犬の甲状腺機能低下症って?
犬の甲状腺機能低下症は、その初期症状がわかりづらく、飼い主様もなかなか気付きません。
そもそも甲状腺とは、甲状腺ホルモンを分泌する内分泌器官で、甲状腺機能低下症は、その甲状腺ホルモンの分泌が少なくなり、体がホルモン欠乏を起こした結果認められる病気です。
甲状腺ホルモンは、簡単に言うと「体の代謝を上げるためのホルモン」です。
代謝が上がると、それだけエネルギーも消費しますし、その結果、新陳代謝が良くなるため、皮膚や毛などの代謝が活発な組織を正常に保つだけでなく、体のすべての組織の代謝を正常に維持できるようになります。
犬の甲状腺機能低下症の症状は?
犬の甲状腺機能低下症は、老齢の犬で多くみられ、甲状腺ホルモンが少なくなって代謝が落ちた結果、様々な臨床症状を示すようになります。
体重が落ちない
代謝が落ちると、エネルギーの消費量も減るため、そんなにドッグフードを食べていないにもかかわらずまったく痩せる様子がない場合は注意が必要です。
脱毛
新陳代謝が活発な毛は、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなると、代謝が落ちるため、脱毛しやすくなり、さらにそのあとの発毛が認められなくなることがあります。
なんとなく元気がなくなる
代謝が落ちると、体全体の機能が落ちますので、なんとなく元気が無くなったように見えます。
これは一見「年だからかな?」ということで、見逃されがちな症状ですが、犬の甲状腺機能低下症の立派な症状の一つです。
その他
甲状腺ホルモンは体全体の代謝を司るホルモンですから、あらゆる症状に関係してきます。
そして我々獣医師も、老齢の犬の病気を診断するときは常にこの甲状腺機能低下症を疑う必要があるくらい、いろんな体に影響を与える病気なのです。
診断と治療について
犬の甲状腺機能低下症の診断は、血液検査で甲状腺ホルモンを測定することで可能です。
しかしここで気をつけたいのが、「その他の病気の存在」です。
動物は体が病に冒されると、その治療に専念するために、一時的に代謝を落とすため、甲状腺ホルモンの分泌が抑えられます。
ですので、そのときに甲状腺ホルモンを測定すると低値になるため、一見、甲状腺機能低下症と誤診してしまうことがあります。
ですので、甲状腺機能低下症を疑うときは、ほかの病気が隠れていないかしっかりと探すことも大切です。
また治療は甲状腺ホルモン剤を服用することで、寿命を全うすることは可能だと言われています。
最後に
犬の甲状腺機能低下症は、直接的な診断と治療はそんなに難しくありません。
しかしその臨床症状がわかりにくいため、そのままこの病気に気づかず過ごしてしまうケースも多くあります。
特に老齢の犬ではよく見られる病気ですので、普段からの健康診断で、一緒に甲状腺ホルモンを測定することをお勧めします。
何事も早期発見、早期治療が大切ですね。