動物介在介入(アニマルセラピー)とは?
アニマルセラピーという言葉は、よく耳にしますが実際はどういったものなのでしょうか?広い意味では、動物との触れ合いによって、人々の心が癒されることを示しています。
「疲れて帰宅した時に、愛犬が尻尾ふりふりでお出迎えしてくれて嬉しくなる」 「自分の膝に寄り添って、なでるとトロンとした表情を見せてくれて、手触りの良さとリラックスした愛犬の表情やしぐさに癒される…。」など。
こんなペットとのふれあいも、広い意味ではアニマルセラピーの一つだと言えるでしょう。
しかし、一般的にアニマルセラピーと呼ばれているものは、人間の疾患の治療補助や、QOLの維持や向上、教育効果などの目的を達成するために動物を介在させて、それらを円滑に行えるよう手助けすることを意味します。
学術的には、動物介在介入(英語では、Animal Assisted Intervention)と表現されています。
ヒトと動物との相互作用の正しい理解を促進させるために国際的な協会であるIAHAIO(International Association of Human-Animal Interaction Organizations)において、国際的なアニマルセラピーのガイドラインが設けられているのです。
ちなみにIAHAIOにメンバーとなる日本の団体には、2023年1月現在、
- 一般財団法人 J-HANBS、
- 公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)、
- 特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター(JSDRC)、
- 公益社団法人Knots
があります。
動物介在介入(アニマルセラピー)の4つの分類
では、アニマルセラピーと呼ばれる動物介在介入とは、どんなものなのでしょうか?
IAHAIOでは、4つに分類されています。
- 動物介在活動(Animal Assisted Activity)
- 動物介在療法(Animal Assisted Therapy)
- 動物介在教育(Animal assisted Education)
- 動物介在指導(Animal Assisted Coaching/Counseling)
今回はIAHAIOの分類に基づいて、日本で実施されている動物介在介入(アニマルセラピー)の内容を紹介しますね。
動物介在活動(Animal Assisted Activity)
老人ホームなどの高齢者施設や、障がい者施設などで、実施される動物とのふれあい活動のこと。一般的にアニマルセラピーと呼ばれている活動の多くは、この「動物介在活動」になります。
犬や猫などの動物とふれあうことによって、施設の入所者さんたちの情緒的な安定をもたらしたり、動物の訪問がレクリエーションになったり、QOLの向上や維持につながることを目的にしています。
この活動に参加する犬は、セラピー犬と呼ばれています。健康管理や衛生管理などがきちんと行われ、基本的な行動がハンドラーの指示に従ってでき、人が好きなどの適性が認められた犬に限られています。
ペットとして飼われている犬であっても、適性があれば飼い主がハンドラーとなり、共に参加することも多くあります。
私も愛犬と参加していましたが、その施設ではなでてもらったり、オテやオカワリなどをしたり、スピンや輪をくぐるなどのトリックをしたり、ちょっとしたドッグダンスを披露するなどして、入所者の方に楽しんでもらっていましたよ。
動物介在療法(Animal Assisted Therapy)
病院やリハビリセンターなどの医療の現場で、医師や理学療法士、作業療法士などの医療従事者の指導で、治療やその補助を目的として動物を介在させる介入が「動物介在療法」です。
たとえば、犬と共に歩くことで歩行練習の距離を伸ばしたり、犬をブラッシングすることで、手首を動かすなどのリハビリテーションを促進することなども、動物介在療法の現場で行われていました。
医療行為として行われるため、医療従事者による目的設定、計画作成のもとに実施され、公式な記録を伴う療法になります。
そのため、実施後には毎回、効果の検証が行われるところが動物介在活動と違う部分になります。狭い意味でのアニマルセラピーはこちらを示していることもあります。
動物介在教育(Animal assisted Education)
小学校や子ども図書館などの児童教育施設において、教育専門家らによる教育または学習の目的や目標が設定され、動物が介入することによって効果が期待されるものが動物介在教育です。
実施例として、動物の命の大切さを伝え、動物を飼う場合の責任について教える内容や、咬傷事故などを防ぐための犬との正しい接し方を学習させるものなどがあります。
参加する犬は、セラピー犬、支援犬、介在犬、教育犬などとも呼ばれています。
動物介在読書教育プログラムについて
また、最近では動物介在教育の一つで、子どもたちに「本の音読」を促進するプログラムがあり、犬への本の読み聞かせを行う、児童を対象とした読書会なども実施されています。
参加する犬は、読書犬や読書支援犬、読書介助犬、読書サポート犬などと呼ばれ、音読する児童のそばで寄り添いながら、じっと本を読む声を聴いています。
子どもは人に対して読む場合、うまく読まないといけないというプレッシャーがかかることがありますが、犬に対してだとリラックスして読むことができ、音読の効果が人間に対するものよりもあることが研究などでも証明されています。
実はうちの愛犬も参加していて、子どもたちから本を読み聞かせてもらっています。そして、私はハンドラーとしてその様子をそばで見守っています。
動物介在指導(Animal Assisted Coaching/Counseling)
IAHAIO 白書 2014では、上記の3つが動物介在介入の種類としてあげられていましたが、2018 年の改訂で動物介在指導(コーチング/カウンセリング)が追加されました。
コーチとなる指導者または、カウンセラーの資格がある専門家によって計画され、監督または実施されるものになります。
日本での実施例は、まだほとんどなく、現場を体験していないため、詳しいことは書けませんが、動物を介在させることによって、コーチングやカウンセリングがスムーズかつ効果的に行えるようにすることだと思います。
まとめ
アニマルセラピーと呼ばれるものにも、このように色々な分野があります。そして、アニマルセラピーに参加する介在動物として一番多く活躍しているのが犬ですね。
介在動物であるセラピー犬に求められる要件もその役割によって異なり、犬の素養とハンドラーとのトレーニングが必要になってきます。
トレーニングといっても、服従訓練のことではありません。
ハンドラーは、愛犬の行動や健康状態、ストレスサインなどのボディランゲージについての知識や対処方法などを身につけ、常に愛犬の心の状態を察知して、サポートできるようトレーニングをすることが大切になります。
ちなみに私は、愛犬との活動時にハンドラーになるので、常に愛犬の良い行動を家でも現場でも同じように褒めるようにして、愛犬が心地よく活動できるように努めています。