犬を描いた世界最古の作品か?サウジアラビアで発見された壁画
2017年11月『サイエンス』誌に、サウジアラビア北西部で岩壁に犬の姿を彫った壁画が発見されたと発表されました。
この壁画は8000年以上前のものと推測され、もしそうであれば犬の姿を描いた世界最古のものであると言われています。
考古学的に大きな意味があるとされる発見ですが、犬好きとしても気になることがたくさん詰まったこの壁画、どんなものなのでしょうか。
8000年前の犬もリードを付けていた?
壁画では、ひとりの人間を中心に彼を囲む十数匹の犬が描写されています。犬のうち2匹からはリードらしき線が伸びて人間の腰のあたりにつながっています。
人間は弓矢を持っていることから、この壁画が彫られた時代には犬は人間の狩猟を助ける存在であったことが伺えます。リードでつながれた犬は、まだ訓練中なのかもしれません。
犬の紐が人間の腰のあたりにつながっているのは、両手は弓矢を使うためにあけておく必要があるからなのか?いろいろと想像がかき立てられますね。
この発見以前には、リードを着けた犬の描写が出現したのは約5500年前のエジプトの壁画だそうです。もしかしたら今まで考えられていたよりも数千年早い時代に、人間が犬をリードにつないで訓練を行っていた可能性が出てきたことが示されています。
8000年前の猟犬の犬種はなんだろう?
この犬と人間の壁画は、ドイツの考古学者がサウジアラビア国家の協力を受けて集めた1400以上の壁画のひとつで、それらには7000近い動物や人間が描写されているのだそうです。
描かれている動物たちは牛、ヤギ、羊などの家畜と思われるものや、野生のロバやガゼルとそれらに襲いかかる犬たちなどです。描写の多くで犬たちは人間と線でつながっているそうです。
狩猟に参加している犬たちは中型犬で立ち耳、マズルは短め、カールした尻尾が特徴的です。サウジアラビアや中東の古い犬と言えばサルーキのようなサイトハウンドが連想されますが、描かれている犬は違う犬種のようです。彼らは現代ではカナーン犬と呼ばれる、中東の砂漠地帯に住む野生の犬種によく似ているようです。壁画は8000年前の人々は砂漠での狩猟に適した犬を飼いならして訓練していた可能性を示しています。
8000年前の人間と犬の間の絆が表現されていた!
壁画に登場する犬たちは、コートの状態や模様、姿勢、性別などがとても具体的に細かく描かれていることから、一般的な犬を想像して描いたのではなく、描き手が実際に知っている特定の犬を描写していることが伺えるそうです。古代の人々にとって、一匹一匹の犬が心情的に結びついた大切な仲間であったことがわかりますね。
また、犬をつなぐリードのようなものと考えられる線には別の説もあげられています。犬と人間をつなぐ線はリードではなく、つながりを示す象徴的な意味で描かれている可能性もあるのではないかというものです。犬と人間の絆を絵で表現するなんてロマンを感じますよね。
まとめ
サウジアラビア北西部で発見された人間と犬を描いた壁画には、犬好きなら胸おどるようなディテールがたくさん隠されていたようです。発見者であるドイツの考古学者は壁画が描かれた時期を8000〜9000年前と推測しているそうですが、他の研究者の説では8000年よりも新しいものである可能性も指摘されているようです。実際にこの壁画を世界最古の犬の絵とするにはさらなる証拠と研究が必要だそうですが、古代の人々の犬への愛が表現されていることには変わりありません。
中東の砂漠という過酷な環境で人間が生き延びることができたのは、犬たちが狩猟を手助けしてくれたことも大きな理由のひとつでしょう。文字通りの『相棒』であった犬たちと人間の絆は現代の私たちとペットのそれよりも、もっと切実に強いものだったのかもしれないですね。