【獣医が解説】春の行楽シーズンに要注意!外部寄生虫(ノミ・マダニ)で起こる犬へのトラブル

【獣医が解説】春の行楽シーズンに要注意!外部寄生虫(ノミ・マダニ)で起こる犬へのトラブル

お散歩にも出かけやすい春が到来しました。わんちゃんも活動的になれる季節ですが外部寄生虫も活動的になる季節です。では、どんなトラブルに注意が必要なのでしょうか?

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麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

外部寄生虫とは?

掻いている犬

「外部寄生虫」という名前を聞いたことがありますか?体表に感染し、害を及ぼす寄生虫のことを総称して「外部寄生虫」と言います。

では外部寄生虫とはどのようなものなのでしょうか?実はお散歩中など、身近に感染のリスクが潜んでいるため注意が必要です。

ノミ

わんちゃんに感染する可能性のあるノミの種類は2種類あり、「ネコノミ」「イヌノミ」が存在します。

どちらもわんちゃんに感染する可能性がありますが、活動性の違いなどからネコノミの感染の方が主流と言われています。

わんちゃんなのにネコノミという名前のノミが感染することに違和感を抱きますが、どちらのノミも宿主特異性は少ないとされている種類です。体表に寄生をし、吸血を行います。

マダニ

マダニも同様に体表に寄生し、吸血をします。幼ダニであれば栄養を得ながら成長します。特に山間地域のわんちゃんやアウトドアに良く出かけるわんちゃんは注意が必要な寄生虫です。

山や森などの自然の多い場所で感染するイメージがありますが、野生動物に付着して環境に落とされることもありますので、住宅街でも野生動物が見られるような場所であれば草むらなどで存在する場合もあります。

最近では人獣共通感染症の「SFTS(重症熱性血小板減少症)」を媒介することでも注目されています。

なぜ外部寄生虫に気を付けないといけないの?

ぐったりしている犬

特に気を付けなければいけない外部寄生虫は上記2種になります。どちらも同様に吸血する寄生虫であることがおわかりいただけたかと思います。

では、寄生虫の感染によって、どのような害が起こるのでしょうか。

外部寄生虫感染によって起こる害

ノミやマダニは体表に寄生をし、吸血を行います。皮膚をもぞもぞとするような不快感や皮膚炎などのトラブルを起こすことが多いです。

体質によってはノミのアレルギーなども起こす子もいるので注意が必要です。

この場合、大量の寄生がなくても一匹が吸血を行ってノミからの成分が体内に入るだけでもアレルギー反応を強く起こすこともあるので、ノミアレルギーのわんちゃんは、より予防や対策を取ることをおすすめします。

大量寄生により不快感は増し、吸血の程度も増すので貧血を起こす危険性もあります。

外部寄生虫を介して起こる病気の二次感染

前述したSFTSもマダニによって媒介される病気の一つです。SFTSウイルスがマダニを媒介して感染し、わんちゃんも発症例が報告されています。

この病気の怖いところは飼い主さんに感染する人獣共通感染症であるということです。

他にも地域によりますが、マダニの媒介するバベシアという寄生虫によって起こるバベシア症という病気もあります。この病気の場合、有効な治療法があまりないことが知られています。重症になると貧血になって死に至る危険性もある怖い病気です。

他にも消化管に寄生する条虫という寄生虫はノミを媒介して感染します。この寄生虫の感染により、下痢などの消化器症状が見られることが多いです。

どんなところで感染は起こり得る?

散歩中の犬

住宅地からあまり出ないため、感染する可能性は低いのではないかと思う飼い主さんも多いかと思いますが、実は身近に感染のリスクが潜んでいるのをご存知ですか?

具体的には以下のようなシチュエーションで感染をしてしまう危険性が考えられます。

お散歩で

お散歩に出るわんちゃんがほとんどだと思いますが、お散歩のコースにも感染のリスクは潜んでいます。

草むらや野良ネコちゃんなどが集まる砂場などの場所は野生動物たちの体から落ちたノミやダニが潜んでいて、体につけてしまうことがあるため注意が必要です。

都会の住宅街でも、野生動物や野良ネコちゃんの存在する地域であれば、環境にノミやダニが落とされている可能性があり、感染に至らせてしまう危険性があるため安心ができないことも多いです。

わんちゃんがたくさん集まる場所で

ドッグランなどのわんちゃんが多く集まる場所にも注意が必要です。感染しているわんちゃんが近くにいた場合にノミやダニが環境にいたり、体に付着して感染が起こってしまう危険性があります。

わんちゃんたちが集まる場所によっては、ルールとしてノミダニ予防を行っている子でないと中に入れないなど、決められている場合もあります。

飼い主さんを介して

飼い主さんが外部寄生虫を持ち込んでしまうこともあります。

野良猫さんなどのお世話をしている飼い主さんや、かわいくてつい外の猫さんを触ったり、そばに寄ったりしている飼い主さんもいると思います。

日本では少ないですが、野良犬さんなども外部寄生虫を持っている可能性のある動物と言えます。

皮膚などに付着すると気づくケースが多いですが、衣服などに付着する場合は気付かずに家庭に持ち込んでしまうことがあります。

お家の中に入る前に衣服を払う、こまめに洗濯をするなどの対策することで、感染のリスクを減らすことができるでしょう。

他にも気を付けたい外部寄生虫

掻いている犬

実は気を付けなければならない外部寄生虫はノミとマダニだけではありません。以下の寄生虫も皮膚トラブルにつながり、わんちゃんの体に大きな負担をかけます。

耳ダニ

正しい名称はミミヒゼンダニという名の外部寄生虫です。耳道に炎症を起こし、激しい痒みをもたらします。

野生動物などから感染したり、耳ダニに感染した動物と接触したり、飼い主さんに付着して感染が広まることもあります。

頭を振ったり、耳垢が黒くかさぶた状の塊で見られるなどの変化が現れることが特徴的です。激しい痒みはわんちゃんの負担にもなり得るので、早期治療をしてあげてください。

疥癬

山間部などの自然の多い場所や、野生動物の通り道などで感染してしまうことのあるダニの一種です。

激しい皮膚炎を起こし、人にも感染する外部寄生虫であるため、飼い主さんにも皮膚症状が現れる危険性があります。

どこか普段出かけない場所に出かけた後に、皮膚を激しく痒がるようになったり、脱毛が激しい場合は疥癬による皮膚炎の可能性も考えられます。早期治療のためにも受診をおすすめします。

まとめ

軽度の感染では致命的になりにくい外部寄生虫感染なので、予防に関しても後回しにしてしまいがちですが、感染すると不快感や二次感染などわんちゃんの体に大きな負担が与えられるため、より健康に快適に過ごすためにも予防は大切です。

また、お散歩やドッグラン、ペットホテルなど他のわんちゃんと接触する機会のある子たちは、他の子からもらってしまうだけでなく感染源となってしまうこともあり得ます。

飼い主さんにとって、おうちのわんちゃんが大切なように、他のお家のわんちゃんも、そのお家の飼い主さんにとっては大切なわんちゃんです。

たくさんのわんちゃんそれぞれが、みんな健康で快適でいられるように、飼い主さんのマナーとしてもお家のわんちゃんの外部寄生虫予防はきちんと行いたいですね。

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