犬の遺伝性疾患「セロイドリポフスチン症」
セロイドリポフスチン症をご存じでしょうか。
あまり聞きなれず、発症件数も多くはない病気ですが、これは特定の犬種に多く見られる遺伝性疾患のひとつ。
神経系に影響を及ぼし、やがて死に至るという難病です。
症例が少ないため、診断には難しい部分があるようですが、犬に起こり得る病気として概要を知っておきましょう。
ここから詳しくご説明して参ります。
セロイドリポフスチン症はどんな病気?
セロイドリポフスチン症とは、CL症とも呼ばれ、遺伝性疾患の一つです。
これは進行性の神経変性に関わる病気であり、死に至る可能性もあります。
行動や視覚、知的部分に障害が現れるようになり、症状が見られてからは病気が急速に進行します。感染はしません。
セロイドリポフスチン症は遺伝性疾患であり、好発症犬種としてはボーダーコリー、イングリッシュセッター、ミニチュアダックスフント、アメリカンブルドッグが挙げられます。
1歳以降に発症、4歳までに亡くなってしまうことが多く、恐ろしい病気です。
安楽死を選択せざるを得ないケースもあります。
犬がセロイドリポフスチン症になる原因
セロイドリポフスチン症は遺伝性のもの。
この遺伝子を持ち、発症した個体は、ある特定の物質を細胞内に溜めてしまうという生まれつきの特性を持ち、その溜まった物質が脳に影響を与えるために、様々な障害が起こります。
犬のセロイドリポフスチン症の症状
神経系に支障が出るため、症状は様々です。
歩行や運動に関する異常
歩き方や関節の動かし方が変になったり、段差の上り下りやジャンプ、立ち上がりができなくなったりします。転倒やふらつき、咀嚼異常なども。
精神的不安定
恐怖や不安を必要以上に感じたり、急に興奮したり怒ったりと、精神的に極度に不安定となります。見慣れたものに対しても反応し、錯乱したような様子も見られます。
異常行動
目的のない徘徊やハエ追い行動、物への威嚇など、異常な行動が見られます。
何かに対して、異様な執着を見せることも。
知的障害
躾けられていたトイレが急にできなくなったり、方向感覚がなくなったりと、急な知的部分の変化が見られます。
また、飼い主を判別できなかったり、呼びかけに反応しなかったりすることもあります。
視力障害
視力に障害が出て、暗闇で目が利かなくなったり物にぶつかったり躓いたりすることがあります。最悪の場合失明することも。
治療法
この病気に治療法はありません。
発症した場合には、犬の行動をよく見守り、異常行動により犬も人間も怪我をすることのないよう、安全な環境づくりが求められます。
犬のセロイドリポフスチン症の予防法
遺伝性疾患であるため、予防法はありません。
DNA検査により事前に病気遺伝子の有無を確認することはできますが、発病前に発見できても治療法がないのが現状です。
遺伝子疾患を防ぐ
遺伝性疾患は、人間による無理な交配が原因で蔓延しています。
そして、それが次々と子の世代に受け継がれているのです。
例えば、このセロイドリポフスチン症の場合、キャリアを持つ犬同士を交配させて、1頭も発症犬が生まれない確率は10%、これを2回繰り返した場合はわずか1%です(1度の交配で8頭生まれたとする)。ほぼ確実に、発症する子犬が生まれるのです。
この連鎖を断つためにも、疾患が見つかった個体には交配をさせないという、飼い主の配慮が必要です。
まとめ
犬のセロイドリポフスチン症状についてご紹介しました。
予防方法も治療方法もない病気ですが、特に好発症犬種を買っておられる方は気にかけておきましょう。
また、もし愛犬が発病したときには、行動や暮らしをサポートし、できるだけ幸せに毎日を送ることのできるよう愛情をかけてケアをしましょう。
遺伝子疾患が減ることを願いたいですね。