麻酔が必要となる処置
麻酔が必要になるケースとはどのような場合なのでしょうか。
麻酔をかけずに行える処置もありますが、わんちゃんへの負担をかけないようにするために麻酔が必要な処置もあります。
健康な場合でも必要なケースや、疾患になったことがわかって治療の一環として外科的な処置が必要なケースが考えられます。
避妊・去勢手術
病気の予防のために、そして望まれない命が増えてしまわないために、避妊手術や去勢手術はとても有意義です。
しかし、女の子の場合は開腹手術を、男の子も開腹手術はしないものの、切開が必要であるため痛みなどを軽減するために麻酔をかけることは欠かせません。
一般的には短時間で済む手術ですが、麻酔を使用することで多少の負担を体に欠けることになります。
若齢で行なうことが多く、持病を持っていることがわかった状態で臨むことは少ないですが、稀に体質や気付かれていなかった持病などのためにトラブルにつながるケースもあります。
歯石除去・抜歯
加齢とともに歯石の付着や歯周病の発覚、状態の悪さなどにより抜歯を要する場合、そして若齢のわんちゃんの場合でも乳歯がずっと残ってしまい抜歯が必要になる場合もあります。
獣医歯科学で、歯周病の治療および予防のための口腔内の処置は麻酔下で行なうべきとされています。
歯周ポケットが深くなってしまっている場合や奥歯の歯石や歯垢などをしっかりと除去するために、より安全に行うために麻酔下での処置は欠かせません。
特に高齢になって歯周病であることが発覚した場合などは、持病によっては麻酔をかけることで大きく体に負担をかけてしまう場合もあるため、事前に麻酔をかけることが可能かどうかという評価をしたうえで行なうケースが一般的です。
腫瘍の切除
腫瘍があることがわかった場合、体表や体表に近い場所であればまずは針を刺した細胞検査などで腫瘍の種類を特定します。
腫瘍の種類によって切除した方が良いものなのか、すべきものなのか、化学療法などの内科学的治療や放射線治療を要するのかなどをかかりつけの先生や専門医の先生と相談していくことになります。
内科的な治療方法も含めた治療の選択肢がある場合もありますが、外科的な治療が不可欠な種類の腫瘍もあります。
どの治療方法を選択することでどの程度の余命になるかということも踏まえて、飼い主さんも理解をしたうえで麻酔下での外科的な処置に臨むかどうかを相談して決定することが大切です。
麻酔をかけるうえで気にするべきこと
麻酔をかけるというと怖いイメージを持つ飼い主さんも多いかもしれません。
また、どんなに健康で管理を徹底した場合であっても麻酔をかけて体に負担をかける以上、数パーセントでもリスクがつきものであるという話を動物病院でされる場合も多いです。
獣医さんたちはどんなことを気を付けて麻酔手術の可否を考えているのでしょうか。
全身状態
まず、わんちゃんたちの全身状態について評価します。痩せすぎていないか、太りすぎていないかなどの目に見えるものはもちろんですが、血液検査結果などを見ながら体内の器官がきちんと機能しているのか、出血した際に止血する機能が作用するかなども評価します。
また当日も術前に血液検査をすることで手術直前の全身状態を把握することが一般的です。持病や栄養状態などを含め、手術の可否やリスクがどの程度あるのかということを飼い主さんも把握したうえで手術を行うかどうかということを決められると安心と思います。
獣医師の先生任せではなく、おうちのわんちゃんの状態がどのような状態で、懸念点はどういう点なのかということをしっかり聞いたうえで、心配な点などを話し合える関係性だと理想的です。
既往歴
持病の有無も麻酔をかける際に大きく関係します。例えば肝臓の疾患がある場合であれば、麻酔の代謝に関与する可能性があり、慎重に評価する必要があります。
また、内分泌疾患による代謝の問題や循環器、呼吸器の問題も麻酔をかけている間の状態の安定に関与する可能性が高いです。
手術が決定をしたら、手術の日までに状態を安定させられるよう持病の治療をすすめたり、手術中の麻酔管理の方法などをその子の状態に合わせて行えるよう計画を立てることが一般的です。
そのためにも、かかりつけの先生の所での手術もしくはきちんと紹介状などで獣医師間でのやり取りによりわんちゃんの状態を把握した上での手術であれば安心ですが、飼い主さんが転院などで初めてやり取りをする動物病院などでは既往歴などについてきちんと説明をし、必要であれば改めて転院先の病院できちんと全身検査を受けてから、先生と相談しながら手術を検討することをおすすめします。
起こり得るリスクへの対処
既往歴や全身状態などで手術を回避できるのであれば問題ありませんが、予後をよりよくするためやわんちゃんの負担を軽減してあげるために手術が回避できない場合もあります。
その場合、リスクと今後起こり得るトラブルや残される余命などを考慮してどちらの選択肢を選ぶかという決断をしなければなりません。
手術をするという選択肢を選んだ場合、起こり得るリスクに対する対処を考える必要があります。例えば、手術中の器官への負担を軽減するために人工呼吸器を使用したり、点滴を流しながら手術を行うなどのその子の状態に応じた処置を行う場合があります。
おうちのわんちゃんで懸念されるリスクや、そのリスクに対してどのような対処をする予定なのかということも不安であればかかりつけの先生に確認してみても良いでしょう。
麻酔を要する処置が必要かもしれないとわかったら?
麻酔のリスクを考えたうえで、手術を回避する方法があれば一番安心かもしれませんが、麻酔を用いた手術が今後のために不可欠なケースも考えられます。
かかりつけの先生から麻酔を用いた処置や手術の選択肢を提示された場合、飼い主さんはどんなことを考えたらよいでしょうか。
飼い主さんの不安な部分への対策は?
まず飼い主さんが麻酔に対して不安を感じていないか、ご自身だけでなく家族間で話し合うことが大切です。
どんなことを行なうかわからなくて不安、どんなリスクがあるかがわからなくて不安、術後すぐに麻酔から覚めることができるかわからなくて不安、など不安に思うことは様々でしょう。
思った不安に対して、まずはかかりつけの先生にどんなことを不安に思っているか相談することはとても大切です。
診察が忙しそうだったり、他の飼い主さんがいる場でお話をすることをためらうなどの問題がある場合、まずは受付時でも診察時でも良いのでその旨をお話してみると良いと思います。
その場では難しい場合も、後でお話をする時間を作ってもらえたり、お電話で話す時間を作ってもらえる可能性などが考えられます。
外科的な処置以外に選択肢は?
どうしても麻酔を用いた処置や手術が怖いと感じる場合、治療の選択肢は他にはないのでしょうか。
わんちゃんの予後や負担を軽減するために、麻酔を用いた外科的な処置が欠かせない場合もありますが、もしかしたら他の内科的な治療方法もあるかもしれません。
それぞれの方法でメリット、デメリットの双方があり、今後の生活や治療方法、金額的な問題のすべてを考慮して決定することが一般的です。
きちんと今のわんちゃんの状態を理解した上で、どの方法が最善なのかということをかかりつけの先生の見解も聞きながら決められると理想的です。
術後の治療計画について
麻酔をかけて手術をしたら終わりというわけではありません。その後の完治までの治療の計画について、かかりつけの先生の見解を確認すると安心です。
例えば、麻酔によってかかった負担を入院によって回復させることが一般的ですが、どの程度の負担がかかり、どのようなリスクがかかって、よい場合はどの程度の入院になるのか、最悪のケースではどのように対処をすることを考えているのかなども想像だけでは悪い方へと考えが及びがちですが、専門家であるかかりつけの先生の意見を聞いておくと、その後の生活のイメージもつけやすくなるかもしれません。
入院の日数を減らしたい、心配だからできれば面会に来たいなどの飼い主さんの考えも処置や経過によって難しい場合もありますが、治療計画の中に含ませてもらえる可能性もあります。
あくまでも治療方法を決定するのは獣医師であり、もちろんすべてが希望通りになるわけではありませんが長期に渡る治療をおこなっていくうえで飼い主さんとの信頼関係を大切にしてくださる先生も多いです。
不安に思っていることなどは率直に話してみることをおすすめします。
まとめ
おうちのわんちゃんが、健康に少しでも長く一緒にいてくれることを望むことはどんな飼い主さんも一緒でしょう。
麻酔を行なう処置というと、含まれるリスクを考えて怖い想像をしてしまったり、あまり良いイメージを持てない場合もありますが、麻酔をかけて行う処置によって負担が軽減できたり、病気の原因を除去するためにも欠かせない治療方法であることもあります。
病気のことなど専門的で難しいお話であることも多いですが、まずはおうちのわんちゃんが抱える問題について、そしてこれから行われることについてかかりつけの先生のお話を良く聞いて理解をすることはとても大切です。
理解をしたうえで、疑問に感じていること、不安に感じていることなどをかかりつけの先生としっかりお話をして、信頼関係を築けるとリスクのある手術でもより安心をして受けられる可能性が高まるでしょう。