犬の「薬の飲ませ方」小さなコツと注意点を獣医が解説

犬の「薬の飲ませ方」小さなコツと注意点を獣医が解説

病気になった時、どうやってワンちゃんに薬を飲ませればよいのか。小さなコツと注意点を説明していきます。

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麻布大学獣医学部獣医学科卒業。
卒後いくつかの動物病院で勤務を重ね、現在は神奈川県内の動物病院で、一般診療をおこなっています。
飼い主様とワンちゃん、ネコちゃんがより幸せに過ごせるよう、行動学や歯科、内科などに力を入れて勉強しています。

犬の「薬の飲ませ方」小さなコツと注意点

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具合が悪くなって、動物病院へ。すると「お薬を出しておきますね。」と言われましたが・・・うちの子に薬なんて飲ませたことがない!飲ませ方ってどうすれば?という方は、意外と多くいらっしゃいます。

病気になった時、どうやってワンちゃんに薬を飲ませればよいのか。小さなコツと注意点を説明していきます。

薬の種類について

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使われる薬の剤型は様々ですが、人間とほぼ変わりません。

一番多く取り扱われているのは、やはり「錠剤」。

体重の小さな子の場合や、錠剤がない場合には「粉薬」や「液剤」も使われます。中に液体や粉薬が入っている「カプセル」もあります。

また、「動物用医薬品」というのは実は種類が少なく、人間用の「医薬品」を用いていることが多くあります。

勿論、人には使えるけれども犬には使えない薬もありますので、自己判断で自分の薬を犬に与えるのは、絶対ダメです!

動物用医薬品として販売されている薬は、体重別に処方できるよう分割しやすくなっていたり、飲ませやすいように犬が好みそうなフレーバーを付けてあったりします。代表的なものとしては、ノミ・ダニやフィラリアの予防薬がありますね。

飲み薬の必要性

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動物病院で「先生、注射で治りませんか?」と聞かれることは少なくありません。

飲み薬でも注射薬でも、多くの場合お薬が体に入って代謝されて排泄されるまでの時間に差はありません。となると、1日2回の飲み薬を注射にすると、1日に2回も通わなくてはなりません。しかもそれは1日で治るものではないのです。

心臓や肝臓など慢性疾患をかかえてしまった場合、生涯お薬を飲まなくてはいけないという治療になることも少なくありません。アトピーやアレルギーで痒みをおさえるために生涯、もしくは数ヶ月お薬を飲むこともあります。化膿や炎症などで抗生物質を使う場合も、数日は必ず服用してもらう必要があります。治りきらないうちに止めてしまうと、耐性菌を作って再発してしまうなどの問題があるからです。

「お薬が飲めないこと」で治療を諦めてしまわなくてはならない、なんて悲しい選択をしなくてもいいように。お薬を飲むことが嫌なイベントにならないよう、小さなコツを説明していきます。

エサに混ぜるやり方

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「うちの子は食いしん坊だから!フードに混ぜちゃえば全然気づかず食べちゃうのよ!」とおっしゃる飼い主さんは、特にワンちゃんでは多いなと感じます。しかしよく考えてみてください。人間よりもはるかに嗅覚の優れている犬が、エサに混ざっている薬の匂いや味に「気付かない」なんてことはないと思いませんか?

食べることが大好きな子であれば、「何かいつもと違うものが混ざっているけど・・・?それよりもお腹空いた!ごはん美味しい!」と食べてくれます。要は「気付かない」のではなく、「気にならない」のです。

これを実践するには、「食べることが大好きなこと」と「食欲があること」が大事です。

食欲があり、ドライフードでも喜んですぐに完食するワンちゃんでしたら、いつものフードの中に錠剤を放り込んでも食べてくれることがあります。

薬を混ぜ込むのに、例えば缶詰やパウチなどのウェットフードは、ドライフードよりも使い勝手が良いと思います。ウェットフードの方が好きで特別感があるならば、なおさら薬を混ぜても「気にならない」で食べてくれることでしょう。しかし、食べ慣れていないものを病気の時に色々食べてしまうのは良くありませんので、ごく少量の使用に留めましょう。例えばお腹を壊している時、薬を飲むために美味しいものを食べすぎては、さらに胃腸に負担をかけることになります。

また「空腹は最高のスパイス」ですので、食べ始めの一口目に薬を混ぜた部分がくるように工夫しましょう。お腹が空いていて「気にならない」うちにお薬を混ぜた少量のフードを与え、薬も含めて完食したら残りのフードを与えると良いでしょう。

エサに混ぜる際の注意点

「錠剤だと混ぜ込みにくいため、粉にしたいです。」という方もいらっしゃいますが、薬の種類によっては剤型を変えてしまうと、十分な効果が出ない場合もあります。剤型を変えたい場合には必ず動物病院で相談してくださいね。

よく陥りがちな失敗としては、「好物(美味しいもの)に包んで薬を与えたら、好物だけを食べて薬を残してしまうので、さらに好物で包むことを繰り返す。」という例です。これは「好物をおかわりさせている」という状態になってしまっています。本当は「薬を飲んだら」「好物をもらえる」という順番で学習させたいのですが、「薬を残す」と「多く好物をもらえる」といった間違った学習の仕方をさせています。そういった子はすでに「薬を気にせず食べる」ことが困難になっています。ここで薬を飲むためにさらに美味しい好物を用意してしまうと、悪循環に陥りかねません。

この状態に陥らないためにも、ワンちゃんの喜ぶご褒美をオヤツ以外にも見つけておきましょう。例えばお気に入りのおもちゃ、散歩に行く、オーバーリアクションで褒めてあげるだけでもとても嬉しいワンちゃんもいます。「薬を飲んだら」「嬉しいイベントがある」という学習に是非取り組んでみてください。

投薬補助食品(オヤツ)を使う

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現在、ペットショップや動物病院でも「投薬補助食品」を取り扱っているところが多くあると思います。

フードに混ぜても薬を飲んでくれない子には、パンやチーズなどを使ってお薬を飲ませる方法もよく取り入れられますが、例えばアレルギーのある子や慢性疾患で食餌に制限がある子などは、使える食材が限られてきます。また、うまく包めなくて苦労するといったこともあるかと思います。

投薬補助食品は、ある程度の粘度や柔らかさのあるオヤツで、お薬を包みやすく、美味しいニオイを強くしたりして投薬を楽にしてくれるアイテムです。人間のお子さんでもお薬を美味しく飲むためのゼリーなどがありますよね。色々なメーカーで取り扱いがありますので、低脂肪のものや低アレルゲンのものなども開発されています。気になった方はお店や動物病院などで相談してみてください。

口に直接お薬を入れて飲んでもらう

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お薬の種類によっては、少ないですが空腹時に飲まなくてはならないお薬もあります。また、病気で食欲のない時にお薬を飲ませなくてはいけない場合もあります。

その場合には「口を開けて直接投薬する」方法をとります。

犬の口をめくって見てみると、上顎の犬歯の後ろには少し隙間が空いています。利き手と逆の手でまず、左右のその隙間に指を差し込んで、犬の上顎を軽く握ります。利き手では薬を持ちながら、下顎の先端に指をかけてゆっくりと口を開き、喉の奥へ薬を入れます。少し顔を上に向けて喉をさすると「ごっくん」と飲んでくれる感覚が分かると思います。

さて、ここで大事なのはこのイベントを、ワンちゃんが嫌がらずにおこなえるかどうかです。おうちのワンちゃんはお口周りを触らせますか?お口の中に指を入れても怒りませんか?マズルという「口吻」を握られるのは、ワンちゃんにとっては最大の武器である口を封じられる死活問題。本能的に嫌がるところです。決して過度な力を加えてはいけません。

この方法は、お口に触らせないワンちゃんが一朝一夕で出来る方法ではありません。もちろん成犬になっても口を触るトレーニングはできます。しかし病気になってから「さあ、やるぞ!」といって出来るものでもないのです。子犬の頃から、または健康な時から、お口周りを触ること、お口を開けることに慣れていくトレーニングは必要です。薬を飲ませる実践の前に、フードの粒やオヤツなどで、直接投与の練習をするのも良いですね。成功したらよくよく褒めてあげてください。

最近では犬も歯磨きを習慣にしましょう!という啓発がよくおこなわれています。歯周病もワンちゃんにとって重大な病気の一つ。お口やお口の中を触るトレーニングをしていくと、歯磨きも嫌がらずにさせてくれるようになります。

まとめ

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一緒に暮らしていると、どうしても人間よりも早く年を取っていってしまうワンちゃん。お薬を飲む必要がある時は、必ずと言っていいほどやってきます。少しでも長く健康でいてもらうために、お薬を飲ませる練習はいつでも取り組んでおいてください。

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