【現役獣医が解説】誘惑がいっぱい?冬のイベントで起こりやすい「犬の誤食トラブル」

【現役獣医が解説】誘惑がいっぱい?冬のイベントで起こりやすい「犬の誤食トラブル」

クリスマスやお正月など冬は飼い主さんにとってもわんちゃんにとってもおいしいものやたくさんの人が集まって誘惑が多い季節となります。おいしいものが多いイベントの時期は誤食のトラブルも多くなりがちです。どんなことに気を付ける必要があるのでしょうか。

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麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

わんちゃんにとって気を付けたい誤食

おもちゃを咥えている犬

家庭内で起こり得るトラブルの一つとして誤食が挙げられます。

飼い主さんによっては、動物病院を受診したり、場合によっては大きな処置が必要になってしまったケースを経験された方もいるのではないでしょうか。

お家でトラブルを避けるために、誤食とはどんなトラブルなのか、まずはお話させていただきます。

誤食とは

誤食と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

おもちゃなどの腸閉塞などを起こし得る異物を食べてしまって、手術が必要になる可能性があるという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

誤食とは、食品、食品以外も含め、本来わんちゃんが食べてはいけないものを食べてしまうトラブルを誤食と指すことが多いです。

お留守番中など目を離している時に起こるケースもありますが、盗み食いの癖がついている場合に飼い主さんがそばにいても起こってしまう場合もあります。

わんちゃんが食べてはいけない食材には特に注意が必要

おもちゃや異物など、腸閉塞や消化器を傷付ける危険性があるために、外科的な処置が必要になってしまうものは、気を付けている飼い主さんも多いでしょう。

しかし、飼い主さんにとってはおいしい食べ物でも、わんちゃんにとっては中毒を引き起こす危険性のある食べ物もあります。

例えば、チョコレートや玉ねぎなどは中毒を起こす危険性の高い食物としてよく知られる食材なのでご存知の飼い主さんも多いと思います。

他にも、実は食べてはいけない食材がたくさんあって、注意が必要です。

食材単体では興味を示さなくても、料理などでおいしそうな肉の匂いなどをまとっていると誤食をしてしまうこともあります。

どんな食材が特に注意が必要か知っておくことは大切です。

場合によっては外科的な処置が必要になってしまうケースも

中毒とは別に、大きなものや鋭くとがった形をしているなどで、胃や腸の通過を阻害してしまったり、傷つけてしまう恐れがあるので外科的な処置を行い、取り除く必要があるケースもあります。

食べ物以外のおもちゃや日用品でも、消化管を閉塞してしまう場合もあり、わんちゃんの体格によっては大丈夫そうに見えても閉塞をしてしまい、命の危険につながる危険性もあるため注意が必要です。

また、鋭い形をしたものだけでなく、ひも状のものなども消化管を切り裂いてしまったり、穴をあけてしまう危険性があるため、万が一口にしてしまっている場合は腹腔内に存在するか否かを確認したうえで、内視鏡や開腹手術などの外科的な処置を行う場合もあります。

大きな問題とならないように、まずはわんちゃんが口にすることの無いような場所に置いておく、起こり得るトラブルを複数考えたうえで対策をいくつか考えておくことをお勧めします。

冬場のイベントで気を付けたい誤食トラブル

暖炉の前に犬と飼い主

普段から誤食トラブルは起こり得るため注意が必要です。しかし、冬のイベントの時期にはごちそうがたくさんで、わんちゃんにとっても魅力的なものがたくさん並びます。

特にトラブルになりやすい食材についてお話させていただきます。一部のご紹介になるので、他の食材にももちろん注意は必要です。

クリスマスチキンの骨

鶏肉が大好物なわんちゃんは多いのではないでしょうか。クリスマスなどは骨付きのチキンを食べるご家庭も多いでしょう。

わんちゃんにとっては、飼い主さんが食べた後の骨にも良いにおいがして魅力的なもののひとつと言えるでしょう。漫画などで骨付きの肉をわんちゃんがほおばっているイメージがありますが、実は鳥の骨は、丸呑みをしてしまうと危険です。

鶏の骨は細く、噛んでいるうちに縦に裂けてしまう恐れがあります、その場合、割れた骨の先が尖っていて、消化管を傷付けてしまう危険があるため、丸呑みをしてしまったりした場合は除去してあげる必要があります。

同様に焼き鳥の竹串なども先が尖っているため、消化管を貫通してしまうなどの恐れがあるため、絶対に口にしないよう気を付けるべきものです。

甲殻類などの殻

甲殻類などの殻も、かみ砕くと先が尖ってしまうため、犬にとって誤食すると危険なものと言えます。

例えば、蟹鍋などの後で捨てられた蟹の殻は、たとえゴミ箱の中にあったとしても、おいしい風味が付いているため、誤食してしまうケースがあります。

先が鋭く尖った蟹の殻を誤食すると、わんちゃんたちの消化管を傷付けてしまう恐れがあります。また、わんちゃんが甲殻類の「風味」を気に入っている場合も注意が必要です。

生で甲殻類を食べてしまうと、チアミナーゼというビタミンB1を分解する成分が含まれているため、中毒症状を引き起こす危険性があります。

誤食を防ぐポイントは、飼い主さんが甲殻類を食べる場合は、まずわんちゃんが生で食べてしまわぬよう買い物直後の管理を徹底しましょう。

また食べた後の殻なども口にしてトラブルにならぬよう、ごみ箱の管理をしっかりするなどの対処をおすすめします。

にんにくや玉ねぎ、チョコレートなど中毒の危険性のある食材

クリスマスやお正月など特に人が集まった時は、楽しい雰囲気で、わんちゃんも普段とは違う雰囲気になったり、予想できないトラブルが起こりがちです。

普段誤食をしない子がしてしまう、というトラブルも良く聞きますので、注意しましょう。特に中毒症状につながりやすい食材は注意が必要です。

例えばごちそうの中に含まれる、ニンニクや玉ねぎは血液の成分を破壊し、血色素尿と呼ばれる赤褐色の尿を伴う中毒症状が起こる危険があり、チョコレートはカカオの濃度などによっては神経症状につながったり、ひどい場合は死につながる危険性もあるほどの中毒症状に至る危険性があります。

他にも、ガムに含まれるキシリトールやレーズンなどもわんちゃんには有害な食物とされています。与えるだけでなく、カバンの中から盗み食いをしてしまう、というトラブルもあり得ます。

ご家族だけでなく、お客様ともトラブルが起こらぬよう、わんちゃんに与えてはいけないものを把握して共有し、かついたずらを起こしにくい環境にできるよう配慮してあげましょう。

命への危険につながることも…誤食の対策は?

犬とフードボウル

トラブルによっては外科的な処置も必要になったり、命の危険につながる可能性もある誤食ですが、飼い主さんが普段から予防のためにできる対策はあるのでしょうか。

その子の性格によって、行える対策は様々ですが一例を挙げてみました。

普段からのしつけで制止出来るようにする

まず、普段からのしつけの一環として、飼い主さんが声をかけたら制止できるような関係になっていることはとても大切です。

誤食をしている現場を見付けても、飼い主さんが声をかけたり、手で押さえたりしても制止できずに飲み込んでしまうということもあります。

飼い主さんの方に注意を引いて制止をしたり、マテやはなせと言ったコマンドで制止をして、口の中から取り出すということが出来ると、万が一わんちゃんが異物や食べてはいけないものに興味を持ったとしても、誤食トラブルにつながってしまう確率を低くできる可能性が高いです。

物理的に食べられないような対策を

わんちゃんの性格によっては、制止をするのが難しいわんちゃんもいるでしょう。どんな子であっても、まずは興味を引くことの無いよう、物理的に食べられないような対策をすることはとても大切です。

例えばよくある誤食のごみ箱あさりや台所にあった食材あさりなどが挙げられます。

ごみ箱であれば必ず蓋つきのものにしたり、体当たりをしても倒れないものにしたり、ごみを出し入れする部分が背が高いものにするなどが対策として挙げられます。

台所での食材の誤食なども、買い物が終わった食材は速やかに扉付きの場所にしまう、台所に入ることが出来ないようゲートを付ける、ストックする食材の床おきはしないなどが挙げられます。

これらの物理的な対策は、おうちのわんちゃんの体格や性格、興味を示すものなどによってそれぞれ適したものが行えると理想的です。

万が一誤食トラブルが起こったらすぐに対処を

物理的な対策や、わんちゃんへのしつけなどを充分に行っていても起こり得るのが誤食トラブルです。

万が一トラブルが起こってしまった際の対処の仕方でも、わんちゃんの体に大きな負担をかけてしまうのか、早期処置によって大きなトラブルにせずに済むのかということが変わります。

食べてしまったものにもよりますが、1時間以内程度であれば催吐処置と呼ばれる薬剤によって吐かせる処置により、中毒症状や閉塞を起こす前に吐かせて取り出すことが可能な場合もあります。

いつ、何を、どの程度食べてしまったのか、また確実に飲み込んでいるかどうかなどの情報を冷静にまとめて、速やかに受診をする準備をすることはとても大切です。

また、誤食の場合、出来るだけ速やかに受診をした方が良いケースが多いです。

かかりつけの先生が休診だった場合や夜間だった場合、お出かけ時であれば事前に近くにある動物病院をリサーチしておくと飼い主さんも慌てずにいられる可能性が高まります。

緊急の場合であっても、まずは電話で受診の希望がある旨、どんなことが起こったのか、わんちゃんの現在の体調はどんなのかなどを伝えると、よりスムーズに受診できる可能性が高いです。

慌てず、冷静に対処できるよう、流れを想定して普段から準備しておきましょう。

まとめ

誤食はどんなに対策をとっていても、どんな子でも起こり得るトラブルと言えます。

その可能性を低くできるよう、充分な対策を取っておくこと、万が一起こった際の流れをご家族の中で確認しておくことで大きな問題になってわんちゃんの体に大きな負担をかけてしまう危険性を避けられるでしょう。

人間にとっては美味しい食べ物でも、わんちゃんにとってはとても危険な食べ物である可能性もあります。

楽しい冬のイベントが、わんちゃんにとっても飼い主さんにとっても嫌な思い出になってしまわぬよう、注意したいですね。

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