あらすじ
主人公「セイ」は、自殺未遂の常習者。政府の方針により、「生きる義務を放棄した者」として戸籍などを抹消され、意識を失っている間に無人島に送り込まれます。
目を覚ますと、「セイ」と同じようにさまざまな理由で生きることを拒絶し、自殺未遂を繰り返してきた者達もその無人島「自殺島」に送り込まれていました。
自殺志願者だった「セイ」ですが、その島で「生きること」を選んだ仲間達とともに作物を育て、狩りをしていく中で、「生きていることの意味」や、「命」がとても尊いものであることを体感し、成長していきます。
みどころ
「自殺島」に登場する人物は、全てなんらかの理由で自ら命を断とうとした人達です。作中に命を落としてしまう人もいますが、主人公「セイ」と敵対せず、ずっと仲間でいたキャラクター達は、最初はとても小心で、自分勝手で、弱虫で、なんでも人のせいにする人達ばかりでした。
ところが、ストーリーが進むにつれ、敵対するグループが現れたり、せっかく生きようとしているのに、また自殺するようそそのかしたりするヤツが現れたりと、いろいろな問題が起きますが、その困難を越えて行くたびに、主人公の「セイ」も、「セイ」の仲間たちもどんどん強く、誠実でまっすぐな人間に成長していきます。
見どころは、人間の「命」であれ、動物の「命」であれ、「命」とは、かけがえのないもの、この上なく大切なもの、というメッセージが、決して押しつけるようではなく、それぞれのエピソードを読むごとにしっかりと胸に響くところです。犬好きとしての見どころは、「セイ」の狩猟のパートナー、「イキル」。
無人島だと思っていた「自殺島」には実は人が一人だけ住んでいて、その人が飼っていた仔犬を一匹犬を譲ってもらい、「セイ」はこの仔犬を「イキル」と名付けました。この「イキル」は本当に利口で、狩りをする時も「セイ」の意思をくみ取り、非常に優秀な猟犬ぶりを発揮します。
また、敵対するグループと闘う時も、非力な女性達を守るために「イキル」をその場に残すほど、「セイ」は「イキル」の戦闘力と知能を絶対的に信頼していて、「イキル」もその信頼に応えます。容姿はたくましい野犬そのもので、戦う姿はとても精悍でカッコイイのですが、「セイ」と「セイ」の恋人「リヴ」には、「クウ~ン」と甘える声を出す「イキル」もとても可愛いのです。
心に残ったシーン、心に残った台詞
心に残ったシーン
単行本11巻の終盤で、敵対するグループをせん滅するかどうかで意見が分かれ、「セイ」は恋人の「イブ」と「イキル」と一緒に、ずっと一緒に過ごしてきた仲間の元を離れる決心をします。
実際にその旅立ちのシーンは、最終回でもないのに、それまでのさまざまシーンが回想されて、主な登場人物達は皆、それぞれの思いを抱えながら二人と一頭の旅立ちを見送ります。ずっと、一巻から読み続けてきた読者からすると、本当に胸と目頭が熱くなるシーンです。
心に残った台詞
敵対するグループに攻撃を仕掛けることに「セイ」は迷い、戸惑います。なぜなら、「セイ」の弓の腕は、人の命を奪う力があり、恋人の「リヴ」も弓を使えるため、一緒に攻撃することになります。
自分だけではなく、ともに行動する「リヴ」にも、人を殺めさせてしまうかもしれない…と。「セイ」は土壇場で攻撃する決断が出来なくなります。その時、「リヴ」は言います。
「私は、セイの背負うもの全て、…一緒に背負う」と。実は、この二人が恋人になる過程を読んで置かないと、この台詞のすごさ、迫力は伝えられないので、ぜひ、一巻から読んで頂きたく思います。
作者、掲載雑誌、連載時期
自殺島 1 (ジェッツコミックス)
- 作者 森 恒二
- 掲載雑誌 ヤングアニマル(白泉社)
- 連載時期 2008年11月14日 ~ 2016年8月26日
まとめ
正直、絵柄は好き嫌いがあります。けれども、人間の苦悩、人間の醜さ、人間の素晴らしさ、強さ、弱さ、人間とは、本当にいろいろな感情を持っていること、命とは本当にかけがえのないものだということ、生きている意味を自分で見出せなくても、生きているのならば、なにかしら生かされている意味がある…と教えてくれる漫画です。ぜひ、たくさんの人に読んで頂きたい名作です。
ユーザーのコメント
女性 かさね