「パルボウイルス」とは?
パルボウイルスは、パルボウイルス科に属するウイルスで、ウイルスの中では最も小さい部類に属しています。
人間のみに感染するパルボウイルス(パルボウイルスB19)や、犬に感染する犬パルボウイルス、猫に感染する猫パルボウイルスなどがあり、多くは、関連のある種の動物にしか感染しません。
たとえば犬パルボウイルスの場合、同じイヌ科である、イヌ、オオカミ、キツネ、タヌキには感染しますが、猫や人には感染しません。
犬パルボウイルスは、1970年代末に発見されました。
感染力が非常に強く、犬パルボウイルス感染症は、ウイルスが発見されてから、わずか数年で爆発的に世界中に広まりました。
死に至るケースも多く、日本でも「犬コロリ病」「ポックリ病」などと呼ばれ、恐れられました。
その後、ウィルスが特定され、ワクチンも開発されたことから、感染症の症例も減少しましたが、現在でも、ワクチン未接種の場合や、高齢犬や子犬など免疫力の低い犬にとっては、恐ろしい病気であることに変わりはありません。
致死率は子犬で90%、成犬で25%ともいわれています。
「パルボウイルス」の怖さ
パルボウイルスが恐ろしい理由として、まず挙げられるのが、パルボウイルスの生命力の高さです。
パルボウイルスは、自然界で屋内・屋外を問わず半年から2年もの間、生存し続けるといわれ、感染した犬が発症しなかった場合でも、排泄物等に混じって体外に出て、感染の機会を待ち構えています。
排泄物や嘔吐物が土や砂に混ざって空中にばら撒かれ、あらゆるものに付着し、経口・経鼻感染するので、屋内飼育だからとか、他の犬との接触がないから、といって感染の可能性を否定することはできません。
ウイルスは至るところにあると考えたほうが良いでしょう。
また、パルボウイルスは酸・アルカリ・熱に強いため(摂氏60度で1時間加熱しても死滅しません)、逆性石鹸やアルコールは効果がなく、家庭では煮沸消毒か薄めた次亜塩酸ナトリウム溶液を使用して消毒する必要があります。
「犬パルボウイルス感染症」になる原因
犬パルボウイルス感染症は経口・経鼻感染と経胎盤感染が知られています。
- 経口・経鼻感染:パルボウイルスが口や鼻から進入し感染
- 経胎盤感染:母体の胎盤を通して感染
「犬パルボウイルス感染症」の症状
症状によって、
- 消化器系の症状が出るもの:「腸炎型」
- 呼吸・循環器系の症状が出るもの:「心筋炎型」と呼ぶこともあります。
症例としては、「腸炎型」の方が圧倒的に多く見られます。
「腸炎型」の主な症状
- 激しい嘔吐や下痢が続く。
重症の場合は血便になることもある
- 食欲がなくなる
- 脱水症状をおこす
- 発熱する場合もある
- 重度の下痢や嘔吐が続き悪化すると、ショック状態を起こし、死に至ることもある。
「心筋炎型」の主な症状
- 嘔吐
- 脱水症状
- 息切れ
- 呼吸困難をおこし、突然死する場合もある。
感染してから、数日~十日前後の潜伏期間後に発症します。
特に危険なのは、子犬が母乳などを通して、母から受け継いだ抗体が切れる、生後6~16週頃だといわれています。
このような子犬の場合は、適切な処置をしなければ、発症からわずか1、2日で高い確立で死に至ります。
ワクチンを接種していたとしても、摂取後、十分な効果が現れるまでは2週間ほどかかりますので、注意が必要です。
「犬パルボウイルス感染症」の早期発見方法は?
犬パルボウイルスが心筋炎を引き起こした場合は、急に状態が悪くなり、呼吸困難を起こして死に至るケースが多いため、早期発見は難しいことが多いのですが、一般的には、嘔吐や下痢といった症状が起きるので、普段から愛犬の食欲、便の様子等を良く観察することが、早期発見につながると思われます。
しかし、子犬を家族の一員として迎えた場合など、健康な場合でも、慣れない環境で体調を崩すこともあるかもしれません。
下痢・嘔吐を繰り返す場合や、元気が無くなっていくようであれば、迷わず受診すべきです。
もし愛犬が「犬パルボウイルス感染症」にかかってしまったら?
早急に獣医師による治療をうけることが重要です。
現在では、短時間で判定することが可能な「犬パルボウイルス抗原検査用キット」もあり、早期治療に役立っています。
残念ながら、犬パルボウイルスに直接効く薬はありません。
犬の体力・免疫力をつける手助けをすることが重要なので、人間の場合と同様、嘔吐がある場合は、絶食・絶水させ、脱水症状がひどい場合には、点滴や酸素補給を行います。
体が弱って免疫力が低下すれば、2次感染の危険も高まるため、抗生剤の投与も行われます。インターフェロンの投与が行われることもあります。
早い段階で適切な処置・治療を受ければ、1週間ほどで回復に向かうことが多いですが、完治するには1ヶ月ほどかかる場合もあります。
また、もし愛犬が「犬パルボウイルス感染症」にかかった疑いがある場合には、すぐさま他の犬と隔離し、便・嘔吐物の処理をするだけでなく、周囲の消毒を徹底して、それ以上、感染を拡大させないように努めることが大切です。
日頃気を付けたい予防や対策は?ワクチン接種について
犬パルボウイルスから愛犬を守るためには、ワクチン接種が非常に有効です。子犬の場合は、適切なワクチンの接種時期や回数を獣医師と相談することが大切です。
一般的には、だいたい9週目までに、1回目のワクチン接種を行います。
その後、3~4週間空けてから、2回目を行い、それ以降は、1年に1度、追加接種を行うのが望ましいです。
「狂犬病ワクチン」のように、狂犬病予防法により、飼い主に毎年1回接種が義務付けられているものもありますが、犬パルボウイルスに対するワクチン接種は任意です。
しかし、犬パルボウイルスの他に犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルスの3つは、「コアワクチン」に指定され、危険度の高い病気を予防するために、接種すべきとされています。
最後に
パルボウイルスは非常に恐ろしいウイルスですが、現在では有効なワクチンが開発されていますから、是非、ワクチン接種を継続して、愛犬を守りましょう。
風邪でもひいたかな?と思ったときでも、犬パルボウィルス感染症のような恐ろしい病気があることを思い出して、愛犬の様子を注意深く観察してください。
飼い主さんの愛情と思いやりで、愛犬も元気に長生きできると良いですね。