介護期にはマッサージがオススメ
シニア期に入ったり病気などで身体を動かす機会が減ったり、飼い主さんによる介護が必要になるワンちゃんも珍しくはありません。
シニア期に入り徐々に体の機能や筋力が低下していくのはごく自然なことではありますが、だからと言って何もケアをしないままではケガをしやすくなるなどのデメリットもあります。
そこで、ぜひ介護の一環として飼い主さんに行ってほしいのが「愛犬の体のマッサージ」なのです。
正しい手順で愛犬の体をマッサージすると、体を適度に動かせるので筋肉へのいい刺激となり血行促進にもつながるので、体調不良や体の冷えが改善しやすいなどの効果も期待できますよ。
また、飼い主さんとの良いコミュニケーションの場にもなるので、わんちゃんのストレス発散にもなるかと思います。
ただし、安全にマッサージを行う際には「正しい手順」だけではなく「注意点」も覚えておく必要があります。
ぜひ、最後までよくお読みになった上で、マッサージを試してみてくださいね。
愛犬へのマッサージ方法
ここからは、介護期の愛犬のためにできるマッサージ方法を、体の部位ごとにご紹介していきます。
順番に全身へのマッサージを行うのでもいいですし、「うちの子は特にここのマッサージが必要かもしれない」と感じた部分のみを行うのでもいいですよ。
ご自宅のワンちゃんの様子や体調とも相談しながら、ゆっくり行ってみましょう!
耳元
まずは「これからマッサージを始めるよ!」という愛犬への合図も兼ねて、耳元を軽くマッサージするのがオススメです。
愛犬の耳の付け根を優しくつまんだら、数回ぐるぐると回しましょう。そして、耳の付け根から先端へとゆっくり指を滑らせていきます。
耳のマッサージを気持ちいいと感じる犬は多く、このマッサージをするとうっとりしたお顔を見せてくれるワンちゃんも珍しくありません。中にはそのまま眠ってしまう子もいるほどです。
ワンちゃんの様子も確認しながら、ゆっくり行ってみてくださいね。
首周り
犬は四つ這いでいることが多いので、首や肩周りの筋肉が凝りやすいと言われています。シニア期では特にこの凝りが強くなるので、ひどい時には首を上げられなくなってしまうこともあります。
人間でも首や肩がお疲れ気味の人は多いですが、ワンちゃんも同じなのですね。
愛犬の首をマッサージする際には、後ろから軽く掴んで数回もんであげるようにしましょう。皮膚を3秒ほど持ち上げてスッと離してあげるのも、血行が促進されやすくなるのでオススメです。
これを数回行ったら今度は前側、ワンちゃんの鎖骨あたりに手を添えます。首から胸へとゆっくり撫でていき、ワンちゃんの首や肩の凝りをほぐすようにイメージしましょう。数回行ったら反対側の鎖骨も同じように撫でてくださいね。
背中
人でもそうですが、背中は筋肉が大きく体全体とつながっているので、疲れも溜まりやすい部分です。首とも直結しているため、首や肩の凝りがそのまま背中へと広がっている場合もあるでしょう。
背中は筋肉が大きい分、マッサージもしやすく方法も至ってシンプルです!飼い主さんの手を愛犬の頭からお尻へと、背骨に沿ってゆっくりと数回撫で下ろしていきましょう。
何度か行ったら、背中から足先へ…など、他の部位へと手を撫で下ろしていくようにして血やリンパの流れが全身へ届くようにするのもいいですね。
お尻周り・後肢
年齢を重ねたワンちゃんで弱くなりやすいのが、お尻や後肢(後ろ足)の筋肉です。
腰から足先へ、ゆっくり円を描くようにしながら撫でていきましょう。何度か繰り返したら、飼い主さんの人差し指と親指でワンちゃんの肉球を優しく掴み揉んであげてくださいね。
ただし、肉球がひび割れなどを起こしている時には無理に揉むのは避けましょう。肉球のひび割れには、日頃から犬用の保湿クリームなどを使ってケアしてあげるのがオススメです。
お腹
普段からお腹を撫でられるのが好きというワンちゃんも多いかもしれませんね。そんな子にはもちろん、シニア期のワンちゃんにもお腹のマッサージは特にオススメですよ。
というのも、シニア期に入ると胃腸や消化機能など目には見えない内臓部分にも衰えが出始めます。すると、食べたものがうまく消化されなかったり、消化されたとしても排泄が滞ったりということも珍しくはありません。
お腹のマッサージを定期的に行ってあげると、そうした蠕動(ぜんどう)運動の手助けとなるので、愛犬の便秘予防にもつながりますよ!
ワンちゃんのお腹が見えるように抱えたら、飼い主さんの手のひらで「の」を描くようにゆっくりお腹をさすりましょう。
この時、「排泄を促そう」と思って強く押してしまうのは絶対にNGです!愛犬の内臓にダメージを与えてしまうこともあるので、あくまでもゆっくり優しく行いましょう。
マッサージでの注意点
介護期の愛犬に飼い主さんが簡単に行えるマッサージ方法をご紹介しましたが、これらのマッサージを行う際には注意点もいくつかあります。
マッサージを行う前に、もう一度よく確認してみてくださいね。
注意1:食後は避ける
愛犬へのマッサージは、できるだけ食後を避けるようにしましょう。
食後にマッサージを行うと、本来であれば消化のために消化器官へと回されるはずの血流が、血行促進によって他の部位へと流れてしまいます。
つまり、消化器官の働きが悪くなり消化不良を起こしてしまうのです。
愛犬の体を想って行うマッサージが、かえって体調不良につながっては本末転倒ですよね。マッサージを行う際には、食事が終わって最低でも2時間ほど時間をあけると安心です。
注意2:爪は短くする
当然のことながら、マッサージは飼い主さんの手を使って行いますよね。飼い主さんの爪が長いと、ワンちゃんの体を傷つけてしまう恐れもあります。
愛犬へのマッサージを行う際、飼い主さんの爪は短くして、指輪などのアクセサリー類も外しておくと安心ですよ。
注意3:手を清潔にする
愛犬に触る際には、忘れずに手を清潔にしておきましょう。特にシニア期のワンちゃんは肌も敏感になっているので、少しの汚れなどがかぶれにつながってしまうケースも珍しくありません。
飼い主さんはマッサージ前には手をよく洗い、犬への刺激になるものは触らないように注意しましょう。
手洗い後のルーティンとして、消毒用のアルコールやハンドクリームを使っている飼い主さんも、この時だけは我慢してくださいね!
注意4:手を温める
犬の体温は高いので、飼い主さんの手が冷えていると驚かせてしまうこともあるかもしれません。
すると、せっかく気持ちよくマッサージをしても、ワンちゃんは「冷たい」ということが気になって嫌がってしまいますよ。
愛犬の体をマッサージする前は、お湯やカイロなどでしっかり飼い主さんの手を温めておくようにしましょう。
また、飼い主さんの手荒れがひどい時には双方のためにも日を改めるか、柔らかく触り心地のいい手袋などを使用して行ってくださいね。
注意5:優しく行う
先ほども少しお話しましたが、つい力を入れてマッサージしてしまうと愛犬の内臓に負担となる危険も考えられます。
軽く撫でるだけでも十分に血行は促されるので、愛犬へのマッサージでは常に「優しく」を心がけましょう。
また、優しく行っているのにワンちゃんが痛がったり嫌がったりする素振りを見せたら、無理に続けずにすぐにマッサージを中断してください。
目では分かりづらい不調が隠れている可能性もあるので、早めに動物病院で相談してみてくださいね。
愛犬が気持ちいいマッサージを
マッサージと聞くと「テクニックが必要?」と心配になる飼い主さんも多いかもしれません。しかし、愛犬へのマッサージには特別なコツは必要ありません。
繰り返しになりますが、優しく撫でるだけでも血行促進には十分ですし、何より大好きな飼い主さんが撫でてくれること自体がワンちゃんには何よりも嬉しいものなのです。
愛犬の様子もよく見ながら、1日5分程度を目安にマッサージを行ってみてくださいね。
以前はトリマーとして従事していたが、愛犬の死をきっかけにペットロスカウンセラーへと転身。現在では、Rapport Cielの代表として、ペットロスカウンセラーやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する様々な記事の執筆を行う。 著書「ペットロスで悩んだときに読んでほしい愛犬の死がきっかけで平凡主婦がペットロスカウンセラーとなって起業した話: 「意外」と驚かれるペットロスとの向き合い方 (ラポールブックス)