どんな状態を下痢と見なす?実はこんな便の状態もSOSサイン

診察時に飼い主さんたちとお話ししていると、下痢や消化器のトラブルの認識になる便の状態にそれぞれの過程で差があるように感じることがあります。
ご家庭で何か指標にしていることはありますか?
普段の便の状態が実はやわらかめの下痢に近い状態だったということもあるでしょう。
以下の状態の便は消化器のトラブルのSOSサインでもあります。
水下痢
最も注意すべき状態です。
本来、腸は小腸で消化をしながら栄養分を吸収して、大腸で水分やミネラルを吸収することで便を固めて排出します。
排出のために、絶えず蠕動運動をして口から入ってきた食物を肛門へと送り出します。
水下痢の場合、消化吸収能力の低下や蠕動運動が活発になり過ぎている可能性が考えられるでしょう。
慢性化することで、栄養吸収不良や脱水に陥る危険性があります。
軟便
トイレシーツや散歩時に排せつするように決めている家庭も多いでしょう。
便をつかむときにシーツへの付着やつかむために使用したティッシュへの付着なども観察していますか?
普段はころころとした便が、少しシーツに残ってしまったり、うまくつかめないこともあるでしょう。
その場合、便に水分が多く含まれているため、やわらかい便になっていることで、付着がある可能性が高いです。
腸による水分吸収の不充分さや、蠕動運動の活発さにより腸の通過が速くなってしまっているのかもしれません。
疲れや精神的な負担などで腸運動や腸内環境が乱れることもあるため、一時的なもので改善するのであれば様子を見ても良いと思いますが、慢性的な経過をたどるようであればじゅしんをおすすめします。
粘膜便、粘液便
便の硬さはいつも通りなのに、周りをゼリー状のものが覆っている、便が硬いのに最後だけゼリー状のものが出てきたなどの場合、粘膜便や粘液便と表現することが多いです。
便とは全く異なる物質が出てくることでびっくりする飼い主さんも多いですが、大腸で炎症が起きている場合、水分吸収が充分に行われず、腸から分泌される粘液や炎症を起こした腸粘膜が便に付着するものです。
大腸炎のような腸の炎症が示唆されるため、持続したり悪化したりするようであれば治療が必要でしょう。
下痢が続く場合に考えられること

下痢が起こると一時的な腸運動の変化などの消化機能の問題を連想しがちですが、持続するのであれば他の可能性を考えなければなりません。
下痢は致命的な問題になりにくいイメージがあり、長期間様子を見てしまいがちですが、持続することで栄養失調や脱水に陥って体力を消耗させる危険性があります。
脱水や体力の消耗が重度になると、致命的な問題につながる危険性があるでしょう。
異物の影響
異物を食べてしまった場合、腸閉塞による嘔吐や食欲不振につながるイメージがありますが、部分閉塞の場合、食物が肛門まで通過はしますが、異物により消化管運動に異常が起こり、下痢が慢性化したり、何度も繰り返す可能性があります。
飼い主さんのみていないところで愛犬が異物を口にしてしまい、便からも排出されずに消化管内にずっととどまっている可能性があるため、思い当たらない場合でも、長期化している場合は受診や検査が必要です。
アレルギーの関与
生後半年から生後2~3歳くらいになって腸炎を頻繁に起こす場合、アレルギーも関与している可能性が考えられます。
多くは食物性であることが多いため、反応の原因となるアレルゲンを特定し、摂取を控える生活をおくることが必要です。
療法食である低アレルゲン食に切り替えることや、免疫反応を抑える薬の投与を行う治療が一般的です。
腫瘍や慢性腸症、膵臓などの器官による問題の可能性
原因不明の慢性的な腸の炎症を慢性腸症と呼びます。
アレルギーや細菌の増殖、感染などが関連しない慢性的な腸の炎症の場合、慢性腸症と判断をし、抗菌薬や消炎剤の治療、消化器に負担のかかりにくい療法食を使用した治療を行うことが一般的です。
他にも腸の腫瘍や腸付近のリンパ腫など悪性度の高い腫瘍の場合も慢性的な下痢を起こすことがあります。
また、下痢というと腸内環境や腸運動の問題と連想しがちですが、消化に関連する膵臓に異常がある場合もあります。
これらの場合、下痢の程度が悪化することも多く、致命的な問題につながりやすい傾向があるため注意が必要です。
早期発見及び早期治療が大切です。
慢性的な下痢の場合、どんな治療や検査が必要?

軽度の下痢の場合、便検査をして抗生剤や下痢止めの治療を行うことが一般的ですが、慢性の下痢の場合、どんな検査や治療が必要なのでしょうか。
違いはあるのでしょうか。
血液検査
膵臓などの腸以外の消化器の問題を調べるためや、異常な白血球の増加、炎症反応の有無、消化管からのたんぱく質の漏出の有無などを調べるために血液検査を行うことは有意義です。
原因の究明だけでなく、投薬治療の経過や、現在の状態を都度モニタリングするために、受診の都度行なう場合があります。
項目は疑われる疾患によって異なるでしょう。
かかりつけの先生からの、血液検査結果から考察されることをしっかり聞いて理解することが大切です。
内視鏡検査
腸粘膜の状態や、付近のリンパ節の状態、腸の組織を開腹せずに採取して、診断を行うために内視鏡検査は有意義です。
開腹手術に比べて、体力の消耗が少ないことはメリットと言えますが、全身麻酔下で行う必要があるため、持病がある犬の場合は大きな負担となってしまうためリスクがあるというデメリットがあります。
リスクと検査によって得られる利益とどちらをとるかということをかかりつけの先生と相談しながら決めることが大切です。
食事療法
慢性的な下痢の場合、投薬は欠かせませんが、併せて大切なのが療法食による食事療法です。
嗜好性の高いごはんが食べられずかわいそうに感じる場合もあるかもしれませんが、投薬と併せて療法食で消化器への負担を軽減することで、より治療効果が期待できます。
慢性的な下痢の場合、より良い状態での消化器の維持をするために、かかりつけの先生と相談しながら食事の質や食事の量、頻度をコントロールしましょう。
療法食もたくさんの種類が存在し、原因に応じた適切なものを選択することが大切です。
下痢が治らないからと言って、飼い主さんの自己判断で療法食を与えることはおすすめできません。
受診や検査をして、原因を特定してから適切な療法食を処方してもらうようにしてください。
まとめ

致命的な問題になりにくい下痢は長期間様子を見てしまいがちですが、腫瘍や一般的な腸炎以外にも考えられる疾患の可能性が潜んでいます。
長期間、充分な栄養吸収が行われず、脱水状態に陥ることで愛犬の体にも大きな負担をかけることとなるでしょう。
早期に解決できるよう、普段と違う便の状態に気づいたらできるだけ早めに受診することをおすすめします。



