後を絶たない飼い犬の放棄 〜「家族としての犬」そのための覚悟〜

後を絶たない飼い犬の放棄 〜「家族としての犬」そのための覚悟〜

「ずっと面倒みるから!」「この子は今日から家族だよ」そう言って飼い始めたワンちゃん。しかし、都合が悪くなると簡単に手放すのはどうしてなのでしょうか。減らない飼育放棄や失われていく命。犬を家族として迎え入れるための覚悟について、一緒に考えませんか?

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安易な犬の持ち込みの増加

年間約10万頭以上もの犬が保健所や動物愛護センター等に持ち込まれており、そのほとんどは飼い主からの持ち込みによるものなのです。
そして、その多くは飼い主の利己的な理由によるものなのです。

殺処分を待つ犬

  • ペット飼育不可の物件に転居
  • 妊娠や出産
  • 経済的に余裕がない
  • 老犬になり介護が煩わしい
  • アレルギーが発症した
  • しつけに失敗し言う事をきかない
  • 大きくなったら可愛くない
  • ブリーダーを引退したので犬はもういらない
  • 毛が抜けて家が汚くなる

これらのような理由により保健所や動物愛護センターへ犬を持ち込む人たちは、持ち込むという選択肢以外に解決策はなかったのでしょうか。
また、必死に引き取り手を探したのでしょうか。
そして保健所や動物愛護センターへ持ち込むということはどういうことなのかを、新しい家族が見つからない場合の最悪のシナリオを知っているのでしょうか。

最悪のシナリオ

持ち込まれた犬たちのその後の運命がどうなるのかを知っていますか?
おそらく保健所や動物愛護センターに連れていけば、新しい飼い主が見つかると容易に思っているかもしれませんが、入所した時点から3日~5日という短い命の期限が与えられ、その期限内に新しい家族が現れない場合は殺処分となってしまうのです。

保健所や動物愛護センターで、新しい家族に出会える犬たちは全体の2-3割程度で、その中でも幼犬や比較的若い犬の方が貰い手が多く、老犬や病気を抱えている犬たちにとって希望の光はごくごくわずかなのです。

そして、殺処分は苦しむことなく眠るように死んでいくわけではないのです。
二酸化炭素ガスで窒息死するまで酸素を求めてもがき続け、苦しんで死んでいくのです。その時間は10分も続くのです。

保健所や動物愛護センターへ持ち込む人たちは、こういった現実を知っているのでしょうか?
命を繋ぐのも終わらせるのも飼い主次第なのです。
自分の身勝手な行動で、命の灯火が無惨にも消されてしまうかもしれないということを忘れないでください。

犬の社会的地位

日本は先進国にも関わらず、動物愛護後進国です。
日本では動物は法律上「モノ」として扱われ、「モノ」として扱われる動物に対しては法律上、動物愛護違反を厳しく取り締まることに限界があるのではないでしょうか。

ヨーロッパは動物愛護先進国と言われており、「ペット動物の保護に関する欧州協定」が1986年に結ばれたほどです。
「人間にはあらゆる生き物を尊重する道徳的義務があり、特にペットは人間と特別な関係にあり、生活の質に重要な貢献をしていること」
とし、ペット動物は人間と格別な関係を有する権利があるのです。
そこには法律や規則だけでなく、動物に対する国民の大きな意識の違いがみられます。
その意識の違いが飼育放棄や、浸透しない終生飼育を引き起こしているのではないでしょうか。
ヨーロッパの制度や犬に対する意識から、何が学べることがあるのではないでしょうか。

子供と犬

ブリーダー制度の見直し

長年つづく日本のペットブームから、動物をお金儲けの商品としか考えず、無計画に繁殖させている悪質なブリーダーの増加や、ブリーダー崩壊による飼育放棄や保健所などへの持ち込みが後を絶ちません。
こういったブリーダーは、繁殖に使えなくなった犬を捨てることもあるということです。
それらの行為は法律違反にもかかわらず、現実には実効性の乏しい法律なので、取り締まりにはつながっていないのです。

ここで問題なのはブリーダー制度にあるのです。
日本ではブリーダーは登録制なので、登録さえすれば誰でもブリーダーになれるのです。
しかしヨーロッパではライセンス制を採用している国が多く、ライセンスが奪われた場合は二度とブリーダーとしての営業ができなくなります。
ブリーダー制度をライセンス制とすることで、悪徳ブリーダーを撲滅できるのではないでしょうか。

国民や企業による保護施設の支援

ヨーロッパの保護施設は、国民や企業からの資金援助により成り立っており、各個人や企業の動物を守る意識の高さがうかがえます。
大きな違いは日本の保護施設とは違い、保護された犬たちに命の期限がなく、施設内は明るく暖かく優しさと希望に満ち溢れた場所だという事です。

保護犬は新しい家族がみつかるまでそこで生活し、ほとんどの犬は新しい飼い主に引き取られていきます。
ヨーロッパでは当たり前となっている「ペットをペットショップで買わない」という意識こそが、動物愛護の精神に繫がっているのです。
日本でも保護施設からの引き取りを定着化することで、国民の動物愛護の意識を高めるとともに、殺処分を廃止にすべきです。

海外シェルター

飼育免許制度の導入

ヨーロッパでは犬の飼育に免許制度が設けられている国があります。
飼い主に法律で講習や犬への訓練が義務づけられており、他の犬に吠えずにすれ違うことができ、公共交通機関や飲食店などでは足元で伏せるなどといった躾が規則化されています。

日本でも飼い主に対して講習や訓練を行い、犬を飼う事に対する責任や専門知識を身につけ、犬が人間とうまく共存していくための最低限の躾を身につけることを義務化し、犬の飼い主に資格を与える飼育免許制度の採用を検討してはどうでしょうか。
それが実現すれば、犬にとっても住みやすい社会となり、飼い主の飼育放棄がなくなり、終生飼育が定着するように思います。

犬トレーニング

最後に

私は数年前にイギリスから愛犬を連れて帰国しました。
何のためらいもなく一緒に帰ることが当たり前の選択でした。
日本での家探しもペット可物件以外の選択肢はありませんでした。

そしてつい数ヶ月前には2匹目の犬を、転居により手放すという方より引き取りました。
その事からも、日本での飼い主の意識の低さを目の当たりにしました。

愛犬はかけがえのない家族なのです。
法律や制度の改正や導入には時間を要するでしょう。
まずは私たちが現実を知り、犬を家族として迎える責任と覚悟を持つという意識の改革をしなければならないと思います。

2匹の犬

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