療法食とは
「療法食」とは、特定の疾病や栄養状態にある犬や猫の「食餌療法」に利用することを目的としたペットフードです。
動物病院にかかり病気が発覚した時、またはちょっと心配な状態の時に、治療と同時にまたは治療に先んじて、療法食を勧められる場合があります。
療法食は、日本でも30年以上取り入れられているものであり、登録されている療法食は年々増え続けています。
療法食の栄養特性は一般のフードとは違い、栄養成分の量や比率を調整されていたり、特別な方法で製造されていたりします。
そのため、療法食は獣医師の診断や適切な指導に基づいて使っていかなければなりません。
自己判断で療法食を取り入れてしまったり、また止めてしまったりすることで、愛犬に健康被害を及ぼしてしまう可能性もあるのです。
市販のフードとどう違うの?
療法食の基準は、「獣医療法食評価センター」という団体が管理しており、
「ペット栄養学会」の監修協力を得て作成されています。療法食として登録されている製品には、「登録療法食マーク」が付いています。
例えば、市販のフードでも「下部尿路疾患に配慮」「腎臓に優しい」「アレルギーのある子に」などの表記があるものがありますが、療法食としての基準を満たしているものではありません。
療法食は成分の調整や原料を限定していること、また製造過程が特殊なことから、どうしても市販のフードよりも高額になりがちです。
「今まで療法食を食べさせていたけれど値段も高いし、いちいち動物病院に行くのは面倒。市販の似たような効果があると書いてあるものにしようかな。」と自己判断で変更してしまう飼い主さんも少なくありません。
しかし、市販のフードでは病気に対する食餌療法の効果が、療法食よりも低い場合もあるのです。
現在療法食を食べているけれど変更したい、という場合には必ずかかりつけの獣医さんに相談してください。
どんな病気に療法食が必要?
獣医療法食評価センターが定めている、「食餌療法が適応となる特定の疾病や健康状態」には、以下のものが挙げられています。
- 慢性腎機能低下
- 下部尿路疾患(尿石症)
- 食物アレルギーまたは食物不耐症
- 消化器疾患
- 慢性肝機能低下
- 慢性心機能低下
- 糖尿病
- 高脂血症
- 甲状腺機能亢進症
- 肥満
- 栄養回復
- 皮膚疾患
- 関節疾患
- 口腔疾患
非常に多くの疾患が挙げられていますね。
さて、一言で「下部尿路疾患」といっても、作られている尿石の種類によって、療法食の基準は全く違ってきます。
泌尿器の疾患だからと混同されやすいですが、「慢性腎機能低下」と「下部尿路疾患」でも病態は全く違いますし、療法食の基準も違います。
「肝機能低下」や「消化器疾患」の中でも、いくつかの病態があり、それぞれに適する療法食も違います。
「皮膚疾患」だからと療法食を与えていたがよくならない。実は「食物アレルギー」だったということもあります。
ここに挙げられている多くの「特定の疾患」の中でも、さらに様々な疾患に細かく分かれているのです。
愛犬が病気になり食餌療法が必要となった時、必ず獣医師の指導のもと療法食を始めてください。
似たような名前の他の製品を購入することで、ひどい時には病気を悪化させてしまう場合もありえます。
療法食はずっと続けなくてはいけない?
一度療法食を処方されたからといって、それを必ず生涯続けなくてはならない、ということはありません。
慢性疾患だとしても、状態は日々変化していくものです。
その時の愛犬の状態に合った療法食を選択していかなくてはなりません。
もちろん、かかりつけの獣医さんに相談し、定期的に病院にかかることが大切です。
定期的な診察や検査を受け、今の状態を把握しておくことが必要になってきます。
療法食は、市販のフードと比べて嗜好性が落ちることがあります。
食いつきが悪かったり、残しがちになったりすることもあるかもしれません。
「食べる姿を見る」というのは飼い主さんにとっても幸せな時間の一つ。できれば美味しく食べてもらえると嬉しいですよね。
しかし療法食を食べている時には、なかなかフードの変更ができません。
しっかり運動やストレス発散をしたり、フードを温めたりふやかしたりすることで、食いつきが上がることもあります。
投薬もおこなわなくてはならない場合、薬=食事と嫌なイメージを植え付けてしまう可能性もありますので、投薬を別にするなどの工夫も必要です。
おやつや投薬補助食品などを使用したい場合には、獣医さんに相談してください。
長期間続けることもある療法食。
金銭面での不安や、愛犬の食いつきが悪い、他のメーカーの製品を試したい、市販のフードに戻したいなど、不安や相談はささいなことでも構いませんので獣医さんに相談してください。
その子に合った療法食の進め方や、変更の仕方などを必ずアドバイスしてくれるはずです。
厳しいことを言われてしまう場合もあるかもしれませんが、病気の治療や維持をおこなっていく上で必要なことであるとご理解ください。