 尻尾の付け根を中心として脱毛する
といった症状を見せます。
ノミが寄生している時には、体を走るノミを見つけるのはもちろんのこと、尻尾の付け根あたりを目が細い櫛でとき、黒いつぶつぶとしたノミ糞がついていないかを確認してみましょう。
ノミ糞であった場合吸血した血が混じるので、濡らしたティッシュなどでしばらく挟んでみるとじんわりと赤黒い色が染みだしてきます。
また、ノミの体の中に瓜実条虫(サナダムシ)の幼虫がいれば、体を舐めたり噛んだりした時に一緒にノミごと飲みこんでしまい、そのまま愛犬のお腹の中で成長してしまうことがあります。
ムカデ
湿った場所を愛犬と歩いていると、靴を履かずに歩いている愛犬の場合、ムカデを踏んで刺されてしまうことがあります。
ムカデは毒を持った生き物のため、刺された場所には
- 腫れ
- 赤み
- 痛み
が起こり、犬も気にして舐めたり噛んだりして二次的に出血が酷くなってしまったり、皮膚が化膿してしまうことも少なくありません。
こういった毒を持つ虫に刺された時には、あの有名なムヒを始めとした虫刺され用の薬を愛犬に使おうかな?と考える飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、人用の虫刺され薬は、独特のスース―するメントール成分が入っていることが多く、犬にとってはさらに患部を気にしてしまう原因になりがちです。
また、起きている炎症を鎮めるための薬用成分も、犬と人では有効な範囲が大きく異なります。
毒の対処方法は確実に行うためにも、自己判断で家庭にある薬を使用するのではなく、動物病院で判断を仰ぐようにしましょう。
- 虫刺されによって起こる急性の症状は腫れ痛み赤み痒みショック症状
- 刺された後に起こる寄生虫症によって愛犬が長期的に健康を損ねることもある
- 人用の虫刺され薬は薬用量が合わず効果を発揮しないことも多く、愛犬が患部を気にする原因にもなる
犬の虫刺されの予防方法
虫刺されはたとえお散歩時間が短く、ほとんど室内で過ごす犬であっても避けられないものです。
ですが、外出時の対策と日頃の予防によって虫刺されによる被害を減らすことはできます。愛犬と楽しく過ごせるよう、お出かけシーズンには次のような虫対策を行っておきましょう。
定期的なノミダニ駆除薬の投与
ノミやマダニが吸血して、寄生虫を移したり産卵を始めてしまう前に効果を発揮してくれる動物病院処方の駆虫薬を、薬の投与サイクルに合わせて定期的に愛犬に投与しておきましょう。
この駆虫薬は、ノミやマダニを寄せつけない効果を発揮するための薬ではなく、吸血を開始した時に素早く駆除するための防御バリアを保っておくための薬です。
こういったノミ・マダニの駆虫薬には、
- おいしく食べられるおやつ(チュアブル)タイプ
- 食物アレルギーがある犬でも安心な錠剤タイプ
- 首の後ろに垂らすスポットオンタイプ
などがあるので、かかりつけの動物病院でどんな薬を取り扱っているのかぜひ確認してみてください。
ノミ・マダニ駆虫薬の中には、フィラリア症を一緒に予防できる薬もあるので、1つでまとめて寄生虫対策ができますよ。
犬用の虫除けグッズを利用する
自然が多い場所に遊びに行く時には、犬用虫除けスプレーを活用してみるのも1つの方法です。
人間用のものは愛犬の皮膚が荒れてしまったり、舐めることによって体調を崩す可能性もあるため、舐めたとしても害のない犬にも使用OKのスプレーを活用しましょう。
ノミ取り首輪や首輪につけるタイプの虫除けアクセサリーなども、多少の害虫を忌避する効果を発揮してくれるかもという意識でつけておくのも良いかもしれません。
室内設置型のペット用蚊取り線香や害虫除けの商品も、愛犬がいたずらしたり匂いで嫌がったりしないか見ながら活用するのがおすすめです。
散歩時は衣服で保護する
虫刺されを防ぐには、愛犬の体をできる限り服で覆っておきましょう。
特にお腹や太ももの内側(内股)など、毛の密度が薄い部分では、たとえ長毛種でも虫刺されの被害に遭いやすい部位でもあります。
短毛種では言うまでもなく、長毛種ほど長い毛に覆われてふさふさとしていない犬種の方が多いため、全身が虫に刺される危険のある場所となってしまうでしょう。
靴に関してはわんんちゃんによって好き嫌いがありますが、あらかじめ室内で練習しておくと、山などに遊びに行った時に履くだけで足裏をケガするリスクまで減らすことができます。
夏には気づかぬうちに熱くなったアスファルトでやけどすることもあるので、足元の虫対策も兼ねてチャレンジしてみるのもありですよ。
虫が多い時期は草むらを避ける
愛犬が興味津々に草むらに顔や体を突っ込んでいくことはよくありますが、そこにはどんな虫が潜んでいるかなかなか見つけられません。
特に山でのアウトドアや河川敷周辺でのお散歩を楽しんでいる時には、マダニのリスクも増してしまいます。
背の高い草むらは避けて、開けた場所で愛犬とおもちゃ遊びをするなど、別の気分転換の方法を探してあげましょう。
- 確実に予防できる方法があるノミマダニ対策は忘れずに行う
- 虫除けグッズは確実な効果を期待するというよりも補助的なものと位置付けて
- 虫刺されを防ぐためには愛犬の体に虫が近づけないような工夫と行動が大事
犬の虫除けグッズおすすめ5選
ここからは、実際に虫除けに役立つおすすめグッズを紹介します!
愛犬のために商品を選ぶ時には、わんちゃんと飼い主さんどちらもが使いやすく、使用中も不快感を感じないような商品を選んでみてくださいね。
オーガニックアウトドアスプレー 125ml
水と塩以外の原料はすべてオーガニック成分の、ペットへの影響をできる限り少なく作られたオーストラリア発の虫除けスプレーです。アルコールも不使用のため、敏感肌のわんちゃんでも刺激が少ないのが嬉しいですね。
ただし、精油の匂いがややきつく感じられる人・わんちゃんもいるため、苦手だなと感じたり愛犬がつけられるのを嫌がるようであれば無理はしないようにしましょう。
最初のつけ始めの時は、鼻から遠い後ろ足にだけつけてみるなど、段階的に試してみることをおすすめします。
ドギーマン おさんぽ虫よけ安泉香60日 コットンフラワー
こちらは首輪やハーネスに取り付けるだけの簡単虫除けアクセサリーです。ほとんどのわんちゃんが嫌がることなくつけてくれるので、装着することができなかったという悲しい事態にはほぼなりません。
散歩中に出会う羽虫を忌避する成分を含んでいるため、蚊やノミの防備とはいきませんが、虫の多い季節にお守りとして着けておくのもよさそうです。
超小型犬にはやや大きい作りなので、小型犬以上の体格のわんちゃんでの活用が良いかもしれません。
アース・ペット 薬用 蚊よけネット 130日用
デザインもかわいい吊るしタイプの虫除けネットです。
虫除け商品の中では珍しくコバエなどの不快害虫でなく蚊を対象にしていて、ペットの傍で使用しても安全だと確認されている商品とのこと。
100%蚊を防ぐことは難しくても、愛犬が過ごす部屋の窓に吊るしておいて庭から蚊が侵入するのを防いだり、ケージやサークル周りにぶら下げて、少しでも蚊を近寄らせないようにしておきたいですね。
ペット用 アースノーマット セット
ドーム型の器具をコンセントに差して、部屋全体に薬剤を広げるタイプの蚊対策グッズです。匂いも少なく1日12時間使用でき、取り換える必要もない便利な商品です。
吊り下げタイプに比べて蚊への効果を期待できる分、コンセントの利用が必要であるなど、愛犬がいたずらをしないよう置き場所には注意してあげる必要があります。
設置する時には愛犬の口や足が届かない高さの棚上などに置いてあげましょう。
iDog アイスクリームボーダーパーカー moscape
天然由来の防虫成分を犬服に加工した「moscape(モスケイプ)シリーズ」。
不快害虫だけでなく、蚊・ノミ・ダニまで忌避してくれる効果を搭載した珍しい洋服です。
見た目も華やかで柄が豊富なので、獣医師処方の駆虫薬を定期的に投与しつつ、お出かけの時のウェアとして活用するのがおすすめです。
洗濯すると少しずつ効果が落ちていくので、1~2年での交換がベストのようですが、デザイン違いを購入しておけば日替わりでの楽しみと、防虫効果の維持を期待できますね。
まとめ:犬の虫刺されは予防することが大切!
愛犬との楽しいお出かけも、虫刺されで痛い思いをしてしまうと嫌な思い出になってしまいます。
また、虫がもたらす悪影響の1つとして、人と犬の間で共通する感染症のきっかけになることも数多く報告されています。
虫刺されは愛犬の行動範囲をコントロールしてあげたり、医薬品を活用することで予防できるものも多く、日頃から対策しておくだけで随分と気持ちが楽になります。
最近では温暖化の影響で虫が出る季節の始まりも変化している傾向があるため、早め早めの対策を取っていきましょう。