犬の嗅覚
犬は優れた嗅覚を持っていますが、その嗅覚はどれほどの精度なのでしょうか。今回は犬が嗅ぎ分けられる3つのものをご紹介します。
犬が臭いを嗅ぐ能力
臭いを感じるには、鼻の中の嗅粘膜にある嗅細胞が臭いの分子を取り込み、その刺激を脳に伝えます。その伝わった刺激を脳が臭いとして感知することを「嗅覚」といいます。また、「嗅粘膜の広さ」と「嗅細胞の数」によって臭いを嗅ぐ能力が決まります。
犬の嗅粘膜は表面積が広く、嗅細胞の数も人間よりも多いため人間よりも優れた嗅覚を持っています。人間の嗅細胞の数が約500万個なのに対して、犬は約2億個持つとされています。また、その嗅細胞の感度自体も、人間のそれよりも優れています。
そのため犬の嗅覚は人間の嗅覚と比較すると「100万倍」以上の能力を持っているのだそう。しかし、これは同じ臭いに対して人間の100万倍以上の「強さ」で臭いを感じているわけではありません。犬の嗅覚が優れているのは「嗅ぎ分ける」能力が高いという点です。より緻密な臭いを嗅ぎ分けられるということになります。視覚で例えると、人間が肉眼で見ているものを、犬は顕微鏡でより細部まで見ているという感覚と似ているかもしれません。
犬の臭いの嗅ぎ方
犬は臭いを嗅ぎ分ける能力が優れていることが分かりましたが、実際に犬が臭いを嗅ぐ場合、犬によってもその「嗅ぎ方」が異なり、「間接タイプ」と「直接タイプ」に分類されます。
間接タイプはシェパードやビーグルのような犬種で、下を向いて地面に「残った臭い」を嗅ぐことで臭いをかぎ分けます。一方の直接タイプは「空気中に浮遊する臭い分子」そのもののを嗅ぐことで、獲物の臭いを嗅ぎ分けます。直接タイプはポインターやセッターなどが挙げられます。
これら二つのタイプの違いは、それぞれの犬種が人間によって作出された際の「目的」の違いによるものです。身を隠しているような「獲物を追跡」する猟犬は間接タイプとして、直接獲物の臭いを嗅いでその「方向を飼い主に知らせる」猟犬は直接タイプとして改良されていきました。人間の仕事を手伝う際に与えられた役割に合わせて、臭いの嗅ぎ方も変わっていったのです。
犬が嗅ぎ分けられるもの
犬は「臭いを嗅ぎ分ける」能力が非常に優れています。実際にどういった臭いをかぎ分けることができるのでしょうか。
1.犯人の痕跡
現代で犬の優れた嗅覚を利用しているのは「警察犬」が挙をげられます。警察犬は初めに犯人の遺留品を嗅ぎ、その臭いを覚えます。その覚えた臭いをもとに犯人を追跡をしていくのです。
例えば、人が1日にかく汗のうち、片足の裏から分泌されるのは16cc程の量です。この汗が靴下を通して靴底までしみ込んでいきます。人が歩き回ることで、これらの汗の成分が道に残っていきます。犬はこの微量な汗の臭いを嗅ぎ分けることができるというのです。また、汗が付いた足で草を踏んだ場合でも、その草から発生した臭いと汗の臭いを嗅ぎ分けることができるんだとか。
2.トリュフの匂いや薬物、ガンの臭い
犬は地中にあるトリュフの匂いを嗅ぎつけることもできます。また、空港にいる探知犬などは、特定の食品や薬物の臭いを嗅ぎ分けることができることはご存知ですよね。この能力を使えば、ある物質が1兆倍に希釈されていたとしても嗅ぎ分けることができるほど優れているのだそう。最近は人間の呼気からガンを見つけ出すことができる犬も話題になっています。この能力は最新の医療機器をも凌ぐ精度だといわれています。
3.数日前の臭い
人間の場合は時間が経てば嗅覚の感覚は鈍っていきます。しかし、犬は日にちが経った臭いも嗅ぎ分けることができます。数日前の指紋の臭いや日にちが経って他の空気と混ざった臭いをも嗅ぐことができるのだといわれています。
まとめ
犬の優れた嗅覚は人間の想像をはるかに凌ぎます。猟犬として活躍していた頃から、現代まで、人間は犬のその優れた嗅覚に助けられています。現代医療では発見できないようなガンを先に発見できる場合、どれだけの助かる命があるでしょうか。犬と人間は昔から今でも共存してきた生き物です。これからもその共存生活が正しい方向で使われることを願っています。