犬の動物病院へのかかり方!診察を受ける準備から注意点まで獣医が解説

犬の動物病院へのかかり方!診察を受ける準備から注意点まで獣医が解説

犬を動物病院につれていく際、こんなことに気をつけていただくと診察がスムーズに進みますといったことを、獣医師の視点からお話します。

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1997年、酪農学園大学獣医学科を卒業後、動物病院に勤務。2005年から2023年9月まで動物病院院長。得意分野は、東洋医学(漢方)。26年間の臨床経験をもとに、ペットの病気、ペットの飼い方、ペットと人との関係などについて、私が思っていることを実体験ベースでお話していきます。 ペットを飼育している人、これから飼いたいと思っている人の参考になればと思います。

犬を動物病院につれて行く前にやってほしいこと

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動物病院に犬を連れて行く際、飼い主さんにやっておいてもらいたいことがあります。

排便、排尿を済ませておく

朝、散歩にいって排尿を済ませた犬であっても、動物病院に行く直前にはもう一回排便排尿をさせておきましょう。

病院に着くと、いろんな動物の匂いがあるからなのか、待合室で排尿や排便をしてしまう犬がいます。

犬の性質上やむを得ないともいえるのですが、病院スタッフの手間にもなってしまいます。

なるべく用足しをさせてから来院するようにしましょう。

また来院の目的が、下痢や尿の出が悪いといったような場合には、その時の便と尿を少量持っていくと診察の助けになることもあります。

興奮する犬はあらかじめ肛門腺を絞っておく

診察しようとすると、興奮して毎回のように肛門腺を撒き散らす犬がいます。

ご存知の方も多いと思いますが、肛門腺の匂いはキツイですね。

しばらくの間、診察室中が肛門腺の匂いになってしまいます。

できれば、興奮する犬の場合は来院する前に、自宅で肛門腺を絞っておいたほうがいいです。

とはいっても、これはなかなか難しい場合が多いようです。

そういう犬に限って、なかなか肛門腺処置を自宅ではやらせてくれません。

無理しない程度に、できたらやっておくといいでしょう。

首輪は首から抜けないようにしっかりとつける

首輪がゆるい犬が多いと思います。

確かにきつすぎてはかわいそうです。

しかし、犬をひっぱった時に首からすぽっと、首輪が抜けてしまってはつけている意味がありません。

動物病院に入るときに、抵抗する犬は少なからずいるものです。

やはり、大概の犬にとって、動物病院は嫌な場所だと思います。

犬が入るのを嫌がって抵抗したとき、飼い主さんはリードを少し引く必要があります。

この時にリードのついた首輪が抜けてしまい、犬が逃げてしまったというシーンを何度も見てきました。

なかには、そのまま国道に出てしまい、あやうく車にひかれるところだった、ということもあります。

そうならないためにも、動物病院に行く前には首輪をチェックして、多少ひっぱっても首からぬけないようにしてください。

首輪は、およそ指2本くらい入れば犬の負担にはなりません。

動物病院につれていく人

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一人暮らしの人の場合は、飼ってる方が病院につれていくのですが、家族で暮らしている場合は連れていく人によって診察時間が変わってくることがあります。

犬をきちんと扱える人がつれていく

病院に犬を連れていく時は、犬をしっかりコントロールできる人が連れていくようにしましょう。

最近は、犬をコントロールできる人が減ってきたという感じがします。

飼い主が「静かに!」といってもなかなか吠えやまなかったり、じっとしていられない犬も多いですね。

はしゃいでも友好的ならまだいいのですが、問題は攻撃的な犬です。

診察室にはいるなり、ウ~、と威嚇してきます。

診察台に乗せることも、エリザベスカラーをつけることもできません。

噛んでくるからです。

飼い主さんは、「すみません。この子私にも噛んでくるのです。主人だったら扱えるのですが」とおっしゃいます。

こういう場合は、初めからご主人に連れてきてもらったほうがスムーズに進みますね。

実際、この方には一旦おかえりいただき、翌日ご主人さんに連れてきてもらいました。

普段世話をしている方が奥様でしたので、奥さんのほうが犬の状態には詳しく、それで連れてこられたのです。

ですが、診察台に載せたり、暴れる犬をおとなしくさせたりなど、ある程度犬をあつかえる方がいないと診察が難しくなってしまいます

犬の症状を説明できるひとが必要

診察をズムーズに進めることが、一番犬の負担を減らすことにつながると考えています。

もちろん、飼い主さんにとってもはやく終わったほうがいいですよね。

先ほどの例でいいますと、もしご主人さんが一人で犬を連れて来られたとしたら、普段しっかりと見ていないため、犬の症状を獣医師にうまく伝えることができないかもしれません。

こういうケースがあります。

「犬が調子悪いから病院につれて行って、と娘に言われたんだ」とお父さんが診察室でおっしゃいます。

ただし、お父さんは犬をあまり見ていないらしく、犬がいつくらいから具合が悪くなったのかも、よくわからないそうです。

これだと、診察がスムーズに進みません。

お父さんには娘さんに電話をかけてもらい、症状などを聞いてもらうことにします。

時間がかかってしまうのです。

やむを得ず、代理の方が連れて来られる場合には、普段世話をしている方に症状と経過をよく聞いておいてください。

また、飼い主さんが高齢で、話し声がよく聞こえないといったこともあります。

その場合はむしろ積極的に、代理の方と一緒にきてもらったほうがいいです。

代理の方が、あらかじめ犬の症状を飼い主から聞いておき、それを飼い主に変わって獣医師に伝えると診察がスムーズに進みます。

日本は、これからますます高齢化社会になっていきます。

高齢者の方は、犬が病気になったときに、自分と一緒に動物病院に行ってくれる人をみつけておくといいと思います。

緊急時には麻酔などの判断ができる方が連れていく

犬が異物を飲み込んでしまった、ひどい怪我を負ってしまった、などの場合は処置に麻酔が必要となる場合も少なくありません。

そんな時に麻酔をかけることの了承を獣医師は飼い主に確認します。

その際、その判断が自分ではできないといった方がたまにいらっしゃいます。

飼い主の了承なしに麻酔をかけるわけにはいきません。

大抵の場合、判断ができる方(飼い主)に電話をかけて了承をとれば済むことではありますが、緊急時にはできるだけ、入院や麻酔の判断ができる方がつれて来たほうがいいですね。

犬が高齢の場合、飼い主さんによっては入院は望まないといった方もおられます。

他の方に頼んで連れていってもらった場合、飼い主はすぐに電話に出られるようにしておくとよいでしょう。

夏は注意

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ここ数年、日本の夏は異常なくらい暑い日がありますね。

犬は寒さには強いのですが、暑さにはとても弱い動物です。

特に、幼犬や老犬、パグなどの短頭種は注意が必要です。

キャリーバッグに注意

夏の車内はすごく暑いですね。

夏はエンジン停止後、わずか30分で車内温度が45℃にまであがることもあります。

数年前のことですが、飼い主さんがインロックをしてしまい、車中に取り残された犬が短時間で熱中症になってしまったことがありました。

幸い、車の窓が少し開けてあったのと、犬がキャリーに入っていなかったため命は助かりました。

もしその犬がキャリーバッグに入っていたとしたらと考えると、ぞっとしますね。

キャリーバッグの中は想像以上に熱くなります。

確かに犬を車に載せて移動する時は、安全のためにキャリーバッグに入れたほうがいいです。

ただしその場合は、強めにエアコンを効かせるようにしてください。

キャリーバッグに入れると、興奮する犬の場合はさらに体温が上がってしまいます。

自分の犬が毎回キャリーバッグのなかでクルクルまわったり、息が荒くなるといった様子が見られる場合には、自宅にいるときから時々キャリーに入れて、慣らしておくといいでしょう。

夏は健康診断に連れていくことは避けよう

7月にパグを健康診断につれてこられた方がいました。

その犬はいつも診察室に入ると、興奮して息が荒くなる犬だったのですが、その時はそのまま倒れてしまったのです。

病院スタッフも飼い主さんも、びっくりして大慌て。

診断は熱中症でした。

短頭種はこれが怖いです。

幸い、点滴入院して命は助かりました。

短頭種だけではなく、夏にキャリーを開けてみると少しぐったりしている犬がたまにいます。

治療するほどではありませんが、軽い熱中症になっていることがあるのです。

短頭種や、病院に来ると興奮する犬の場合は、健康診断は冬に行ったほうがいいと思います。

健康診断に行って、具合が悪くなってもつまらないですからね。

それに、冬期は動物病院も比較的空いていることが多いため、病院によっては健康診断の料金を夏場より安くしていることもあります。

予約も取りやすく、犬が熱中症になるリスクも低い冬に健康診断を行うことをおすすめします。

診察室では他の犬や子供に近づけさせない

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犬を飼っている者同士、コミュニケーションをとることに私は賛成します。

ただし、動物病院は散歩中の公園とは違って、犬が普段より緊張している場合があるということを飼い主さんには頭に入れておいていただきたいのです。

私は待合室で診察待ちの犬が、他の犬を噛んでしまったという場面に何度か出くわしています。

その経験から、待合室では一応ほかの犬には近づかせないようにしたほうがいいと思っています。

なかには、私もよく知っているとてもおとなしい犬が、他の犬を噛んで怪我をさせてしまったということもありました。

普段は、人や他の犬を噛むような犬ではありません。

あとで話を聞くと、噛まれた犬の飼い主が「わたしがいけなかったんです」と言っていました。

かわいい犬だったんで、「お友達だよ」と言って、つい自分の犬を抱っこしながらその犬に近づけてしまったとのことでした。

犬は急に近づいた他犬に驚いたのかもしれません。

犬はかなりきつく噛まれていましたが、幸い命には別状ありませんでした。

噛んでしまった犬の飼い主さんもとても申し訳なく思っていたのと、自分の犬がこんなふうに他の犬を噛んでしまったことに、少しショックをうけた様子でした。

犬だけでなく、ちいさなお子さんの手を噛んでしまった犬もいます。

それも、ふだんは友好的な犬でした。

しかし、頭を撫でようとした子の手を、急に牙を剥いて強く噛んでしまったのです。

犬は動物です。

普段おとなしくても、緊張のあまりいつもとはちがった行動にでることもあります。

動物病院はふれあいの場ではないということを、飼い主さんには知っておいてもらいたいと思います。

動物病院スタッフの負担をへらす行動を

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私が通っていた歯科医院から、休診日が増えるとのお知らせがありました。

スタッフの負担を減らすためということでした。

働き方改革が叫ばれて久しいですが、獣医療の現場も例外ではありません。

それどころか、他の職場に比べても長時間労働が多い獣医療現場では、スタッフも疲弊していることが多く、離職する人も少なくないのです。

電話相談は極力ひかえる

電話で症状を長々と伝えて、このまま自宅で数日様子をみればいいのか、病院に連れて行ったほうがいいのか、相談されるかたがいます。

動物病院としては、「一応診せてください。電話ではわからないので」と伝えることがほとんどです。

その後で、ほとんどの方が病院へ連れて来られるのですが、電話対応はスタッフの手間となり、少人数でやっている動物病院では診療に支障をきたすこともあります。

予約不要の病院なら、電話なしで直接来院されたほうが早い場合が多いです。

朝一の来院はなるべくひかえる

動物病院だけではないかもしれませんが、朝一番の時間は混み合うことが多いですね。

特に動物病院では、入院中の動物の世話に一番時間がかかるのが開院前です。

スタッフはバタバタしていることが多くなります。

要するに一日で最も忙しい時間帯が開院直後です。

この時間にしか来れないとか、夜中から犬の具合がおかしいといった、やむを得ない方のためにこの時間帯はなるべく空けておきたいと思います。

それ以外の方は少し時間をずらして来院するようにしたほうが、待ち時間も少なく、病院スタッフの負担も減らせるのではないでしょうか。

診察室では写真を撮らない

SNSの普及にともない、スマホで写真を撮っている人をあらゆる場所で見かけるようになりました。

動物病院の診察室でも、診察中の自分の犬や診察室の中を写真で撮る人がいます。

大抵の病院スタッフは、そういった行為を快く思っていないのではないかと思います。

病院によっては、スタッフに一声かけていただければ写真も大丈夫ですよ、と言っているところもありますが、本音はできればやめてほしいんだけどね、ということが多いようです。

病院内では、写真撮影はNGだと思っていただいたほうがいいでしょう。

その都度、診療がストップしてしまい、犬にもストレスとなるのではないでしょうか?

笑顔で対応しているスタッフにも、多少なりともストレスになっていることが多いと感じます。

病院は命に関わることを行う場所です。

エンターテイメントとは切り分けて考えたいと思っています。

まとめ

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動物病院に犬を連れていくときの注意点や、マナーなどを今回は説明いたしました。

健康診断などの急を要しないことは、冬期に行う、これは犬や飼い主の負担をへらすことにもなると思います。

また、今回の記事では、獣医師や、動物看護師といった動物病院スタッフへの負担を減らすといったこともお話させていただきました。

動物病院側が飼い主へのサービス向上を考える場合、スタッフの健康がベースにないとサービスは成り立ちません。

飼い主様一人一人のほんの少しの工夫が、動物病院スタッフの気持ちにゆとりをもたらす、と私は考えています。

参考にしていただけたら幸いです。

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