心理学が考える「心の病の治し方」
まずは、実際に心理学ではどのように心の病を治しているのかを説明したいと思います。
心理療法の目的
心理学者ジークムント・フロイトは、悩みや問題を抱えて、心の健康を損なった人に対して、「無意識の意識化」、わかりやすく言うと、『なぜ悩んでいるのか、何に対して悩んでいるのかを他者に打ち明けることで、自分が無意識に抑圧していた感情を意識する事』これができれば、心の病が治ると考えました。
これは、現在でも多くの心理療法に取り入れられている、「無意識に抑え込んでいる感情を明確に意識する」事を心理療法の目的とする考え方です。
悩みを打ち明ける相手としての犬
人は悩み事を他人に打ち明けるとき、心から信頼出来る親しい人に悩みを打ち明ける人や、カウンセラーなどの専門家に悩みを相談する人もいます。
そして犬を飼っている方の場合、感情的なストレスを多く抱えている人は、人間よりも犬に悩みを打ち明けやすいと言われているんです。
悩んでいる人の心には、孤独や思い通りにならないもどかしさ、腹立ち、憤り、虚しさや悲しみなど複雑な感情が渦巻いています。
そしてそれらを、『全て理解出来る訳ではないけれど、そんな複雑な感情を抱えている人の心の痛みを、犬は察知する事が出来るのではないか』と思うことが、犬を家族として一緒に暮らしている人なら経験があるかも知れません。
実はこの『犬が人を癒やし慰める能力がある事』を実験で証明した人がいるんです!
ロンドン大学のジェニファー・メイヤー氏の実験
ロンドン大学のメイヤー博士が行った実験では、18匹の様々な犬種を、飼い主のいる部屋と初対面の人がいる部屋に招き入れ、部屋にいる人々に、突然悲しそうに泣いたり叫んだりするよう指示したところ、18匹のうち15匹の犬は、自分が夢中になってやっていることを止めてでも泣いている人に寄り添い、彼らに触れるという行動をとったそうです。
犬達は、飼い主だけでなく知らない人に対しても同様の態度を取り、なんと10匹に8匹以上の割合で、犬は人を慰めるという行為を示したそう。
メイヤー博士によると、
「これらの犬の行動は 誰かを慰めるために抱きしめたりおもちゃを与えたりする、人間でいうところの幼児(3-4歳)と同等の対応である。1.2歳の小さな子どもは、誰かが泣いていれば一緒に泣き出すが、なぐさめようとはしない。故に犬のこの行動は、人間が成長するにしたがって得る、社会的な精神の成熟の現れである」
と結論づけました。
リンカーン大学のアイスリン・エヴァンス・ワイルデイ氏の研究
リンカーン大学のワイルデイ氏は、『人間が本音を語ったり悩みを打ち明ける相手は、自分のパートナーとペットの犬ではどちらが多いのか』ということを調べたそうです。
この研究はオンライン調査によって選ばれた、232人の女性と74人の男性でを対象として行われ、その結果、特定の感情を伴う悩みの種類によっては、犬のほうが話しやすいという傾向が見られたそうです。
調査に参加した被験者の中でも、女性の方がペットに自分の悩みを語ることのほうが多かったようですが、悩みの種類によっては人間のパートナーに打ち明けたいという答えもあり、その内訳としては『落ち込んだり、嫉妬、無気力な感情を伴う悩み』などはペットに、『怒りや恐怖などの感情を伴う悩み』は男性のパートナーに話すと応えた女性が多くいたそうです。
また、男性は打ち明ける相手をパートナーとペットで使い分けるという事はしないようです。
最後に
”言葉は話せないけど、あなたの気持ちはわかるんだ”
もしかしたら、犬達はそう思っているのかも知れません。
犬達に悩みを打ち明けても、アドバイスを貰えたり、熱い言葉で励ましてくれる訳ではありません。
ですが、あなたという存在が、今、目の前にいて、なんの雑事に煩わされずに自分だけを見て、自分だけに心の中の苦しさを晒してくれている事に、あなたのワンコは誰よりも真摯に、真剣に、そして誠実に応えようとしてくれるでしょう。
「言葉がわからないんだから、言うだけ無駄だ」と思わずに、あなたが悩みを打ち明ける言葉、その言葉に込められた悩みや苦しみを、ワンコに打ち明けて見ましょう。
ただ、相槌も打たずにあなたの言葉に耳を傾けてくれるだけですが、ワンコはあなたを信じ、あなたの全てを肯定し、あなたは必要な人間で、あなたは正しいのだ信じ切っている存在です。
そんな存在が、実験で証明された不思議で確かな「人を癒そうとする力」を発揮して、あなたの心に寄り添ってくれる事。
「犬に悩みを打ち明けると、心の健康が回復する。」と言う説を、信じてみてはいかがでしょうか。