犬の命はどうして短いの?
近年、飼育環境の変化や医療の発達から、犬の寿命は長くなる傾向にあります。
とはいえ、その平均寿命はわずか約14歳。
覚悟を決めて一緒に暮らしはじめたとはいえ、
「あと何年」
「自分が何歳になったころには…」
と、お別れを想像しただけで悲しくて、涙が込み上げてしまうという飼い主さんも多いのではないでしょうか。
人間と犬の寿命の違いは、抗えない自然の摂理ではあるものの、愛犬を愛おしく思うにつけて、
「どうして犬の命は短いのだろう。もっと長く生きて一緒に暮らすことができればいいのに」
と考えてしまわざるをえません。
神様が決めた動物の寿命
粘菌の研究等で知られる近世の博物学者・南方熊楠が著書『十二支考』の中で紹介した伝説の1つに、『ルーマニアの鳥獣譚』から引用したものとして、こんな話があります。
世界を創造した時、神様は全ての生き物を集めて、その寿命と暮らし方を決めることにしました。
神様はまず人間を呼び、「お前たち人間には思考力と判断力、言語を与えよう。万物を支配する王として暮らし、寿命は30年とする」と言いましたが、人間は「たった30年ではつまらない」と呟き、喜びませんでした。
次に神様はロバを呼び、「お前は苦労しなければならない。重い荷物を運んでムチを打たれ、粗末なものを食べて暮らし、寿命は50年とする」と言いましたが、ロバは「そんな辛い思いをして50年は長すぎるので、20年引いてほしい」と嘆願します。
そこへ人間が出てきて、「それであれば不要な20年を自分にくれないか」と言ったので、人間の寿命は50年に修正されました。
さて、神様は次に犬を呼び、「お前は主人である人間の家と財産を守らなければならない。硬い骨をかじり、粗末な肉を食べて暮らし、寿命は40年とする」と言いました。
すると、やはり犬も「そんなに苦労して骨ばかり食えとはひどい。せめて20年で許してほしい」と願い出ました。
そこへまた人間が現れて、犬がいらないと言った20年を自らの寿命に加えてほしいと申し出ます。
こうして人間の寿命は更に20年延び、70年となりました。
同じように、最後に呼ばれた猿からも30年の寿命を譲り受けた人間は、寿命を100歳まで延ばすことに成功します。
しかし、強欲な人間が面白おかしく暮らせるのは当初の30年間だけで、以降はそれぞれの動物と同じ苦労を背負うこととなったといいます。
犬からもらった20年
いかがでしょうか?
伝説とはいえ、「硬い骨どころか美味しいおやつを毎日あげるから、20年でいいなんて言わないで!」「わたしは80年生きれば十分だから、今すぐ犬に20年返してあげたい!」と叫びたくなってしまった人も多いのではないでしょうか。
前述の平均寿命から見れば、20年生きてくれれば犬にとっては大往生、御の字ではありますが、やっぱり気持ちとしては短すぎますよね。
けれど、犬たちはその20年足らずの一生をかけて、私たちにかけがえのないものをたくさん与えてくれます。
その価値は、20年という歳月では測れないものではないでしょうか。
病気と闘う患者さんを癒すセラピードッグや、身体にハンディキャップを背負った人を助ける介助犬、災害等の命の現場で活躍する救助犬等は、文字通り「人間の寿命を延ばしてくれる」「命を与えてくれている」といえるかもしれません。
けれど、それだけでなく、犬と一緒に暮らすことで毎日が輝いていると感じる全ての人に、犬は「生き甲斐や命を与えてくれている」のです。
考え方によっては、犬と暮らす20年の歳月こそが、犬が人間に分けてくれた20年なのかもしれませんね。
犬からもらった20年、あなたはどうやって過ごしますか?
ユーザーのコメント
40代 女性 Teaco
自分を大切に出来なければ、他者を大切に出来ない、慈しむ事も出来ない!
此の記事を読んで、涙しました。