1.軟口蓋過長症
小型の短頭種に見られやすい病気
軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)とは、鼻腔と口腔を分けている「軟口蓋」という部分が通常よりも長いことによって呼吸が妨げられてしまう病気です。短頭種(鼻ぺちゃ犬)の中でも、パグやフレンチブルドッグ、シーズーなどの小型の犬種に多く見られます。
先天的な体質によることが多い
軟口蓋過長症の主な原因は先天性によるものですが、後天的にも起こり得る病気です。短頭種は品種改良によって今の姿となっているため、鼻の穴が小さい「鼻腔狭窄」が見られやすく、喉の構造も狭くなっていることで喉の奥の筋肉が過剰にたるみやすいのです。
後天性の場合は、鼻腔が狭くなり呼吸する時の圧力が強くなって、軟口蓋が繰り返し引っ張られることが原因になるケースもあります。体重が増え首の周囲に脂肪がつきすぎることが原因になる場合もあります。
軟口蓋過長症の症状
軟口蓋過長症は
- 呼吸し辛そうに見える
- ゼーゼーと呼吸音がする
- 大きないびきをかく
- 食べ物を飲み込みにくくなる
- 食べる時にむせる
などの症状が見られます。
悪化していくと呼吸困難によるチアノーゼや失神、気管虚脱、荒い呼吸で体温が上昇することによる熱中症、重篤化すると死に至ることもあり気を付けてあげたい病気です。
主な原因は先天性ということもあり、小型の短頭種を迎えたら注意深く観察してあげるようにしましょう。
2.気管虚脱
気管が潰れてしまう病気
鼻や口と肺は「気管」という通り道で結ばれています。通常この気管はホースのような筒状をしているのですが、外側を覆う軟骨が変形して歪んでしまうとホースを潰したような形になってしまいます。このように、気管が変形し潰れた状態になることを「気管虚脱」と言います。
気管虚脱の原因
気管虚脱を引き起こす原因ははっきりと特定されていませんが、
- 遺伝の影響
- 吠え過ぎ
- 肥満
- リードを強く引っ張り過ぎ
- 高温多湿の気候
などが要因になるとされています。
気管虚脱の症状
空気の通り道である気管が潰れてしまうと呼吸がし辛くなります。
それにより、
- ガーガーという呼吸音
- 咳
などの症状が出ます。
悪化すると呼吸困難になる恐れがありますので、咳がひどかったりガーガーというガチョウのような呼吸音が現れた場合には受診するようにしましょう。
薬で変形を治すことはできない
歪んでしまった気管の軟骨を薬で元に戻すことはできません。初期のうちは咳止めや気管を拡張する薬を使用して経過観察となりますが、場合によっては気管の形状を改善する外科手術となることもあります。
3.熱中症
犬は汗をかく代わりにパンティングをする
犬は汗をほとんどかかないため、体温調節を呼吸で行います。暑い時には口を開けっぱなしで、舌を出した状態で「パンティング」というハァハァと荒い呼吸をします。ハァと口から深く出す呼吸は熱い水蒸気も一緒に吐き出すので、気化することによって体温を下げたり舌の血管を冷やす効果がある呼吸法です。
短頭種はパンティングによる体温調節が苦手
鼻ペチャ犬をなぜ「短頭種」と言うのかというと、「頭」蓋骨の横幅よりもマズルが「短」い犬種であるためです。短頭種はマズルが短いことにより口の中の面積が他の犬種と比べて狭いため、パンティングによる水蒸気の気化が効率良く行えません。
そのため、短頭種は暑さに対する体温調節が苦手なので、短頭種には十二分な熱中症対策が必須となります。
まとめ
今回は「鼻ぺちゃ犬」が気を付けたい3つの病気を解説いたしました。
短頭種は人間の品種改良によって生まれた犬種で、頭蓋骨の横幅よりもマズルが短いことが特徴です。マズルが短いことによって呼吸関連のトラブルが起こりやすく、パンティングによって身体の熱を発散することが苦手です。
人間の手で改良されてきた短頭種は、先天的な要因で特定の病気になりやすいということもあり、
- 軟口蓋過長症
- 気管虚脱
- 熱中症
このような「呼吸」に関連する病気には日頃から注意してあげる必要があります。