値段の高いドッグフードにはそれなりの理由がある
先日、アメリカで販売されている缶詰ドッグフードから動物の安楽死に使われる薬物が検出され健康被害が発生したという報道がありました。ニュースを読んでショックを受けた方も多いことと思います。
問題のフードは一缶70セント(約75円)前後で売られている、驚くほど値段の安いものでした。薬物がどういう経路で含まれることになったのかはまだ明らかになっていませんが、原材料や製造過程の管理に問題があったことは間違いがありません。
ならば値段の高いフードなら安心なのか?と言うと100%そうとも言い切れない部分はありますが、やはり高いには高いなりの理由があり、理由を知ることで判断の基準にもなります。
AAFCO基準は安全や健康のための基準ではない
市販のフードと言えば、ほぼ必ずと言っていいほど『AAFCO栄養基準』と表記されています。AAFCOというのは「米国飼料検査官協会」のことでアメリカの動物用飼料の栄養基準やラベル表示のガイドラインを設定している機関です。
日本のペットフードもAAFCOの基準を採用しているので、このように表記されています。
この栄養基準というのは「指定されている量を給餌すれば、犬の体を維持するために必要な栄養素は全て摂取できるように配合されている」というもので、基準を満たしていれば安全とか犬の健康が保証されるというものではありません。
あくまでも栄養素の割合が基準に沿っているという意味で、これだけで良いとか悪いとかいうものではないのです。
先に挙げた、薬物が検出されたドッグフードもAAFCOの基準には沿っていたものです。
原材料の品質
AAFCOの基準では、タンパク質、炭水化物、脂質の三大栄養素、ビタミンミネラルなどの微量栄養素が「○○だけ含まれていること」と定められていますが、その質については関与していません。
例えばタンパク質なら、チキンやラム、魚などの動物性タンパク質を使っているか、安価なコーングルテンや大豆タンパクを使っているかでフードの質は大きく変わりますが、栄養基準上ではどちらもタンパク質です。犬の食性に合うのはもちろん動物性のタンパク質の方です。
また動物性のタンパク質でも、食肉を加工した時に出たクズ肉部分をペットフード用にさらに加工したものか、ヒューマングレードと呼ばれる人間用の食肉と同レベルのものを使っているかなどでフードの価格は変わってきます。
炭水化物も同様で、穀物の保存や精製の際に出る砕けた部分がペットフード用に使われます。人間が食べるのと同じ基準の穀物が使われれば価格に反映されます。
ビタミンなども多くの野菜や果物を使用しているか、合成のビタミンを添加しているか、などの違いがあります。
動物飼料の栄養士が処方に関わっているか
高品質のペットフードを生産しているメーカーは、単純に数字上の基準を満たすだけではなく、動物の適切な健康状態を維持するための処方を持っています。そのために動物専門の栄養士を採用しています。
それだけの手間と人件費がかかるので、フードの値段は高くなります。
AAFCOが実施している厳しい試験は「基準」とは別
AAFCOには単なる栄養基準とは別に、厳しいガイドラインが定められたフィーディングトライアルと呼ばれる試験があります。この試験に合格するためには当然ながらコストがかかります。合格した製品には『AAFCO給与試験合格』という表示をすることができます。
アメリカの会社が作っているプレミアムフードにはこの表示がついていることが多く、単なる「AAFCO栄養基準」よりは安心できるものです。けれどもこの合格の表示がないからダメなフードというわけではないことも心しておいてくださいね。
厳格な品質管理で生産されているか
品質と安全性は保証されているのが当然のはずですが、決してそうとは言えないのは過去に起きている事故などからもわかります。
製造工場の衛生管理や原料の品質管理などを厳格に徹底すればその分コストが高くなります。
まとめ
「ドッグフードは指定された給餌量と水さえ与えれば、犬が必要な栄養を摂取できる食べ物」というのは本当ですが、その内容はまさにピンからキリまで違いがあります。
プレミアムフードと呼ばれる値段の高いフードの理由がお分かりいただけたでしょうか。ここに挙げたのは一例で全てではありませんが、こうして見ていただくとあまりにも安いフードは安心のための材料が足りないことがわかると思います。
もちろん誰もが「犬のためにはお金に糸目をつけない」なんてことができるわけではなく、かけられるコストは家庭によって様々です。
けれども、あまりにも安いフードで犬が健康を害してしまうと、莫大な医療費がかかってしまうことにもなりかねません。
製品の価格には、安くても高くても理由があることを納得した上で、お財布と安心のバランスのとれるポイントを見つけたいですね。