犬の鼻はすごかった!優れた嗅覚の理由
匂いの認識までのメカニズム
鼻の穴を通った匂い分子は、吸い込んだ空気を貯める鼻腔に入ります。
鼻腔表面の、嗅上皮細胞膜の嗅粘膜と呼ばれる粘液物質に匂い分子が溶け込み、嗅細胞から伸びている繊毛によって匂い分子は受容体へ導かれ、嗅神経を刺激します。嗅神経から運ばれた電気信号は、脳の嗅球が受け取り情報処理がされ、視床を介して大脳皮質嗅覚野へと情報が送られて“匂い”として認識されます。
犬にはもう一個鼻があった!?鋤鼻器とは?
犬には嗅覚器の補助器官として、鋤鼻器(じょびき)というものがあります。
鋤鼻器は、犬の上顎の犬歯のすぐ後ろ側にあって、鼻の穴に抜ける細い管で、鼻口蓋管という組織へとつながっています。性行動に関する匂い、いわゆるフェロモンを感知すると言われています。
多くの動物には備わっているこのフェロモン感知器ですが、人間にはありません。
匂いの嗅ぎ方には2タイプ
シェパードやビーグルなどは、クンクンと地面をなめるように匂いを嗅ぎますが、この嗅ぎ方は「間接タイプ」と言われています。
一方、ポインターやセッターなどは「直接タイプ」と呼ばれる匂いの嗅ぎ方で、地面の匂いを嗅がずに、空気中に浮遊する匂い分子を嗅ぎます。
これらの違いは、元々獲物を探し出して捕まえる手法の狩猟を行っていた犬種と、鳥撃ちなどで鳥の匂いを嗅いで見つけ、人間に知らせるタイプの狩猟を行っていた犬種由来の習性の違いからくるものでしょう。
犬のマズルの長さで嗅覚の鋭さが違う
マズルが細長い犬(長頭型)がいれば、そうでもない犬(中頭型)、鼻ぺちゃ犬(短頭型)もいますが、実はマズルの長さによって嗅覚レベルに差がありました。
特に嗅覚が優れているとされるマズルが細長い犬種(グレイハウンドやジャーマンシェパード)ほど、匂い分子を吸着する嗅上皮と呼ばれる細胞膜の面積が広いことが分かっています。
また研究では、いわゆる鼻ぺちゃ犬と言われる犬種(パグやボストンテリアなど)は、そうでない犬種よりも脳が前後に押され、嗅球と呼ばれる嗅覚情報を束ねる部位が頭蓋骨の下方にずれ込み、機能不全に陥っている可能性が指摘されています。
2016年に出た研究報告では、短頭型の犬種はやや嗅覚が劣るという結果が出ています。
犬の嗅覚はこんなにすごい!
犬vs人間~嗅覚器官~
犬は人間よりもずっと優れた嗅覚を持っていることは、身体的に見ても一目瞭然でしたね。
匂い分子をキャッチする、鼻腔の表面積の比較です。
- 人間 3~4平方cm
- 犬 18~150平方cm
表面積が大きければそれだけ嗅細胞が存在しますので、これでだけでも犬の嗅覚が人間より優れているのがわかります。では、脳の匂いに関する情報処理を行う嗅球の大きさ(重さ)も見てみましょう。
- 人間 約1.5g
- 犬(中型犬) 6g
脳の大きさは人間は犬の約10倍ありますので、単純計算だと犬は人間の40倍もの大きさの嗅球を持っていることになります。
嗅覚に関する身体的な構造は、人間よりもずっと発達していることがわかりますね。
犬vs人間~嗅覚能力~
犬がもっとも得意な分野、刺激臭の感知は人間の1億倍の能力と言われています。
一般的な匂いでは、人間の100万倍以上だそうです。
メス犬の発情期には、オスは8km離れた場所にいるメスを感知するなんていう報告もあります。
まだあった、すごい犬の嗅覚能力
犬の嗅覚が人間の100万倍以上優れていると前述しましたが、それは100万倍強く匂っているというわけではありません。
強く匂っている、というよりは、「嗅ぎ分けることに優れている」ということです。犬には複数の混じり合っている匂いを、それぞれ嗅ぎ分けることが出来るという素晴らしい能力があります。
警察犬が、さまざまな匂いの中から目的の匂いを追うことが出来るのは、この能力あってのことでしょう。
また、左右の鼻孔を別々に動かして、匂いがどこからやってきたのか感知することができます。
まとめ
犬の鼻が濡れているのも、優れた嗅覚にひと役買っています。匂い分子が付きやすくするということと、風向きを感知して匂いのやってくる方向を知るということです。
この嗅覚の素晴らしさを使って、世界中にはたくさんの職業犬がいます。警察犬や監察犬、最近ではガン患者の尿の匂いを嗅ぎ分ける犬がいるなど研究が進んでいます。
猫は視覚が優れていて、犬は嗅覚が優れている、と良く言いますが、本当に犬の嗅覚の素晴らしさには感心しますね。人間には敵わない能力に、愛犬を尊敬しちゃいます。
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40代 女性 RYUCH