保健所に収容された小型犬
その犬は、鹿児島県の道路を彷徨い歩いていたところを保護され、保健所に収容されました。
体重わずか2キロちょっとの小型犬でした。
たぶん、パピヨンとチワワのミックス犬として、ミックス犬ブームの時にペットショップで売られていたであろう犬なので、迷子ではないだろうかと考えられ、地元ボランティアの方たちが、周辺のトリミングサロンがあるペットショップや動物病院などに心当たりはないかと訊いて回ったそうです。
でも、この犬に関して、知っている人は誰もいませんでした。
それでも、迷子犬としてチラシを作って貼り、飼い主探しが行われました。
でも、飼い主として名乗り出る人はいませんでした。
同時に里親探しも行われました。ペットのおうちに載せられました。
でも、誰も里親希望者は現れませんでした。
この犬の命のカウントダウンは刻々と時を刻んでいました。
そして、本来の期限は、切れてしまいました。
とても人懐こい小型犬でした。殺処分されてしまうのは、あまりにも可哀想…。
ボランティアの方たちは、保健所にもう1週間だけ待ってほしいと頼み込みました。
そして、再び飼い主探しと同時に里親探しが行われました。
でも、問い合わせは0でした。
捨て犬
迷子ではなく、きっと捨て犬だったのでしょう。
どのくらい彷徨い続けていたのでしょうか、小さな体は痩せこけて、複数のダニがついていたそうです。
背中の骨が触れるくらい痩せていました。毛玉もたくさんできていました。そして、歯は1本もありませんでした。
遠くに連れて行って捨てられたのではないでしょうか。その証拠に、犬が保護された周辺地区でどんなに聞き込みをしてもこの犬の事を知っている人は誰一人出てきませんでした。
1週間の期限延長
ボランティアの方が命の延長を頼んだことで、私はこの犬の事を偶然、ネットで見つけることができました。
でも、私が住んでいるのは本州でした。犬が収容されている鹿児島県とは遠く離れすぎています。
それでも、駄目元で問い合わせを入れてみました。
「私が住んでいる場所は本州でそこからは遠すぎるのですが、もしも期限までに里親希望者が誰も現れない場合、私が里親になることは可能でしょうか?」
するとその数時間後に電話がかかってきました。
「ありがとうございます!もう嬉しくて。メール頂いた時は動物病院にいたのですが、思わず声をあげてしまいました…」と。
「メールにも書きましたが、あくまでも誰も現れなかった場合ということなので、もしも、県内で誰か希望者が現れた場合は、私は辞退ということでお願いします。」
その小型犬は、老犬でした。
本州までの搬送の間、体力が持つかどうか判りません。
でも、誰も期限まで手が上がらず殺処分されるより、命をかけて本州まで”生きるために”旅をする価値は十分あると私は判断しての事でした。
ボランティア
結局、この犬に関しては最後まで誰も手が上がりませんでした。
実は、私が最終的に里親になると申し出たことで、すぐにボランティアの方がこの犬を保健所から引き出していたのです。
そして、ボランティアの方の家でしばらく様子見をしていたそうです。
ダニも取り除き、毛玉が酷かったのでボランティアのトリマーさんに毛玉の処理を頼み、世話をされていました。
今回、この犬の飼い主及び里親探しを懸命にされていたのは、鹿児島県を拠点に犬猫の保護活動を行っている『犬猫を守る会 天使のおうち』さんでした。
なんと、その団体が私の住む本州までこの犬を車で連れて来てくださるというのです。
私は、犬猫のためのライター活動をしているため、それがどういう事なのか判っていたので、その申し出を遠慮することなく、お願いすることにしました。
里親希望者がどういう人間なのか、どういう家族がいて、どういう環境に住んでいるのか、
果たして渡した保護犬が幸せに暮らしていけるのかどうかを、ボランティアさんの目で実際にちゃんと見て確かめる必要があったのです。これは、犬猫ボランティアさん達の基本でした。
メールや電話では実際にその人柄までは判りません。
また、ペット可の物件に住んでいるのか、家族はどう思っているのかも、実際見て会ってみなければ判りません。
だから、ハンド・トゥー・ハンドで、里親さんに来てもらうのではなく、里親さん宅にお届けするのです。時間もかかるし、交通費も体力もかかりますが、犬猫の幸せのために欠かせないこれはとても重要な作業なのです。
鹿児島県から本州への長い旅
実際、鹿児島県から本州の我が家まで車で9時間もかかってしまいました。
高速道路を使われましたが、わんちゃんの体と精神的な事を考えて、何度も何度も休憩をとられながらの旅でした。
日帰りするのは、無理だと思い、ホテルもとろうかとオファーさせていただきましたが、ボランティアさんの家には、保護している犬猫たちが20匹近くいるし、中には体調がすぐれない子がいるので心配だからその日に戻りたいとのことでした。
長距離の運転なので、ボランティアさん2人で来られました。
わんちゃんを引き渡す時、涙ぐまれていました。
保健所に収容されてからずっと飼い主探しから始まって、その後里親探しを続けていらっしゃった方達です。
そして、保健所から引き出してから我が家に連れて来られるまで約1ヶ月半、2人の自宅で代わる代わる、このわんちゃんのお世話をされていた方達でした。
里親が決まったことは喜ぶべきこと、けど、情もうつっている子を引き渡すのもそれなりに辛いものがあると思います。
愛がなければ、片道9時間もかけて連れてくるなんてことはできません。しかも、日帰りなんて…彼女たちの活動は、犬猫達への愛以外のナニモノでもありませんでした。
別れ際、彼女たちが負担することになる往復の高速代+ガソリン代、そして心ばかりの寄付を渡させていただきました。それは私ができる精一杯の気持ちでした。
新しい家族
この犬は”タロー”と命名しました。
我が家には既に犬が1匹、ちょうど2年前に地元の動物愛護センターで殺処分が決まっていた保護犬を引き出して一緒に暮らしていました。
その犬の名前が”モモ”でした。
どちらも夫が命名しました。2匹合わせて”モモ”と”タロー”でモモタロー。
モモがメスで、タローがオスということもあり、2匹の相性は良かったです。
それは私の勘でした。タローの写真をペットのおうちで見た途端、「この子だ!」となぜか感じるものがあったのです。
その予想は見事当たりました。
他の犬に対して、吠えついてしまうモモがタローが家に入ってきた瞬間、一切吠えないでフレンドリーに迎え入れたのです。
その後も、2匹は喧嘩をすることも一度もなく、仲良く過ごしています。
しつけ
我が家には、ニューヨークから引っ越して来た際に連れてきた保護猫のマキシもいます。
マキシとタローは、オス同士だということもあり、初めの頃はタローがマキシに対して威嚇し、激しく吠え続けていましたが、マキシが大人対応を続けたことと、タローがマキシに吠える度に私が水スプレーをシュっとタローの顔に軽くかけてしつけを行ったことで、数日後には一切吠えなくなりました。
体調不良
モモとタローは相性は良かったのですが、タローは長旅の疲れと新しい環境でのストレスからか、我が家に来て翌日の夜に下痢をしました。
その後、モモも下痢をしてしまったため、感染症かもしれないという疑いが生じたのですが、タローはすぐに下痢が止まり、食欲も旺盛、元気そのものということで、なんらかの感染症の可能性はないとの獣医さんの判断でした。
モモは出血性胃腸炎と診断されました。タローが来たことが精神的にストレスとなったようです。その後、モモから笑顔がしばらく消えてしまいましたが、タローが来てから1か月経った頃には、モモに明るい表情が戻ってきました。下痢も止まり、現在はとても元気になっています。
犬にも猫にも、人間と同じ感情があります。
哀しい、辛い、苦しい、寂しいという感情がちゃんとあるのです。そして嫉妬もします。 (もちろん、嬉しい、楽しいという喜びの感情もちゃんとあります。)
どんなにタローの事が気に入っていても、モモは、我が家ではわがまま娘のような存在でした。
一人っ子だったのに、突然、弟ができてしまい、家族の関心が自分だけには向かなくなった…そんな感情にきっとモモは陥ってしまったのでしょう。
でも、ママ(私)とパパ(夫)のモモに対する愛は少しも変わってはいない!それをずっとモモに判らせるように努力しました。
その結果、モモのこの笑顔が戻ってきたのです。
みんな同じ立場
マキシも保護猫
モモも保護犬
タローも保護犬
みんな我が家で繋がった命たちです。
買うより、助ける選択を!
↑滋賀県の動物ボランティア”ぼくらはいきている”のchinatsuさん提供の写真
1匹の保護猫と2匹の保護犬たち。我が家で助けられたのは現時点では3匹だけですが、いつまでも何があっても彼らと一緒に幸せに暮らして行こうと思います。
『何があっても、彼らを絶対に守る!』その決意で私は保護犬、保護猫を我が家に迎えています。
最後に
今回、私とタローの出会いを作ってくださった鹿児島で犬猫のボランティア活動をされている”犬猫を助ける会 天使のおうち”さんのフェイスブックページです。
彼女たちは、寄付も集めていらっしゃいますが、基本は新聞紙や段ボール、ペットボトルや缶ボトルなどのリサイクルゴミの廃品回収をして、それで得た収入で保護活動を続けているのです。毎日、たくさんの犬猫たちのお世話だけも大変なのに…犬猫たちのために頑張っていらっしゃいます。
彼女たちの日々の活動には本当に頭が下がります。
最近、悪魔のような人たちの犬猫たちへの虐待事件の報道が続いている中、
犬猫達の幸せだけを考えて行動できる天使のような人たちもいるということをあらためて実感、救われる思いです。
飽きたから捨てる、病気になったから捨てる、老いてきたから捨てる、臭いから捨てる、引っ越すから捨てる、赤ちゃんが生まれるから捨てるなどと、一緒に暮らしてきた犬猫を途中で放り出す人たちも多いですが、彼らも家族です。
彼らは一緒に暮らしている家族の事を愛しています。犬猫たちの愛はとても純粋です。その愛を裏切るような行為はどうかされないで下さい。
ボランティアの人たちがどんなに大変な思いをして、懸命に命を救おうとしているのか、この機会にどうかよく考えて下さい。
そして、いつか日本が殺処分ゼロの国になりますように…
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
40代 女性 リズ
読ませていただきました。
たまたま 里親の募集など 色々 探していて 偶然たどり着きました。このわんちゃん写真を 見たときあの子だ!と思い 拝読させていただきました。涙が出ました、とても 幸せな家族の元へ 頑張って 行けたんだなと 感じました、
私は鹿児島での募集を 見ていて 迷っていました
確か鹿屋のボランティアさんで、私は1時間ほど離れた鹿児島市内に住んでます。何度も見て考えていたのですが そのうち いなくなってしまったので どうなったんだろうと 思いはしてましたが、
ひどいにんげんですね、いつしか 忙しさで 忘れてしまいました。
ボランティアさんも 里親さんに なられた方も 尊敬します。
私も捨て猫3匹育てていますが、子猫からです。
老いたからお別れが近いと辛いなどと、考えていては ダメですね、感動ありがとうございました、ももちゃんとたろーくんとご家族皆様お幸せに、