保護団体のトレーナー作の詩「I Rescued A Human Today」
アメリカのワイオミング州にレスキュー・ミー・ドッグという名の犬の保護団体があります。新しい家族に迎えられるのを待っている犬たちの保護施設の運営の他に、保護犬を迎えるという選択肢を広めるための活動や、犬を迎えた人たちのサポートなども行っています。
この団体で、保護犬たちや家庭に引き取られた後の犬たちのトレーニングを行っているドッグトレーナーが、詩の作者であるジェニン・アレンさんという女性です。シェルターで新しい家族を待っている保護犬の視点で書かれた素敵な詩をご紹介します。
「今日、人間を救った」
おそるおそる犬舎を覗きながら通路を歩いて来たその人と僕の目が合った。途方にくれてるんだなってことはすぐにわかった。
そして、その人を助けてあげなくちゃいけないこともすぐにわかった。
僕は激しくなりすぎないように慎重に尻尾を振った。その人を怖がらせないように。
その人が僕の犬舎の前で立ち止まった時、僕はちょっと前に出て粗相が見えないようにさえぎった。
今日は散歩に出ていないことを知られたくなかったから。
シェルターの人たちはいつも忙しくて、たまにはそんな日もある。
だけどそのことでシェルターの人たちが悪く思われてしまうのはイヤなんだ。
犬舎のプレートに書かれた僕のプロフィールを読んだその人が、僕のことを哀れだと思いませんように。
僕はやってくる未来を楽しみに待っていて、誰かの役に立ちたいと思っているんだから。
その人はひざまずいて、僕に向かってチュッチュッと舌を鳴らした。
僕はその人をなぐさめようとして、犬舎のバーの隙間に肩をねじ込んで、顔の片側を押し付けた。
優しい指先が僕の首を撫でてくれた。
その人は心の底から仲間を求めてた。
その人の頬に涙が落ちた。
「大丈夫だよ。僕がいるから。」と伝えたくて、そっと前足を上げた。
犬舎の扉が開けられ、その人のキラキラした笑顔が見えて、僕は腕の中に飛び込んだ。
僕はいつでもこの人を守ることを約束する。
僕はいつでもこの人のそばにいると約束する。
僕はこの微笑みと瞳の輝きを絶やさないためなら何だってすると約束する。
この人が僕のいる通路を歩いて来てくれて、僕はラッキーだ。
この世界には幸せの待っている通路を歩いたことのない人がたくさんいる。
助けの必要な者はもっとたくさんいる。
僕は少なくともそのうちの一人を救った。
今日、僕は人間を救った。
まとめ
保護犬と言えば、普通に考えると「救われる側」の存在です。けれどもここで紹介した詩の中では人間の方が救われる側の存在になっています。
私自身も2匹の保護犬出身の犬と暮らしていますが、犬たちから助けられていると感じることがたくさんあります。
保護犬に限らず、犬と暮らしていると、そんな風に感じたことのある方は多いのではないでしょうか。
犬がいたずらをしたり、病気や怪我をしたり、しつけに頭を悩ませたり、助けどころか手と心を煩わされることもたくさんあります。
でも、そんなことに泣き笑いしながら、犬のおかげで学んだり気づいたりすることも助けのひとつのような気がします。
この詩が、犬の方が救う側になっているのは「犬の助けは犬の方から来るもので、人間が癒されたいとか救われたいという思いで犬を求めてはいけないのですよ。」と伝える意味もあるのではないかとも思います。先に書いたように、犬との暮らしは楽しいことばかりではないので、最初の目的が「癒されたいから」では、あまり幸せな未来が見えてこないですものね。
「犬を助けたい」と思って日々を過ごしていたら、ある日ふと助けられていたのはこちらだったと気づく。犬とそんな関係を築いていけたらいいなと思います。
《参考》http://rescuemedog.org/dog-blog/i-rescued-a-human-today-by-janine-allen/ Copyright 2017 Rescue Me Dog; www.rescuemedog.org